×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
07
神輿にのせられて階段を登る。
ゆるやかに時間をかけて登っていき、平坦な上に行き着くと、そこに降ろされた。
望遠鏡が欲しい。

「スバラ様、我らからの供物です」

男と神輿を担いでいた男衆達が離れる。

「む」

供物が動いた。

「ひ、ひ」

(人身御供じゃんッ)

喉から声が漏れるが、耐えた。
酷いものを見せられようとしている。
スライム化して地面をはいずった。

「この世界、キレイなのに汚すなんて」

気色はきれいだし、命の営みは嵐さえ圧巻。
命の無駄を体現させた怠慢の極み。
供物なら、自分たちが躯を差し出せば良い。
それで終わるはずなのに、命おしさにそれはしないという奴等。

一体なにを捧げているのかと近寄り、更に近寄る。

「ポポラは失敗したのです」

独り言が聞こえる。

「近くに次元移動をしたのに、違うところに来たのです」

まるで反省文を書いているようなことを言う。
今はそんな場合じゃないような。
生贄にされてるよ。

「これ、生贄はシャベルでない」

まとめ役らしき老人がポポラ(?)っ子を小突く。

(小さい)

幼い子だ。

「ポポラのテクノロジーよりも劣化している分際で、指図されたくないです」

「テクノロジー?」

彼女の反論した言葉が何故か理解できる。
この世界にも機械とかあるけど、なんだか響きが違う。

「まだ言うか」

今度は杖を振り上げ、叩きつけようとしている。

「暴力は負けを認めるのと同意義ーータイム」

ーーズズッ

なにかが通り抜けた感覚に肌が泡立つ。

「?」

周りを見るけど、変わりは見当たらない。
顔を前に戻すと老人が杖を振り上げた状態で止まっていた。

「なに?」

彼女がなにをしたのかわからないが、未だ暴行を受けない。
アレは、止まっているのか?
それとも、固まっているのか。

ーードド

ーードドド

把握する余裕もなく、今度は地響き。

「来た!スバラ様だ!」

「降臨なさった」

人々が口々に興奮を乗せる。
儀式のメインらしい。
地響きの仕方からして、デカイな。

木々を盛大に揺らす様はここからでも感じる。
木が倒れる音が聞こえてくるからだ。

「ぐお」

姿を壮大に表した存在は誇示するように鳴く。

「グオオオ!」




「ゴリラー!?」

蛇でもなく、トカゲでもなく、ゴリラ。
巨大生物に生贄って、皆やることが安易過ぎるよお!

空気が声だけで震える。

「巨大生物に生贄なんて、ポポラはなんのひねりもない背景に失望します」

確かに使われすぎて擦り切れごめんなやつだけども。
二番煎じだけど。

巨大生物は祭壇を凝視して、今も固まった男を見る。
供物ならあいつだけで良くないか?

「小さい子を供物なんて、自分たちが死にたくないだけじゃない」

ボム、ボム、とスライムの型を跳ねさせて、祭壇の上にまで飛ぶ。
丁度巨大生物がなにかを唱えて讃えている民衆に気を取られている間にスライムの中に入れて、そのまま下まで落下する。

