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本当に嫌そうに呟く彼に何も言えず隣を歩く。
ライラとバンダナは親しく会話していて海賊を案内をしている現実が幻に思えた。
隣のローを見ると愛刀を担いで堂々と靴音を鳴らしている。
前は海賊の船で生活するなど考えつかなかった。
ローに強制的に乗せられてからは意外とのんびりとした日々を過ごしている。
敵襲があっても、一歩も出してはもらえないがそれでも問題はない。
リーシャは戦えないからだ。
血や戦場を見せたくない彼なりの優しさはとても嬉しい。
しかし、だからといって一人何もせずになんていたくないのだ。
治療だって多少なりとも出来るのだし何か手伝える筈だと思った。
でも、ローは滅多に首を縦には振ってくれない。
理由を問うても「割り切らねェとやっていけねェ世界だ」と語ってくる。
確かにリーシャの元の世界は、この世界に比べると平和に満ちていて論外かもしれないがローはリーシャが異世界から来た事は知らないはずだし、ずっと何年もこの世界に住んでいたのだから海賊や人間の恐ろしさはある程度理解している。
なのに彼はリーシャを外へ出す事を危険に思っているのだ。
何が危険か教えてくれればこちらも回避が出来るかもしれない可能性さえ検討してくれない。



(何だろう……なぁ)



時々、本当に時々なのだがローがどんな気持ちでリーシャを見ているのかわからない表情を浮かべる時があり、まるで誘拐された日の陰りを帯びた瞳に酷似しているのだ。



「姫様!」

「姫様のお帰りだぞ!」



不意に振ってきた声で意識がフッと現実に引き戻され前を見ると武装した門番らしき二人がガシャンガシャンと金属の音を立てこちらに走り寄ってくる。
それと同時に聞こえた言葉にヤバいと思ったのはリーシャだけではないだろう。



「死の外科医〜!?」

「ト、トラ、トラファルガー・ロー!」

「静かに二人共。落ち着いて落ち着いてー。はい深呼吸ー」

「馬鹿者!落ち着いてなどいられるかァ!」

「そうだぞ!目の前に今だかつてない凶悪犯が――」

「その者達を通せ」

「!……国王様っ!」



威厳のある声音と共に民族衣装のような厚手の服を着た中年程の男性が立っていてライラは「お父様!」と叫び男の人に抱き着く。
相手も抱擁をしたので父親なのだとすぐに察っせた。




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