08
「年上を、からかうものじゃないよ……」
「それ何回目だよ、年上って言う程年上じゃねェのにな」
ローはリーシャから身体を離すと患者がいるベッドへ視線を向けた。
リーシャの耳にも微かな意識が戻った声音が聞こえる。
少女とも言える顔立ちの彼女の顔を見ると瞼が揺れ、ゆっくりと目を開けた。
安堵しながら具合の程度を尋ねる。
「私、海に落ちて……貴女方が助けてくださったのですね。ありがとうございました」
清楚な姿から裕福な家柄の令嬢だと推測はしていたが気取らない態度には驚いた。
怖がらないし混乱もしていなさそうな女性はローを見ると微かに首を傾げる。
「もしかして、貴方はトラファルガー・ローという賞金首さんですか?」
「ああ。そういうお前は貴族か」
「はい。フィノース王国の王族の末裔、ハリエス・ライラと申します」
ライラは深く頭を下げるとリーシャを見て微笑む。
彼女が一国の王家の人間とは。
アラバスタのビビを思えばそこまで驚く事はないと思い直す。
おっとりした様子のライラはビビより気が強そうには見えないが、優しい心の持ち主だとすぐにわかる。
「私はリーシャです。ここは海賊船ですけど危害は加えません。ね、ローくん」
ローを見ると彼は仕方がないとばかりに「わかった」と了承する。
一応彼とは取引をしたのだからそうでなくては。
二人を見たライラは頭を下げる。
外傷は少ないが何故海に漂っていたのか聞いてみるとまさかの回答が出てきた。
「海で泳いでいたら流されてしまったのです……お恥ずかしい話ですが」
どちらに恥ずかしく思っているのかは別として開いた口が塞がらないとはこのこと。
ローも相手の頭を確かめずにいられないといった表情をしていた。
「ノースブルーで泳ぐなんて……平気なんですか?」
「ええ。幼少期から泳いでいるので身体の一部のようなものですから」
「一国の姫がそんな事したら大事になるんじゃねェのか」
ローが平然とするライラに聞く。
すると彼女は護衛が付いているからと関係のない事を言い張る。
リーシャもさすがに何か可笑しいと思った。
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