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「家――」

「男と女っつったら理由なんて知れてるだろ」



意味が深い物言いのローに目を見開いて見つめるのは致し方ないこと。
リーシャは家族だと口に出そうとしたのだ。
言葉を遮れれば何を言い出すのだと反論したくなる。
ローはリーシャが何か言う前に席を立ち腕を掴む。
まだ食事の途中なのに半ば引っ張られるように食堂から連れ出された。
文句は部屋で聞くと腕の力で言われ飲み込む。
後ろを振り返るとライラと船員達はぽかんとしていてベポは手を振っていた。
あっという間に彼の自室に入るとローの座る長椅子にボスリと座らされる。



「ローくんあんな言い方したら誤解される!」

「させとけばいいだろ」

「何言って」

「うるせェ」

「!」



不機嫌になるローに頭が混乱する。
どうしてライラに家族と言わなかったのか。
分からない事だらけだが、後で誤解を解けば大丈夫だと今は自分を落ち着かせる。
リーシャは精神年齢が十九の時からこの世界にいるのだ。
自分が取り乱すのはいけないと言い聞かせるとふう、と息を吐いて感情を鎮静化させた。


「私まだご飯食べ終わってないから食堂に戻っていい?」

「ここに持ってこさせればいい」

「自分で持ってこれるよ」



もう他に言いようがないのでそう進言すればローがこちらを見た。
これはどう取ればいいのかわからなくて曖昧に首を傾げれば彼は電伝虫に手をかける。
ペンギンにかけているようで口調はやや乱暴。
それでも彼の言う事を聞くのは船長だから。
乱用しているのもされるのもこの船では日常茶飯事である。
慣れと言うのはある意味恐ろしい。
暫くすると船長室がノックされペンギンがリーシャの食べかけのトレーを持ってきた。
申し訳なく謝ると彼は「気にするな」と言ってくれ、すぐに室内から出ていった。
多分ローが不機嫌なのをわかっているが故の回避だろう。
飛び火やら触らぬ神に祟りなしとも言ったところか。
トレーのチャーハンに手をつけ始めるとローはパラパラと本を見始めて会話はなくなった。
つ、と目を彼に向けると視線が交わる。
まさか向こうも見ているとは思わなかったので口をもぐもぐと動かしたまま見続けた。
なんとなく見つめ合っていると彼は何かを言いたげに口を薄く開いたり閉じたりと曖昧に顔を歪める。



(謝りたいのかな?)



長年一緒にいると意思疎通が少し出来たりする。




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