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- ナノ -
09
今日はスペアリブらしく、ツヤツヤしていて美味しい。
もぐもぐと堪能して、お代わりもした。
うーん、暫く滞在したくなるがローの質問の煩わしさを考えると悩む。

別に彼を疎んでいるわけじゃなく、説明して納得してもらえる気がこれっぽっちもないのだ。
それだけだが、ローの影響力はこの船で大きいから、船員たちも私をここへ留めようとするのが、とても大変。

全員を相手取って脱出するよりも、なにも知らせず気ままに行くのがベター。
ということで、ローに隠れて飛び立つ。

ーーグワシ

肩に重みがあり、突然の止めに振り向く。
悪い顔を浮かべる男が居て、頬が引きつった。
飛び立つ前にどうやら察知されたらしい。
黒いオーラを纏った男が居て、逃がすまいという意思を感じる強さの握力を身に受ける。

どんどん痛みが出てきてるよ。
今にも割ってやろうという気迫に思わず人型に戻った。
スライムのままじゃ逃げられない。
はわ、と頭を取り返してガードする。

「な、なんで今回は邪魔するの」

毎回、なんだかんだと放っておいてくれるのに。

「次の島にお前がいるからここにいろ」

「なにさせる……つもり?」

「次の島はカジノの盛んな島。そこで盗むだけだ」

「いや、加担しないよ!?」

なにさせようとしてんの!?

やらないからッと拒否する。

「絶対に獲りに行ってもらう」

狩人の瞳をして画策するので、震える。
ロシナンテに言うから、と告げた。
悪事に私を使おうなんてロシナンテが一番嫌うだろう。

「そろそろやらねェと資金が集まらない」

「私は関係ないよ。てか、巻き込まないで」

幼気な女にメインをやらせようとしている、と直感が働く。
そうはさせんぞ。

「やらないってば」

ローを振り切り、ロシナンテの部屋へ直行。
扉を叩く間もなく、ロシナンテの方へ進むとローに聞かされた事をチクる。

「無理強いしてきたのか?ローが?」

「そう!そうなの!」

敬語を忘れるくらい伝えたくて、必死になる。
ローはロシナンテに弱い。
言えば言葉を聞くだろう。
頼む、聞いてくれ。
でないと、暫くこの船に帰れなくなるかも。

「ううん……ローがお前に頼むなんてよっぽどだろ」

「でも、やりたくないよ」

「そうだな。お前も嫌なんだから駄目だな」

コクッと頷く。



2時間後、ロシナンテの部屋で匿われ休憩してから部屋へ戻る。
たとえ、待ち伏せされてても断るんだからッ。
絶対に屈しないよ。

「ん?」

周りを見たけど居なかった。
気配も感じず、居た形跡もない。
ホッとした。
居たら冷戦確実だもん。

「ローくん、勝手に海賊団作った癖に」

「聞こえてるぞ」

「ぶ!」

びっくりして慌てながら振り返り、バッと構えを取る。

「わ、私は悪いことはしないから」

大声で意思表示する。
それにローは馬鹿にした様子で笑う。

「相変わらずお前は甘いな」

「私が甘いのは私は普通の人だから、だよ」

裏社会で生きてない。
ローはその気持ちを知っているはずなのだ。

「いずれお前はこちら側になる」

「?、ならないけど」

変なことを言うなあ、と疑問符になる。

「今は別に考える意味もない。忘れろ」

いや、気になるわッ。
突っ込みたくて仕方ない。

「怖いよ、なんかさ」

「そうか」

指摘しても響かない。

「もう行くから」

部屋に入るためにローの横を通る。

「おい」

「!」

呼び止められてちらりと見る。

「体調管理しとけよ」

「う、うん」

いきなり気遣われ、そう言うしかない。
なんだか落ち着かない。



遂にカジノがあるらしい島に着いた。
逃げたくてもハートの包囲網により無理だった。
こういう時、連携に阻まれて歯噛みしたい。
ため息を吐いて、ロシナンテのところへ行く為に立ち上がる。
ロシナンテになんとか説得してもらおう作戦は今のところ効き目なし。

彼もいつもと違う事に違和感と危機感を抱いていた。

「危機感を感じるの遅い」

そういうところ、天然だなー。

「入るぞ」

「へ?」

ノックなしのゼロでドアを開けた音。
こんな構わず行動をする奴なんてーー。

「は!?」

「まだ着替えてないのか」

もしかして、朝からドアの前にあった、きらびやかなドレスの事を言っているのかな?

