12(完)
仕事の合間に誕生日までの日々を楽しみにしている自分が居て、少しはしゃぎ過ぎてるなと反省しつつ、逆らえない嬉々。
カレンダーを見ながら頬が緩むのも止められない。
モールで買い込み余ったスイーツなどはローの部屋に呼ばれ二人のお腹に入っていたのは余談。
キスをされることがほんの少し緊張しなくなったかもしれない。
爛れてるぞ私、と叱責。
魔力パックの残りを飲んだら不味くて飲めたものでないことを感じ、思わず咳をした。
魔力パックが飲めなくなったのならどうすれば良いのか不安が燻る。
「ローっ」
慌てて、ドアを開けてもらい中へ入ると彼は目を丸くして内容を聞き取る。
が、こちらが危機としているのに男はそんなことかと異に返さない。
「純粋な方をお前の体が欲してるだけだ」
「そんなのダメでしょ。どうしようっ」
動揺して手が動く。
「ダメなのか」
「え」
問われて意味が理解出来ない。
「今ならやめられるぞ」
その中身に絶句した。
その言葉が欲しくてキスを受け入れていたのだ。
なのに、やめられると選択を突き付けられた途端嫌だという正反対のものが浮上。
そんなはずない。
「や、やめないと、やめないと」
「やめてお前になにか良いことが待ってるのか」
彼の述べる言に反論もなにも出てこない。
良いことなんて、あるわけない。
今まで損ばかり選んできたというのに。
好きなものも食べられない、外に出られない。
満足に歩けもなしない。
ご飯も美味しくないのだ。
楽しくない、なにもかも。
得られたのはノーキスという肩書き。
しかも、己一人だけしかそうしてなかったという孤独な事実。
「疲れてるから今は悲観的にしか考えられないんだろ」
ローはゆっくり近寄ってきて玄関より奥に進ませる。
肩を抱き寄せられて虚ろなリーシャの目を見た。
「魔力が足りてないせいだ」
キスをされて反射的に委ねた。
しっとりと頬を触られてもっととねだりたくなる。
「足りない、だろ?」
「そうかも」
とろりとなる思考に頭を相手の方に凭れさせる。
キスがなくなった先を考えるのが怖い。
「お試しには延長が付き物だ」
溶ける脳に砂糖が振りかけられる。
延長する、と悩むことなく即答した。
そのまま彼が優しげな顔をして今日は泊まっていけばいいと唇に触れながら言うので寂しさに占められた気持ちが発熱。
「隣だから直ぐ帰れるのに」
「隣だからいつでも帰れる。どっちでも間取りは同じだろ」
そう言われたらそうなんだよな。
と、ふやけた顔で考える。
「延長代も貰わねェと延長は無理だ」
梯子を外されそうになって慌てる女は外されたくないと懸命に望む。
「延長代払うから」
「高くつくぞ」
男は笑う、魔力という蜜を垂らして。