×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
08
改めて家の中に案内される。
スライムではもてなせないとた言われて、人間に戻っていた。
中に入って、外見とちぐはぐな事を知った。
なんというか、まるで高級ホテルの内装で、機械がところどころに置いてある。

なにか分からないけど、凄いモノなのだろうということはしっかり本能的に分かるので、触れないたように気を付けた。
二人に座るように足されると突然テーブルの上にティーセットが出現する。

なんということか、と思ったが、驚いたが、それだけなことにも気付く。
普通、もっと飛び上がるように感情を出す気がする。
なのに、少し受け入れている。
この光景を。

それに、懐かしさを感じる。
彼女たちは私の記憶を知れる真実を知っているらしい。

「今日は見つけられたから私達ラッキーだね」

「ポポラの予測地が精確だったからなのです」

「あ、そうだったね。変な島に来ちゃったって、ポポラ落ち込んでたもんね。良かったねー」

「ポポラは天才なのですから当然のことです」

紅茶がカップに入る。
匂いをかいで、良いかおりなので頬が蕩けそう。
絶対に良い茶葉だ。

全てが洗礼されていて、テクノロジーの進化を感じる。
テクノロジーと聞かされて、不思議に思わない感覚に、きっと彼女達と親しい世界の人間なのでは?という疑問が過ぎた。
流石に記憶喪失なのに、思ったより胸に収まっている感覚があるのは、この世界で生まれたのならあり得ない。

「あはは。まさか、恩人と一緒にここへ来られるなんて嬉しいや」

モナがニコニコと笑う。
恩人って、記憶がないから他人事に聞こえるよ。

「えっと、気にしないで?」

他に言いようがない。
苦笑してみる。

「自己紹介は私もしてなかったね」

驚いたから自己紹介とかやってなかった。

「うん。ずっと知りたかったんだよお!」

テンションを高め、高揚する姿に名前を出しにくくなる。
しかし、礼儀的に名前は知っていて欲しい。

「私はホロンと言います」

「ホロンさん!」

「正体不明だったのでデータが埋まって安心したのです」

二人と少し話して、電話番号を交換した。



***



自分の本当の記憶の欠片に近寄って、ハートの船に戻るのが楽しみになった。
自分の事を伝えられるのがこんなに嬉しいなんて。
ロシナンテだってずっと気にしていたから、喜んでもらえる筈。

スライムの躯でぷらぷらして、ハートの船に帰った。
たまに運良く通るんだよねぇ。
ラッキー!

先ずはロシナンテに報告する。

「ただいま。聞いて、私、記憶の事で分かったことがあるよ!」

足早に、早口で説明していく。

「ん?いや、おかえり……えらい興奮してるな。落ち着け落ち着け」

落ち着いてるよ私は。

「ほら、水を飲め」

足されて飲む。
二度お代わりして落ち着くことが出来た。
ロシナンテは大人だからか、こういうのが得意なのだ。
相談役にされるのが良く分かるな。

息を吐いた後、分かった出来事を順番に説明していく。
スライムが人になるということを知っていたことを言うと、ロシナンテは難しい顔をした。

「どうしてそいつらをそんなに信用する?」

と、聞かれたので、最新機器を使用してして、尚且つ、この世界にはあり得ないものだったことを言うと、ロシナンテの顔が微かに緩む。
どうやら彼も安堵したようだ。
騙されているのではないかと心配してくれたらしい。
こういう所が彼の優しさで、良く心配になるんだよなぁ。

「まァ、なんとなくは理解出来た。取り敢えず良かったな」

コクッと首を縦に振る。

「ローは多分二度と近付くなって言いそうだな」

思案している内容は私も同じ考えだった。
あまり、相談が出来なさそうだ。
なんせ、ローは考えすぎちゃう慎重派。
何処とも知れない彼女達を信用するとは思えない。

言い方が変だが、他の人に懐くペットに嫉妬する、みたいな。
そんな気迫を感じている。

「ま、折を見て言うのが良いんじゃないか?」

「うん……」

記憶に関してだけは誰彼言えないもんね。
相談と報告を終えて胸に溜まっていたものが消化され、悩みがなくなる。
記憶がなくても知り合いがこの世界に居るというのは気持ちを穏やかにさせるものだ。
ロシナンテにまた来ると述べて部屋を後にした。


廊下を進んでいると横から手を掴まれて驚く。

「え!?」

きょどりながら横を向くとローだったので力を抜く。

「やっと来たか。遅かったぞ」

「そもそも待ってたの?」

「毎回コラさんのところに行かなくてもいいだろうが」

「う。そこを突っ込まれるとは。なんか……ごめん?」

いや、まぁ相談しやすいし、変に行動を咎められたりしないからさ。
えへへ、と誤魔化し笑いを浮かべてローの様子を伺う。
やはり、眉間にシワを寄せていて、雰囲気が黒い。

「えっと、あ!そうだそうだ。ローくんにお土産があって」

取り出そうと懐を触ると、ローはおれの部屋でもらう、と部屋までグイグイ引かれる。
うん、やはり飼い主が嫉妬しているのに似ているな。

しみじみ感じた。
されるがままにつれてこられて椅子に座るよう言われる。
ちょこんと座ればローも聞く体制になっていた。
そんなに話すこともないんだけど。
困った、と頬を人差し指で触る。

「土産はこれ」

スッとペーパータオルを渡す。
暫しそれを見て横に置いた。
取り敢えず良かったというべきかな。
いつもお土産は迷うのだ。

「で?」

「ん?」

他に言えと言われ首を傾げる。
はて、なにも言うことなんてない。
なにを言えというのだろう。

「えっ、なに?」

「どんなトラブルに塗れてきたんだ」

「塗れてないけど??」

被せ気味に述べた。
まるで決まっているかのよう。
毎回毎回漫画みたいに引くわけないでしょ。
ため息を何故か吐く男。

「少し様子が可笑しい」

「可笑しくないって」

しかし、尚も可笑しいと言う。

「言え」

「いや、だからぁあ」

押し問答していると船員の声に攻防が止まる。

「あのォ。お昼の時間だって、コックが」

扉越しに伝えられてお互い立ち上がる。
追求をやめてもらえて内心ホッとした。
危なー、というかローは鋭い。

「あとでまた聞くからな」

「ないものを聞かれても……ね」



昼食を食べに移動。
ローの無言の話させるオーラが見える。
ムムッ、これは軟禁の予感。
逃げようっと。
スライムになって逃亡することに決めた。
ローはそれを既に察知していた。
説明が少しでも面倒だと女は逃亡するという性格を熟知している。
長年共に居るのだから、当然。

「逃げても無駄だ」

聞こえぬ様に小声で通知。

「お、お前も来たか」

船員が声をかけてくるので応える。
こういうのを聞くと帰ってきたな、ってじんわりしてきた。