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- ナノ -
03
だって、ローが居酒屋とか行くと男女関係なく皆近寄ってきて自身を居ないかのように盛り上がるし苦手だ。
所詮はコミュニティに属す人達。
こちらがのらないと知ると白けた目で声かけてくださいと言ってないことを棚に上げて見てくる。

「ちゃんと個室のあるとこにする」

「初めからそうしてよ」

何度かしきりのないところへ連れていかれて更に苦手が増した。
全部基本的にこの男のせいだな。
ノーキス派にとって誰彼構わずキスしてくるようなところへはいきたくない。
警察に言ってもキスごときという感じで取り合ってくれないのは経験済み。
キスとは普通。
それを受け入れられないこちらが異端なのだ。
ドラマもアニメもみーんなキスする。
キスしないものなどないのではないかというくらい自然なこと。
学園ドラマでキスキスしてて、そんなの青春じゃねぇと何度頭を抱えたものか。

「ついたぞ」

キスなしのドラマやアニメが懐かしい。
なしなのが良い。
どの店でもキスすると割引とか店員にキスするシステムがある。
やるか!
絶対やだ。
誰もプラトニックな発想をしてくれないものか。
店へ入ると店員がやってきてローへキスしようとするが彼は手で制して断る。
リーシャにもしようとしたので零度の瞳できつく睨み付ける。

「キスはなしで」

低い声で念押しする。
だから外食は好きじゃない。
どの店もキスキスキスキス。
図書館で間に合ってる。
この世は息づらい。
溜め息を吐こうとして目の前にメニュー表を渡される。
それを開く。
店員がさっきからローのキスをもらおうとウロウロしてる。
大体キスという行為が緩いとその先も緩いというは自然。
成り行き的にやはり人口は現在も上がっている。
子供もベイビーもぽこぽこ世界。
平和ですね良かったですね。
メニューから適当に選ぶ。
テーブルに戻すと彼も選び店員に伝える。
期待に満ちた顔でローを見ている。
この国のシステムが異性とのキスに反応。
つまり女は眼中にないわけだ。
まだ同性に頬とかしてもらった方が心のダメージは小さいかも。
もうこの人にしようかなと狙いを定めているとそれとは違う方向から熱視線が降り注ぐ。
正面からビームを受けていると彼が話しかけてくる。

「キスする気か?」

「しないよっ」

ふるふると首を横に向けていやいやと否定を示す。

「おれのを断っといてやるなよ」

過去、キスを本格的にする年齢になった時。
ローからのキスを盛大に避けてしまったのをまだ根に持ってるらしい。
あの日、同級生からの唇がむじんに迫り来る恐怖から逃げることしか頭になくてその辺が曖昧なのに。

「私は好きな人としかしないし」

恋人にしかするわけないと笑い飛ばそうとすると目を光らせる男が見えて笑うのはやめた。
何故そうカリカリするのだろう。
と、考えている間に料理が運ばれてきた。
店員がチップがわりとしてキスを待っている。
気分が落ち込むのでさっさと行ってほしいのだけど。

「キスはしないからあっちへ行け」

ローが追い払った。
良かった。
男性だからこちらが対応しないといつまでも待つ。
こういうところも大嫌いだ。
他人にキスしなくてはいけないというプレッシャーはストレス大。
当たり前みたいな顔をしてチップをもらうならばとっくに渡しているが、キスは全く違う。
彼が断ると店員は怪訝な顔をして去っていく。
それをしっかり見送り彼に向く。
なにを話すつもりなのかと待っていると彼はうっそりとした空気でこちらを見つけるだけ。
話そうとしないことに痺れを切らしいい加減にしてくれと睨み付けた。
ここまで連れてきて話さないはない。
話すよう足すと頬杖をついた男がまったりとした様子で口を開く。

「あの男はなにもんだ」

「知らないよ。勝手に待ってて勝手にキスしたんだから」

「避けるなり殴るなりしとけ」

「な、殴るって無理に決まってるでしょ」

喧嘩慣れしているこの人とは違う。
仲間の男達と同じ枠に入れられているような言い方に怯む。
女なんだから簡単に殴っては仕事にも響く。
そう分かりやすく伝えたのに全く聞き耳を持たない。
眉間にシワが寄りすぎて怒っているように見えるがなにかを考えていることは知っているので、気にせず返答を待つ。
待っても聞くかは別の問題だけどね。
ふう、とキスされた先程の記憶がよみがえりぶるりと震える。
他人に触れられるものほど嫌なものはない。
ローが来てくれて良かった。