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- ナノ -
02
ローに厳重に囲まれつつ、移動。
スライム型ではやはり速度が遅いので運ばれるのが都合もいい。
無名でただの子供に見えるローはだれからも見られずスイスイと人混みを縫っていく。
子供だからこそ出来る方法。
あちこちから屋台や店の宣伝が聞こえてくる。

「あっ、焼き餅食べたい」

独り言みたいなものだったが、途端にぴたりと振動が止む。

「?……どうしたの?」

急に方向転換するのを感じて問いかけてみるが、答える声はなく、また止まる。
隙間から様子を見ようとするが、服があって見えないし、恐らく上から押さえつけられていた。

「あ、っと。流石に潰れるよぉ」

「3つ」

「はいよ!」

掛け声に見つからぬように声を無くした。
スライムが懐に居たら周辺が騒がしくなると知っているからだ。
またあるき出した子に再度聞く。

「なに買ったの?」

「うるさい」

り、理不尽!

ロシナンテには丁寧に接するのに。
タルン島はお金持ちが集まる島というだけあり、随分と栄えている。
栄えてない島も見ていると、泥沼の差。
地域格差ってやつか。
いくつかお店を見ているみたいで立ち止まる気配がある。

「帰る」

いつもより早めに伝えてくるので、この島は好みじゃなかったのだろうかと無い首を傾げた。
人間に戻ればちゃあんとあるよ。

「おかえり、ロー」

「コラさん……!」

嬉しそー。
天と地の差の対応である。
ロシナンテこと、コラソンが出迎える。

「あいつは懐の中か?」

「こいつになにか用なのか」

「ちょーっと借りるぞ」

まるでモノみたいに渡す。
こらこら、そこは人にもどってからついていくとか、二度手間だけど。
ロシナンテもロシナンテでそこは人扱いしてやれよ、くらい物申してくれ。

「聞きたいことがあってよォ」

ローが離れた時にこっそり聞いてくる。

「ローくんに聞かせられないことなの?」

今更ローへなにか隠し事をする意味も必要もないのに、どうしたのかな。
コソコソ、と無音の能力を発動した男。
この人は悪魔の実という不思議な実を食べ、音を操る力を手に入れたのだとか。
非科学的過ぎて、ちょっと困る。
科学的にどうにか説明出来ないのかと聞いたが、困った顔をするだけ。

「この前の菓子のレシピなんだが、あれ、ローへのサプライズ用にと思ってて」

「サプライズ?」

「おう、誕生日だよ」

「あ、あっっ、忘れてたー!」

頭を抱えた。

「大丈夫、ローはそんなに括ってない」

「いや、それはロシナンテさんが怒られないってだけで、私が相手だと激変しますから」

慌てて否定に入る。
この私がそれほど恐れるような事態。

「んー?まァ、あいつもまだまだガキンチョってことだろ。お前は年上なんだからビシッと対応しときゃ良い」

簡単に言ってくれるよ、この人。
自分は態度を変えられないからこそそんな余裕があるわけだ。

「じゃあ、その日は一日ずっとロシナンテさんの懐にいますから。約束して下さい」

「別に良いけどよ」

よし、言質いただき。
天変地異が起こっても破らないようにと約束させる。
妨害が起こらないともしれないし。
ロシナンテと別れて、歩いていくと船員達が座っているのが見える。

「どうしたの」

「新聞見てんだよ」

なんだ、新聞かと興味をなくしたが、彼らは追加した。

「癒し姫だって」

「ぶ!」

思わず吹き出した。
この世界のネーミングセンスは政府公認なので、どうにも出来ない。
諦めるしかないのだ。
吹き出したのはおもろいからではなくて、逆だ。
可哀想過ぎて耐えられない。
ということだ。

相変わらず名付け方の方針を変えたらどうか。
私ならつけられたくない。
つけられたら最後、スライムとか頭に付きそうでホラーだ。

「どうやらいろんな船に乗って会話をしたりするみたいだな」

「まぁ、合理的な商売だけど……リスクがバカデカくて、そこらへんどうしてるんだろう」

海賊船とかも客としてカウントしてるのなら、危ない橋を渡っている。

「ボディーガードでも居るんだろ」

「癒しか。いーなー」

「呼んでみたいな」

呼ぼう呼ぼうと盛り上がってきて、止める。

「待って、ローくんはまだそういうの駄目なんだから、やめてよ」

「え?おれら海賊なんだぞ」

「海賊でも旗揚げはしてないし、あくまで仮状態!」

一端に海賊になったつもりの彼らに教える。
旗揚げはしっかり計画してからだと船長となっている彼のセリフ。
海賊にもなってない、旅行の団体止まり。

「それに、お金が勿体ない」

「そんな高くないだろ」

「この世界の文化レベルで高くないわけないでしょ」

小声で誰にも聞こえぬ様に反論する。
まだなにかを成し遂げたわけでもないのに、盛り上がれるのが羨ましく感じるな。

「もっともっと名を挙げないとああいうのは来てくれない」

もっとも、ここまで来るのにありえないようなお金を払わねばならないだろうから、強くなる頃には身の程くらいは理解してくれていれば良いという、遠回しな否定。

古株扱いのホロンに言われて団員達はがっかりしつつも、その場を解散させた。
一応、古株と思われているが正式なメンバーではないということをどれ程の者たちが知っているのだろう。
少なくとも私とロシナンテは居候。

