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単に男としてのプライドの問題かもしれないが。
スイーツを注文する男を眺めて、彼がこちらを向いて顔を見ていたことに疑問符を浮かべる。

「ここの店、おれの働く会社とコラボしてる」

「……ん?」

何気なく言った言葉にお店を見るとフットワークが軽いなと戦慄した。
いや、コラボて。

「ん?ローの働く会社、CMで見たことある」

ロゴに見覚えあり。
なんの会社かは忘れたが。
うーんと唸っているとITだと言われ、ITとお店がコラボとはなんというか、訳がわからなくなる。
一体どうするとコラボ出来るんだろう。

「ローってサラリーマンだったよね?」

「お前、おれのこと興味無さすぎだろ」

彼の怒りのマークがこめかみに。

「副社長だ」

「上り詰めたの?成り上がり?」

「初めからだ。殴るぞてめェ」

あまりに記憶になく、適当に言うけれど、無知が露呈しグッと拳が頬の横に浮かぶ。

「えええ。副社長?はじめっから?なんで?」

「麦わら屋が社長で起業するってんで巻き込まれて成り行きだ」

成り行きやべえ。
ローのびっくり話がびっくりなもの過ぎて嘘だろ、と喉が震える。

「なんで私の隣に住んでるの?隠れ蓑?」

ローが拳を緩めて手を見せて高速で肩に指を押し込めグリグリしてきた。
うわ痛い。

「ただ二つ目の部屋ってだけだ」

「いたたた。分かったから分かったから」

おれのことを知らなさすぎだ、とローが怒るのも仕方ない。
でも、毎日エネルギー切れのまま働いていて、記憶する為の余裕がなかったのだ。

「エネルギー満タンだから今度はちゃんと覚えられるよ」

「覚えろ。あとおれのプロフィールはどうなってる」

そう聞かれてどや顔で誕生日だけは覚えてることをアピールした。
その他の足のサイズとかは知らん。

「誕生日といえば」

「お前はあと少しだな」

「!」

びっくりマークも出るようなくらい目を開いた。
知ってるとは思っていたがそんなに早く考え付くとは思わなかった。
でも、誕生日っていわばキス祭り。
祝ってもらう人から全てのキスを受けるという地獄の誕生日。
そんなの嫌だったので祝ってもらったことはない。
ローの誕生日も勿論キスしなきゃなので参加はしてない。

「どうしようかな」

といっても自分で祝っていくスタイルなんてしたことないし。
ケーキを買うエネルギーさえもないもん。
今動けているのは期間限定。
リーシャがぽつりと溢すなり、ローが祝ってやると言ってきた。
催促するように足した訳ではないのだと言うが、全く引かない態度に戸惑う。

「でも、その」

「不満か?おれだけだと言っても?」

「いやー、うううん」

「――の限定ケーキ買ってきてやる」

「あ!知ってるそれ」

スマホで今話題のスイーツだ。
買いにいけないリーシャなので、ローにしか買いに行ってもらえない。
そこまでしてもらいノーなんて言えなくなり、ローだけならなんとかなるかもしれないと、大人になって初めて、一人のみでない誕生日を開催することが決まった。
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