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- ナノ -
04
赤髪海賊団に強制的乗船して早三ヶ月、そろそろ包囲網も緩んできている頃。
なはは、よぉし、脱出するぞー。
良い天気だ。

パラシュートの様に広げて船から離れる。
一応シャンクスの部屋にたあった紙に『お世話になりました。スライムより』と書いておいた。
一応知性はあるとそれなりに知っているだろうという前提だ。

そのままふわふわと飛んでいき、どこかに船はないかと探していると商船を見つけた。
見つからぬようにふわふわと降りる。
よし、なんとかなった。
ハートの海賊団(仮)のところに戻れるかはわからないけど、このまま、気のままに進もう。

船に乗っていると様々な情報を得られる。
それにより、次の島はキャッスル島というところらしい。
城が観光地という所。
そういうのはどこでもあるわけじゃないのか。

ローはなにをしているだろう。
帰ったらきっとアイアンクローされるな。

「見えたぞー!」

「おお」

商船の船員が伝える。
私も心の中でおお、と共感。

「よし。錨を下げろっ」

こうして、島についた。
スライムで降りて少し歩いてから人になる。
やっぱり観光は人になるのが良い。

「おおー、城だ」

やはり観光地としておすすめするだけあって、綺麗なお城だ。
和風ではなく洋風。
実に私好みだった。

「あ、バイト」

一軒のお店にアルバイト募集の張り紙。
町並みも洋風なので街全体が観光地一体型。

「気に入ったし、ここに暫く居ようかな」

早速そこへ入っていく。

「すみません」



***



老夫婦の経営している昔懐かしい雰囲気のレストランにて、ウエイターをしていた。
ローたちと合流する前とか、ロシナンテの代わりに稼いでいたので慣れている。
ロシナンテは死亡していると思わせるために表に出られないし、息を潜めていてもらうしかない。

「3番テーブル、おまちどう」

「はぁい」

メニューのものが出来上がり、テーブルへ運ぶ。
慣れてきたな。

ホロンから探すのは難しいが、ローにはなんとかカードとかいう本人の位置を知らせる便利なものがあると聞いたので、作ってもらっていた。
一応ロシナンテのものを持っているから場所はわかるんだろうけど、非効率だ。
彼らは船で動いているのだから、追いつくのは至難の業。

ローたちのことは今は忘れるとしよう。
今はとりあえず観光したい。

「休憩入ります」

お店の人に声をかけて制服のまま、外へ出る。
頭にある付近の地図を思い出すとお店の並ぶ地区に行く。
観光地だから人がたくさんだ。

「あー、白亜のお城」

素敵な街なので永住したいが、もっと良いところもあるかもしれないので我慢。

「お菓子の国とか無いかな」

想像して、食べられなくとも構わないと付け足す。
食べられたら再建が面倒過ぎる。
青空に映える琥珀の鐘も良く聞こえる。
どこかデジャヴュを感じたが、無い記憶に反応しているのだろう。

あくびをしながら近くにあったベンチに腰掛けた。
この世界は凄く興味深い。
色んなところがあって、悪魔の実、なんていう摩訶不思議な能力者になれる実がある。
隅々まで知りたい。

「ロシナンテさんは知りすぎるのが危険だって言ってたな」

知りすぎて過去の科学者が秘密裏に消されることなんてザラにあるらしい。
怖い世界だ。
魅力的でもある。

ローも世界を見たいと言っていた。
皆の方が盛り上がってるけど。
ドフラミンゴがいる限りローの大好きなロシナンテと共に歩けないのが不愉快そうだった。

その気持ちは分かる。

「んー……あ、眠くなってきたな」

休憩時間だから戻らねばと立ち上がる。

「あーー!?」

ーービクッ

私自身戦闘力はそんなにないので危険なことの免疫がない。
いきなり大声なんて聞こえたらビビる。

「お前!」

そう呼ぶ誰かを見る為に目を向ける。

「え、もしかして」

考えていたけど予想に反して早い再会に驚く。

「シャチいい!」

抱着く。
勢い余って押し倒してしまった。

「いっで!」

ゴン、という鈍い音。
かなり痛いな。

「ああ、ごめんごめん」

「いててェっ」

頭を擦りながら立ち上がる。
大丈夫、君は鍛えているし。
常に鍛えているとあんなに自慢していたから。

「ふふ、元気みたいで良かった」

「お前なァ!どんだけ不在期間長かったと思ってるんだよォ!」

泣きそうになっている声で訴えかけられている。
泣くことなんて……ある?
大人である人達が何故にここまで泣くのか不思議だ。

「もおォおおお!マジで船長に今直ぐ会いに行けッ」

「ええ?私今バイトの休憩だから戻らないと」

言いかけている最中なのに腕をもぎ取られそうなくらい強く引っ張られる。

「うぐ!?」

スライム型の時にローに引っ張られるのと謙遜ないくらい痛い。

「痛いって!なにすんの」

「ダメだダメだ。行かせない」

グイグイと男特有の馬鹿力で阻まれる。
そんな、バイトは仕事。
仕事を途中でほっぽり出すなんて不実な真似出来ない。

「もう。あんまり私を困らせないで」

「困・っ・て・る・の・は・おれだーっ」

一言一句区切って強調され、耳元が煩い。
そんなに大声で言わなくても聞こえる。
それに、大人が困る事なんて早々ない。
それにロシナンテも居るんだからなんとか出来そうなものだ。
そのまま強制的に制服を来たまま船へ連行された。

「変わってないね」

特にリフォームした形跡もなし、破損も見当たらない。
どうしたというんだ。
シャチに引っ張られてローの居るのだろう部屋に押し込まれる。

「船長!こいつ見つかったぞ」

開口一番に告げる行為。
そんな言わずとも姿を見たら分かるだろう。
ローはベッドの上に腰掛けていた。
無言。
こちらを見ても無言。
ただいま、と述べてもなんにも言わず。
流石に連絡もせずに音信不通に成りすぎたかなぁ。

「遅くなってごめんね?」

謝ってもまだ微動だにしない。
確かに連絡しなさ過ぎた。
電話しておけば良かったよ。
ロシナンテと旅をした事で放浪するのが癖になった。

「シャチ、はなせ」

まだ声変わりしてない言葉。
シャチはスッと早業の如く静かに退室していく。
まるで私を生贄にしたみたいに感じるぞ。

恨めしい気持ちで見送っているとベッドから重みがキ消える音。
どうやら動いた、と首を戻す。

「なにしてた」

「海賊船に乗って、別の海賊船、商船のち、島」

今まで通りどういう順番に動いたのか説明する。

「良く生きてたな」

「2つ目の海賊船は前に一度乗ったことがあって」

「ふうん」

酷く不機嫌に相槌を打たれる。
海賊船に対抗心でも燃やしてるのかな。
シャンクスがどのくらい強いかなんて知らないから、燃やすだけ大変だと思う。

「数日後にはここに戻ってくるから」

「は?」

子供なのにドスの効いた声が恐ろしい。

「っ……バイトしてるからすぐには無理」

「そんなの今辞めてこい」

「いや、そんな迷惑かけらんない」

「先におれにかけられたのは無視か」

別に蔑ろにしたわけじゃないもん。
ホロンは丸め込まれる前にじゃーね、と扉へ向かっていき、素早く閉めた。