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- ナノ -
04
食べるものを摘まみつつ話したり話さなかったりして過ごす。
こういうのはやっぱり大人になったなぁと染々感じる。
キスしたくないから避けるのもやりやすくなったし。
小さい頃は大人がキスしようとしてくるのが恐ろしくて泣きじゃくったものだ。
キスとは無縁、恋人も無縁だ。
この世界で結婚できる可能性がどうにもわからない。
だって、恋人もキスを他の人と普通にするということだ。
それが浮気ではない。
そんなの嫌だ。
好きな人にはキスしてほしくない。
それはわがままなのだろう。
だからこの世界が嫌で嫌で仕方ない。
キス出来ないくらいで白い目で見られるのが。

「手が止まってるぞ」

言われて彼の方を向くと同じくお酒を飲む姿が。
ラフな格好なのにかっこいいのがどこかむかつく。
こういうのは男が感じやすい感情なのかもしれないけど、幼なじみなのだから分かってしまう誰にも共感を得られない評価。

「ローはかっこいいからモテそう」

一年に二度程口にする台詞だ。
所謂毎年恒例。
ぼそりと言うと友達からも同じことを言われるから聞き飽きたと言われて笑う。
店から出るときはそれなりにアルコールを含んだ体が揺れる。

「飲み過ぎたな」

「ローの家の方が近いよね」

「泊まるのか」

今は彼は仕事の都合で独り暮らしだ。
あんなに家族大好きなのに良く出来たなと感心したのを覚えている。
よたよたと家に入りソファにぐたりと座る。
次から絶対セーブしよう。

「水飲め」

彼が汲んでくれたものをごくりと飲む。
体が欲するままに飲みきる。
コップを返すとジィと二つの目に見られていることに気付く。

「なに?」

邪魔と思われてないことを祈る。
そう思って見ていると彼がこちらへきて隣に座る。

「次仕事に行くときあの男が居たらどうする」

「ノーキスだって言う」

「ノーキスだなんて言っても本気で取るとは思えんが」

「じゃあ走って逃げる」

「ヒールで?」

転けたら悲惨ではあるな。
ぽろぽろとなる会話に眠くなってきた。
霞む視界の中、耳に温かなものが触れているのを感じて横を向くと男の顔が目前にまで迫っているのを知り、びくりと揺れる。

「酔ってるの?」

「酔った」

こんなに素直に認めない人だから可笑しくて指摘しようとしても瞳が真剣さを帯びていて喉がヒリつく。
二の句が告げずに居るとその距離は更に狭まる。

「おれはキス魔じゃねェ」

それだけ言うと唇に触れられた。
ふわりとしたものでもやもやする思考ではされたかされてないかが判断出来ない。
夢ように感じるそのことは目を閉じ睡魔に負けてしまったからローがどんな顔をしていたのかも知らない。