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それに内心気まずさを感じて話題を手配書に差し替えた。

「二億……」

「ユースタス・キャプテン・キッド」

「悪い人……なの?」

「さァな。少なくとも民間人に手を出す奴だから、極悪かもしれねェ」

「そっか。あ、この人は?“赤旗”のドレークさん」

「そいつは海軍将校だったが海賊に堕ちたって言う話だ。それより、さんはいらねェよ」

「年上みたいだし、それに……」

「なんだよ」

ローに足されて暫し言い淀む。

「目が優しい……ような気がする」

リーシャがフッと口にすれば、ローの周りの温度がガクッと下がったように感じた。
その異変に顔を手配書から離すと、鋭い眼光とぶつかる。

「え、怒ってる……?」

「別に」

ローの照れていない不機嫌な「別に」という言葉に棘を感じて内心、不味い事を口にしてしまったのではないかと考える。
取り敢えず、X・ドレークの顔写真を違う写真に擦り替えて話を曲げる。

「ね、ねぇこの人は?五千万の……ベラミー……?」

厳つい金髪の顔付きに思わず二度見する。

(どこかで……)

ベラミーという名前は知らないが、この全てを嘲るような笑みに記憶の引き出しが揺れる。

「おい、どうした」

「あっ、ううん。なんでもない。強そうな人だなって思ったから」

「そうか?」

ローに気付かれる事なく誤魔化せた事に安堵する。
彼はそういえばと、王下七武海の事を口に出した。

「世界政府直下の?」

「ああ。まァそうそう会える奴らじゃねェけどな」

「それはそうだね」

海賊で、しかも略奪行為などが公認されている人間に等出来るなら会いたくない。
ふと視線を上げた時、ローの少し乱れた髪が目に入る。
反射的に彼の頭へと触れれば、幼馴染みは目を見開いて固まった様に感じた。

「髪、ちょっと触るね」

「っ……ああ」

何かを我慢するように顔を強張らせ、ジッとする様子に思わず吹き出す。

「ごめん」

くすくすと漏れる声を抑える事が出来なくて、不服そうな顔をする相手に暫く笑いが止まらなかった。

「笑うな」

「だって……何を我慢してたの?」

少し収まった時に尋ねれば、ローは目を微かに泳がせる。

「色々だ」

「色々?髪を整えただけなのに」

そう言えば、ローはそれ以上答える事はなかった。




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