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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
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男を追い払うとか作り物の話でもレアだし。
独占欲というのがこの世にはそもそも人に対して行われるという事例がない。

「やば、なにあれ」

男が彼女的立ち位置の子に話しかけても彼女的なポジションの子は話が聞こえていないようだった。
えー、といった唖然とした顔で立った男性は置いてけぼり。

「これ」

彼にポップコーンを渡されて慌てて受けとる。

「あ、色々ありがとう。本当に助かった」

「ポップコーンはペントハウス味だ」

「ペントハウス!?それ味なの!?」

物件の名前じゃね?
なんなんだと恐る恐る食べたら塩辛系の味でペントハウスとは、と新しく不思議な疑問が生まれた。
多分この謎は晴れることが永遠にないかもしれない。

「ペントハウスってなんだよ。ただの塩味だろうが」

男も習って口に入れる。
ローもひたすら疑問に思いながらも注文したのだ。
でも、その味が売りだしに書いてあって買ったというのが以外だった。
他にもサボテン味、軋み味、といったもはや妄想で味付けされているのだという内容しかなかったと言われた。
ジュースはコーラ味という普通の名前なのがへんてこだ。
ジュースとポップコーンの提供会社が違うのだろうか。
映画が始まると先程の未遂については考えなくともそちらに思考が占領される。
ほのぼののものは犬や猫が出てくるのだ。
主人公が出る傍ら、日常のところも出てくるが、背景でキスシーン。
そして、館内でもほのぼの映画なのに観客がキスしている。
折角心が癒されそうだったのに。
むす、と気持ちがささくれるとローが囁いてきた。

「顔が可愛くないぞ」

その発言になんだと、と怒りを込めて見ようとしたら口を防がれ唐突な補給。
びっくりして離されても僅かに放心した。
顎をクイッと映画のスクリーン映像の真ん中に向けられて軌道を直される。
なにそのセルフサービス。
その都度真ん中に顔を直されるという奇妙な言動。
終わる頃にはウルッときてきてハンカチ寸前だった。
泣きそうで泣かないのがリーシャクオリティなのだ。
だあだあと涙を流すと耳が泣きすぎて聞こえずらくなるということがあった為。
やむ無く寸前を選ぶしかない。
あと、泣いたら映画館が明るくなると人に見られて恥ずかしいし。
色んな都合により号泣禁止を自分にしている。
泣いていたらハンカチなど足りなくなるから家がおすすめだ。
カーテンがシューっと画面を隠し館内が明るくなると伸びをし、ポップコーンとジュースの空を持つ。
体がコチコチだ。
歩くと少しふらふらするなと笑う。

「良かった」

「次はどこに行く」

感想を言い合うのか、違うのか聞いてくる。

「え?映画見に来ただけなんだよね」

映画だけ見て帰るとばかり思っていたのだが。

「チッ」

ローは苛立たしげに眉をしかめると「んなわけねェだろ」と一蹴。
じゃあ、なにしにここへ来たんだろうとなにも聞いていないので問う。

「お前……これはデートだ」

もしやこいつ思い至らなかったのかと思っている不審な顔でこちらも呆気に取られる。
えー、友達と映画に行く感覚で今日は居たのだが。

「そうだったの?言ってくれないと流石に映画に行くぞってだけじゃあね」

映画を連想する事を言ったらじゃあいくかってなって、即行くのはデートじゃなくて映画鑑賞だろうに。
察してくれは難易度が高い。
この道、男女のお付き合い皆無なんだからそっちそこ察してくれ。
そもそもショッピングモールに行くということ自体ないのだから。

「ローはないの?私はここのことテレビでしか知らないし」

「パンフレット」

手渡されたモール内の案内用紙。
電子でもあるらしいが紙の方が手っ取り早い。
というわけで並ぶ名前を見ていく。

「わ。滅多に来ないけど楽しそう」

見たことのないものしかないのでわくわくする。
ゲームコーナーとかカラオケとか縁がなかったからね。
服屋も良いなぁ。

「ドーナツ屋あるぞ」

テレビのCMで見たことがあるお店の名前に行きたいと胸が踊る。
美味しそうで羨ましかったし食べたいと思っていたのだが、カップルも人も居て近寄れなくて、断念したものだ。
遂に食べられるのかと嬉しくなる。

「行きたい、な」

「そこでテイクアウトして他のスイーツも買ってから車で食べれば良い」

「でも面倒なんじゃ」

「そのためのカーテンと車だ」

個室の部屋なんてカラオケしかないから車が一番の個室だ。
ローは言うが早く足を動かし噂のドーナツやチラシで見たことがあるスイーツ、ジュース、持ち歩けるグルメのものを買い込む。
こんなに買っても食べられないのではと思ったが持ち帰るとの言葉で解決だ。
持ち帰るけどどちらの冷蔵庫に入れるのだろか。
隣同士だが、ローのこちらの帰宅は次どうなるかわからないだろう。
高級マンションの方で一人で食べるから買い込んだのだろうか。
想像して、甘いものがそんなに好きなのかと首を傾げた。
幼なじみと言っても途中からの接触がなかった。
それはローからのキスも受けたくなかったからだ。
幼なじみとなんて更に逃避の感情があったもんで。
よく知っているから避けた。
今思うと彼の気持ちを傷付けたかもしれない。
たまにその話が出るから。
自分がキスされないのに他のやつとなんて、と出てくるから当たっているかも。
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