「着替えるわけ無いでしょ!こんなに嫌がってるのにやらせるなんて、見損なった」

キツめに睨む。
しかし、意に返さない男は鼻で笑う。

「見損なわれるのが怖くて、海賊なんてやってられるか」

「……く」

拳を震えさせ、耐える。

「私はしない。強制させるの?好きにすれば良い。その代わり、私は二度とここには現れない」

略奪なんてお断り。
決断に声を張る。

「じゃあ、バイバイ」

「……そうかよ」

緊張を孕む空気のまま私は部屋を出る。

そうして嫌な気分のまま、跳んで、海へ踏み外した。

ーードブ!

海の叩きつける音に頭がぼんやりした。
こぽりこぽりと息が上へ流れていく。

(あれ……私、能力者じゃないのに)

体が動かない。
いつから動かなくなったの。

(息が)

泳げる筈なのに、何故かぴくりとも動かない。
爪先さえも。

(なにか変)

たまたま海に落ちるのも色々不可思議だ。
どういうことだ。
前に落ちた事もあったが、普通に泳げたのに。

ーーキィ

「い。おい、おいっ」

唐突に耳に大音量が流れてくる。

「!っ、う」

ズキン、と頭痛が走る。
あれ、幻視でも見てるのかな?
居るはずのない人が眼を覗き込んでいる。

「な、で、ロシナンテさんが」

ろれつが回らなくて自分の状態に驚く。
ふう、と安心したように息を吐く男。

「もしかして、記憶が飛んでいるのか」

なら、説明しなきゃだな、と言われ立ち上がる。

ふらっ、となる足にたたらを踏む。

「私、なんで横になってたの」

独り言を呟く。
さっきまで船に居たのに、急にどこかで倒れていたなんて。
ロシナンテは苦笑して肩を支えてくれる。
近くにある段差に私を座らせると頭を撫でてきた。

「先ずは、ここはクシャ島っていう島なんだが、覚えてたか?」

首を振る。
覚えてないから戸惑ってしまう。

ローと喧嘩別れした……それとも、それは違う?

「私ーー痛い」

思い出そうとして、痛みが響く。
ズキズキするんだけど。

「無理するな。どうやら変な機械に繋がれてたんだとよ」

「機械……?なに、それっ」

気持ち悪さに眼を細める。
なぜ繋がれる事態に陥っているのか知りたくて、先を足す。

「ローと喧嘩別れ?いや?そんな話は聞いてないが……夢でも見せられてたのかもな」

ロシナンテは度し難いな、と苦虫の顔になる。

「取り敢えず動けるか?お前をたすけるためにあいつらも暴れてるんだ。ここから早く去らないと」

「ロシナンテさんはなんで出てきたの?顔を見られたらあの人に追われちゃう」

息切れしながら伝えると彼は苦しげな顔をして、ごめんと謝ってくる。
彼が謝るところなんてないのに。

こちらこそ、苦しくなってきそう。
なにも悪くないのに。

「分かった!ダッシュツしよう」

元気を出すように頬を緩める。
それにロシナンテは笑う。
ロシナンテには笑顔が合う。

「ロシナンテさんはやっぱりかっこいいな」

「はは。突然どうした。そんなことを言っているとローがヤキモチやくぞ」

ロシナンテこそ、なにをいっているんだろうか。
何故そこで急にヤキモチなんて言葉になるのかな。