それに、成り行きとはいえ、ロシナンテなどは絶対に海賊にはならない。
なんせ、彼は海兵なのだ。
今でも在籍しているのは知らない。
彼曰く、除籍されているか、死亡扱いされているかもしれないと言っているし。

なので、隠れるために外へは行かないようにしているというだけで、船の中は都合が良い。
ホロンはなんとなく乗っているだけ。
ロシナンテとほぼ動機は同じ。
団員達には同じ仲間に写っているのなら、訂正しておいた方が良いのか。

うーん、変にギスギスさせたくないしな。
悩む。

タルン島にて停泊している船が他にもある。

「あー、ついてねー」

望遠鏡を覗く男。

「あの赤い髪の奴も居る」

「キッドか……あいつどうやって海を渡ってるんだよ」

「あの右腕っぽい黄色い奴だろどうせ」

ユースタスのキッドという子供が良くローといがみ合っているのを見る。
ホントにどうやって海を渡ってるのだろう。

「オラ!トラファルガー!出てこいっ」

噂をすれば、と互いに皆顔を合わせる。
つんつんとした髪型の子供が船の前で叫ぶ。

「あ!スライム!」

うん、そうだね。
この子とは遭難している時にあったわけだが。
出会い編とか……居る?
割愛しておこう。

「スライム、こっち来い」

言われたのでぽむぽむと近寄る。
この子もこの子で扱いが強いので近るの不安。
遠慮なく引っ掴むもんで。

「スライム!なんでおれの船にのらねーんだよ!」

「乱暴なところを治したら、少しだけ乗船してあげる」

「ちぇ」

それでも引かないのが、この海賊候補。
ローは今不在なので彼の事を対応してないとね。

ーーガシィ

「ん!?」

悪ガキが掴んだのかと思ったが視界の正面に写るキッドに違うと判断。

「あッ!トラファルガー!」

トラファルガー、がわしづかんでいるようだ。
おっかしーなぁ、いつまでもこんな扱い。
優しく掴んでくれないかなぁ。

「トラファルガーずりィ。おれにスライム寄越せ」

「年功序列だ」

そんなルールなんて存在したら年寄にしか触れられなくなる。
ダンディな人が好みだからちょっと嬉しい。
そして、ツリ目とか、強めの三角目とかも好き。

「疚しい気配……!」

ーーギリリリ

「いたーい!?」

ローがムムッとした顔でスライム体を強く握りしめる。

「おい、野蛮に扱うんならおれにくれ」

「躾だ。お前にはやらない」

会話が展開しているが、痛みから逃れる為に人間になる。

「そういいや人間にもなれるんだったか」

逆だよ逆。
人間がスライムになるの。

「キッド、買い物に行くんだろ」

片腕か、右腕だったか、そのキラーが近寄ってからキッドに囁く。
透明な手づなが私には見える。
見事な手腕。

「そうだった」

ライバル心を忘れるくらいコロッとしている。
扱いうますぎ。

「スライム」

と、言い、彼は私を引っ張った。
ローも持っているので両サイドから引っ張りだこ。
だから、痛いんでー!

「いや、スライム取り合わないで!」

確かに小学生とかはスライム大好きだよ。
理科の授業とかね。
でも、リアルの生きてるスライムを取り合うなんて嫌だ。
ましてや、当事者だしり

「おれ、に!寄越せ!」

「断るッッ!」

ローが放つ台詞後、スライムは宙に飛ぶ。
離れるように敢えて手から飛んだ。
早めに終わらせないと伸びちゃう。

ポーンと放り投げられた体を平べったくして風に乗る。
誰かが気付いた時には遠くに離れていて、ローは舌打ちした。

「はァ、お前と話している間にあいつを逃した」

「じゃああいつを先に手に入れたらおれのな!」

勝手に宣言してキッドは我先に走り出す。
その後ろをキラーが付いていく。
二人を見送り、ローは静かに踵を返す。
ベポ達が追わなくても良いのかと聞く。
それに対して男子は素っ気なく放っておけと述べるので、船全体に困惑の雰囲気が漂う。

なんせ、彼女がどこかへ行くと大抵なにかのトラブル、または誰かを釣り上げる。
それを知っているのにローは放置するのかとなるのだ。
特に思わぬ者を連れてきたり、知り合っていたり、誘拐されたり。
レパートリーが豊富だ。
次はなにをしてくるのか怖い。

「えー、あいつこのまま?」

「なにやらかすのか予想出来ないぞ」