10.5
時々リーシャの思考を飛び越えた発言をする時もあるが。
「もう怒ってないよ」
「怒らせた記憶なんかねェよ」
「でもローくんは怒ってたけど?」
「怒ってねェ」
尚も感情がストレートに出ているローは否定する。
これ以上問うとまた怒りを買うので追求はしない。
リーシャは食べ終えたトレーを横に移動させてベッドの脇に座った。
ローがこちらを向くのが見えたので寝転ぶ。
本人は自室で寝ろと言うがこっちもこっちで寝心地がいいのだ。
つい眠ってしまう事も多い。
「もうすぐグランドラインだね」
「そうだな」
ありきたりな言葉で返すローにリーシャは寝転んだまま続ける。
「ローくんが手配書に載るなんて今でも信じられないなぁ」
「写真写りはまァまァだな」
「結構乗り気だったでしょ?」
あのドヤ顔とも呼べるカメラ目線には驚いたものだ。
いつの間にか手配書が発行されていたのだから心臓に悪い。
シャチによれば世に顔写真が出回ってからというもの、賞金稼ぎ達に狙われる事が多くなったと言っていた。
ローは全くそんな危ない危機を言わないので何処で何をしているのかわからない。
滅多に外へ出してもくれない彼はリーシャをどうしたいのか。
ローを見つめると視線に気付いたのか手を止めて「何だ」と聞いてきた。
「次の島でライラさんと島観光をするんだけどね」
「誰も許可してない」
「誰の許可も必要ないから……私は大丈夫」
「絶対に」
「ローくん、あんまり退屈過ぎて私発狂するよ」
「………」
反論すれば成す術がなくなったのかこちらを怪訝に、否――睨むように見てくる。
そんな顔をしても変える気はない。
せっかくライラが申し出てくれたのだから。
久々の友達に嬉しさが勝るというものだ。
三日目には予定通り島に着いた。
ライラとの約束で二人は観光へと向かう。
彼女の身を案じている人達がいるのではと尋ねるとじゃあ今から行こうという事になった。
比較的海賊には寛大な島らしく上陸しても武器を向けられるという脅威はないという話。
しかし、突然海賊が城にやってくるのは混乱を招くかもしれないので二人だけで行く。
ローには秘密にして。
もちろん彼はまだ寝ている。
そんなわけで途中、お腹が空いたのでレストランに入ろうと会話が弾んだ。
人ごみが激しく噴水がある場所に何とか辿り着くとライラがいない。
恐らくはぐれてしまったのだろう。
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