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ロシナンテが骨折したかもしれない、と医務室に運ばれてきた。
ローは怒りを持って診察していたが、無事だったので彼はへらりと笑う。

「コラさん。あんた、一生歩くの禁止だ」

「人間としての機能をやめさせんの!?」

「あと、ついでに禁煙だ」

「人生の楽しみまで!」

ロシナンテ劇場は今日も大変賑わっている。

「ロシナンテさん、ついに骨折疑惑まで浮上したのなら、もうやめたほうが身のためじゃない?」

「下の世話なんてされたくねーよッ」

下半身を衰えさせるイコールに結びついた未来を回避しようと必死だ。

「私だってヤダけど、ロシナンテさんがドジで死ぬよりは良いかなあー」

「おれはどっちも嫌だ!」

彼は子供のように首を振る。

「きっとおれはコラさんの為に医者の子供に生まれてきたんじゃねェかと考え始めたよ」

うん、と同意する。

「おれはそんなことをされるためにお前を引き離したんじゃねェからな?やらせねーよ?」

「大丈夫。スライムってなんでも消化するって絵本で読んだ」

「より最悪になってるぞ!?」

ロシナンテは逃げ出そうとするが赤く腫れた足が邪魔をして、すってんころりんと転ける。
呻く大の大人にやれやれと医者が呆れを向けた。

「コラさん。そんなにアピールしなくても」

「ロシナンテさん。いや、ロシナンテおじーちゃんって呼ぼうか?」

「おれはまだ、若い!」

悲痛な叫びが船にこだまする。

ロシナンテを脅しつけたローは満足して船員たちに指示出しのために部屋を出た。

それに安堵して見送るロシナンテにクスッと笑う。

「あれから、どうだ?」

ロシナンテへは書き置きを残していたので、誰かからなにかを聞いたことは知っている。
それに、過去についても。
最初はなにが起こったのか言おうとしたが、ロシナンテは知る人間は最低限にしておけというので、知ってもらうのをやめた。

人の気遣いに長けた大人だよ。

「ローも受け入れてくれて、前よりこの世界に足が着いた感じ」

「良かったな」

「うん、おかげさまで」

よしよし、と頭を撫でられる。

「お前はなんだかんだと自分を犠牲にするタイプだ」

ロシナンテにだけは言われたくない。

「ローの為にドフラミンゴに殺されそうたなった人の言葉じゃない」

「は、は。痛いぞこのこの」

抉られた精神的なものを誤魔化すようにグリグリされる。

「ロシナンテさんはもっと自分を大切にしなきゃ。じゃないと次はローくんが自己犠牲に走るかもね」

「あー、そう……か?」

「保証する」

洒落になんねェ、と彼は苦々しく笑みを浮かべる。

「重いよ、ロシナンテさんが注ぐ愛は」

「愛が芽吹くのなら、嬉しいけどな」

「違う方に行きそう」

ローは愛を理解してる。
でも、一人で抱えるだろう。

「お前もなー」

既に異世界の自己犠牲を成した後。 
それに、ロシナンテへの鳥籠の救出。
いや、あれは結果であって結局はロシナンテを救う為の行為だった。
自分がクッションになるという自己犠牲。

「大切だから、失いたくない。私はエゴの塊」

このきれいな世界も手放したくない。

「若人らしいじゃねェの」

ロシナンテはくく、と笑う。

ドアが不意に空いて、ローがヌッと顔を出す。


「生産性の欠片もない話をするのなら、お前はこっちに来い」

どうやら話を盗み聞きしていたよう。

「あ、ロー!んなことしたら女の子に嫌われるぞ」

盗み聞きを咎める恩人に船長はハッと鼻で笑う。

「コラさんは禁煙してから言え」

「ぬう」

押黙ることにした男を尻目にローはホロンを引っ張る。
廊下にまで手を引く男にされるがまま。
ぱたりと目前でドアが閉まる。

「なにを手伝う?」

用があって呼ばれたと思ったまま問えば、ローは無表情でスライムになれと言う。
なぁんだ、スライム触りたかったんだ。
ムニュッとした感触が大人気。

スライムになるとすかさずわしづかまれる。

「もー、優しく掴んでよー」

「おれがそんなことするか」

遠慮なく掴まれたまま持ち運ばれた。
そのまま、太陽が降り注ぐ甲板に行き、ベポの寝ている横に座り、枕代わりにされた。
ひんやりして気持ちいいらしい。

そこにやってくるのは。


「トラファルガー!」

ユースタス・キッド。

「スライム寄越せやァ!」

「ユースタス屋、また邪魔しやがって」

青筋を浮かべたローが刀を抜く。
この戦い、昔から一歩も動かず変わらない。

その間、ベポに抱っこされている。

「アイ!?」

突然の浮遊。
下を見るとベポが幹部のキラーに襲撃され、ぷるぷるボディが飛んだみたい。
ホロンが空中にいるのを見たキッドがにやりと笑い鉄の腕をこちらに向けてくる。
これがUFOキャッチャーの商品の気持ちってやつか。

「うっし!キラー、よくやった」

「させるか」

船員達も気合が違う。

一人ちゃんと500円払ってボタン押してくださいね。

ーードムっ

跳ねて腕をかいくぐる。

「待てっ。スライム!」

ロシナンテが窓からハラハラした顔で見ていた。

「スライム、見つけたぞ」

違う声が聞こえて見てみると、ドレークの船があった。

「「ドレーク!?」」

全員思わぬ男の登場にどよめく。

「船長、近付きます」

もう誰の声かわからん。

「ホロン、逃げろ」

全員が追ってくる。

「お前ら!全員ぶったぎってやるッ」

ローが刀を振りかぶるのが見えてーー。


ーースバァ!!
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