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- ナノ -
02
声をかけられ見知らぬ男と振り向いた先には幼なじみの件のローが居た。
なぜこんなピンポイントでここにいるのだろうと怪訝に思うが直ぐに彼は二人の間に入り込み男を威圧する。

「おれのものに触るな」

狼が唸るような声に男はびくりと体を揺らしひるみを見せて去っていく。
それを見ているとこちらを向いた男の視線がまだ怒っていることに気付き息を吐く。

「触らせるなよ」

「不可抗力なんだけど」

望んだわけでも頼んだわけでもない。
理不尽な要求に横を向いてから帰宅の道につく。
しかし、彼の浅黒い手に手を掴まれてドキッとなった。

「助けてくれてありがとう」

お礼を言いそびれたので伝えると彼はふん、と偉そうに笑う。

「おれが出来ないのに他の奴がキスするなんて許せるか」

どんだけキス魔なんだと果てしなくがっかり。
誰にもさせるわけにはいかない。
今回は手で良かった。
もし顔ならひっぱたいていた。

「女の子コンプリートはドン引きだよ」

商店街のスタンプみたいな扱いに足が止まりかけた。
しかし、逃がさないとがっちり手を握られている。
その間にも女性の視線がローへ集中していた。
モテるな相変わらず。
飽き飽きしている光景に下を向く。
この世界がキスが緩い世界でなければ自分とて輝かしいチートを片手に振るっていただろう。

「また奪われるなよ」

そんなことを言われてもこんな世の中なのでいつの間にか寝ていたらされてました状態なのもあるだろうし、約束出来そうにない。

「私だって嫌だもん」

人通りが少ない道に入ると彼がリーシャを壁の前に立たせて頭の横に手を付き追い詰める体勢をする。
これ、恋人にする体勢ですが。
冷ややかに見つめているとローは熱を発する目を上から見せて「取られるくらいならおれが」と少し憤った声で叫ぶ。

「なに?」

「気にするな」

と言われる。
囲いが解除され、先に道を行くローを見つめて心の中で叫ぶ。

(キスされるかと思ったああああ!!)

赤面を盛大に浮かべて頬を両手で挟む。
そこまでにぶちんなわけでもなく、少女漫画を読み漁った経験のある女は悶えていた。
つまり、少女漫画思考という現実とはかけはなれたものを例として考えているズレ。
しかし、なんの因果かこの世界ではそういうご都合主義としか思えない展開は少なくない。
逆ハーレムやハーレムと呼ばれる現象もここではありえるのだ。
キスする相手がたくさんいればそれはつまり魔力を与えてくれる相手がいると言うこと。
キャリアウーマンやエリート達はそういう傾向も良くある。
たくさん仕事が出来る人は良く魔力をもらっている人。
魔力はエネルギーだ。
体力を使うためには魔力が必要。

「ボーッとするな」

考え事をしているとせっつかれる。
今までとは違い体も軽いので反抗も簡単に出来るだろう。
しかし、相手が幼馴染というベタベタなテンプレート。
抗わない方が今後のためだ。
保身にスパッと走る。
ノーキスはこういうところがないと世間に揉まれて窒息してしまう。
ローにバレぬように赤みの走る顔を治して進む。
歩いている間にも先程の意味が深そうな態度を思い出しては男をチラ見する。
気になってしかないではないか。
中途半端はやめてほしい。
やるなら無か有が良い。

「さっきからちらちらうるせェ」

「それはローが」

「あ?」

凄むので黙った。
え?これ悪いの私なの?と思ったが薮蛇はつつきたくない。
でもさっきのことを詳しく知りたくはある。

「どこ行くの」

勿論部屋だよね、と確認を取る。
変なところへ連れてかれたくないから牽制しておく。

「飲みに行く」

その瞬間回れ右したのは悪くない。