ロシナンテをアレから守った強度を持っているので下で潰れる事もない。

「?……??」

女の子が半分あいた目をキョロキョロさせる。

下に降りられたので出す。

「スライム?……!」

ポポラは暫し見ていると爛々と眼を輝かせる。

「ポポラはやっぱり間違ってなかったです」

そう述べるとぷにぷにのスライムを激しくこね始めた。
突然のお触りに驚く。
確かにスライムを見た人の反応は大体これだ。

「ポポラは!成功してたのです!なのにあの能天気はっ。そういえばあの能天気はどこいったです?」

「ぐおおお!」

「ああ!村長が!」

どよめきに見ると推定ゴリラが村長をわかづかんだ。
口に運ばれてゆく様。

ーーヒュン

「やっと出番だね」

軽快な声音と共に跳躍して森から跳んできた人は、このまま空気を蹴って曲がるとゴリラの方向へ。

「はぁ!」

いつの間にかゴリラの顎の下に移動して、顎を撃ち抜く。
残像のようにゴリラが後ろに倒れる。

「スバラ様ァ!」

「アイツを捕まえろ!」

おいおい、長老を助けられたくせに。

「遅くてやってることも無駄です」

傍に居る子がボソッと言う。

「それよりも、スライム」

「!」

突然雰囲気を切り替えられて緊張する。

「やっと会えました。ポポラの目的の一つは貴方に会うこと」

「私に」

「やっぱり話しましたね。同一人物確定」

うっかり話しちゃった。
それにしてもゴリラを一方的にボコボコにしている人が気になる。
むしろ、それしか気にならない。
他の事は些末過ぎる。

ボコボコが終わったのかその人はポポラの隣に飛躍して降り立つ。
凄いバネだ。

「ちゃんと言われた通りしたでしょ?」

「ポポラは既にここにいるので、貴方のやることはもう無くなって居ました」

「え?だって、あの怪物が来たらやれって」

「ポポラを差し出した愚老を助けただけです。モナ」

この人の名前も最後のモナ、というものか。

「駄目だったかぁ」

「仇を恩にした行為です」

「そっかそっか」

深く考えてない答えだ。

「ん?あ!スライム!?もしかしてッ?」

「そうです。恐らく私達の探していた人です」

「うわぁあ!嬉しい!」

テンション高めにスライムを抱き上げ熱烈なハグをくれる。

「会いたかったよ!名前は知らない人」

「……え」

意味のわからないことを言われて眼を点にする。

「能天気は言葉が少なく、ポポラも嫌になります」

どうやら説明してくれているらしい。

ポポラの能力で移動する。

生贄の島とは違う、二人が拠点にしている一つの島に連れてこられた。

「見つけられて良かった」

モナに抱きしめられたまま、豊満な胸に埋もれる。
スライムなのでぴっちり隙間もない。
ディスタンスって必要ですよね。

「さて、見つかったのなら次の目的に以降を」

「いやいやいや!待って待って!」

説明されないまま終は酷い。

「なんです?」

「そもそも貴方達は誰、ですか?」

「私はモナ!岩族と猫族のハーフ!」

元気よく自己紹介を始めたのはモナ。
うん、絶対にこの世界の人じゃぁない。
漠然と感じる。

「プライバシーは欲しいのです。しかし、進まないのです」

ため息を吐くポポラ。

「ポポラは自分をポポラって言うから、もう知ってるんじゃない?」

モナが指摘する。

「モナは少しせっかちです。ポポラはポポラ。魔法よりもテクノロジーを専攻にする科学者です」

「ど、どうも」

「スライムでも、人にもなれるですよね。早く戻ってもらいたいです」

いきなりのバレにビビる。

「え!」

なんで、この人……。

「なにを驚くですか?」

「んー。なにか変だよ」

モナが催促を止める。

「君が人なのは私も知ってるし……私たち、前に会ってるんだよ」

「え?」

こちらの戸惑いを感じた二人は首を傾げる。
もしかして、記憶がないときの人達?
だって、忘れるような人たちじゃない。

「もしや、あの忘れるに忘れられないことを……覚えてない、ですか?」

「えっ!?」

モナがびっくりした顔で二度見してくる。

「嘘!あんなに凄かったのに!?」

「いえ、寧ろ、あの時の反動で記憶が欠如するには、条件も揃ってます」

こくり、とポポラが頷く。

「あ、もしかして、私がスライムになった時の事を知ってるんですか?」

「勿論です」

「なんたって」

話しだそうとするモナをポポラは厳しく止める。

「だめです。記憶のない人に無闇に消えた記憶を告げると、脳に負荷がかかるのです」

「でも」

「先ずは今の情報を数日かけて消化させてからです。荒治療はさらなる悪化を招きます」

ズイッとモナに迫る彼女。

「モナはこの人を危険にさせたいのですか?」

モナはぶるぶると首を横に振る。
幼女に迫られるという恐怖。

「貴方はモヤモヤするでしょうが、医学的安静を優先させてもらうのです」

くるっとこちらを見た子。
頷くしかない。