香牙 | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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明日から学校は休校になる。
当然、いきなりの空白期間により手持ちぶさた。
とは言ってもアーティファクトを観察するという己の趣味があるゆえに暇ではない。

「今から時間あるだろ。フラペチーノ奢ってやる」

「今冬ですよ。寒くて鼻水では済みません」

「カフェのチョコシロップなんとかでも良い」

「私が学生だからって映えるもので釣れませんよ」

「アーティファクトのレプリカ見せてやる」

「なめないでいただきたい。よろしくです」

断ると見せかけフェイント。

「強かなところもポイント高いな」

「はて、それはなにかのお遊びですか」

「前から思ってが、その言葉使いはなんなんだ」

「ただの敬語ですが」

「冷え冷えにも程がある」

「友達とでもこうです」

「友達いたんだな」

殴ったって許されるよな。
手をグーにする。

「怒るな。慰めてやってんだ」

「どこの慰め方ですかそれ」

可笑しい、今聞いていたものの耳にはその欠片すら聞こえなかったぞ。
バカにしてからかってる。

「さっさとレプリカ見せて下さい」

「年上を敬え」

「おじさん、アーティファクト見せて下さい」

敬えばローはカッと怒る。

「おれはまだ若い!」

年上って自分で言ったのに些細なことだ。
繊細だなこの人、めんどくさ。

「カッカしてはシワが出来ますよ」

「友達居たのかと聞いたことにそんなに怒ったのか」

怒るわ。
誰だって失礼なことを言われてしまえば仕返しするっての。
ローに異物のレプリカを見せられて機嫌を直した。
レプリカなだけあって本物ではないからそこまで食い入るくらい見るわけではない。
さらっと見てから別れた。



冬休みも終わり、卒業式の練習も始まる。
それでもまだ事件は犯人も捕まっておらず、未だに好奇の空気は室内にあった。
犯人探しをする子も居る。
好奇心でやっているのだろう。
新たな事件がまた起きないかと言っている生徒がいる。
世の中の縮図だなと内心呟く。
これが大人の世界でも話すことは大差ない。
帰りの校内。
いつもよりもざわざわしている。
寒いからか、寄せあう。
密度も多い。
その時、微かに悲鳴が聞こえた。
校庭からだと知ったのは生徒達が窓際に寄っていったから。
リーシャも同じように窓へ向かうと校庭に氷が出来ていた。
氷山の形をしているが透明だった。

(雪女だったのか)

その氷の傍では女が一人突っ立っている。
氷のなかにプリーツが見え、女子生徒が閉じ込められているのだと窺えた。
この氷を産み出したのは異物ではなく、都市伝説のモデルとなった人物ではないかと推理の一つとして考えていたので、氷を発生させたことに関しては驚くが、ありえると分かっていた。
異物とはそもそも、人の感情を吸い取った末に無機物が現象を起こすと文献にもあったのだ。
人間自体に異物の力が芽生えてもなんら可笑しくはない。
ただ、長年かけて現象を起こす異物とは違い、短時間で怪異を引き起こすものは希。
そんなエネルギーを持つ人間は殆ど確認されてないのではないか。
人は生命活動にそのエネルギーを費やすので、現象を起こすエネルギーは殆ど発生しない。
狼男もそのエネルギーが見た目に反映されたと読んだことがある。
雪女も見た目は人間なのに、ある日超常的な能力を知らずに開花させて事故を引き起こすということもあり得た。
感情を爆発させるとああなる。
今、怒っていることのように。

「なんだあれ」

この数ヶ月、色んな人たちが事件の被害者について噂をするのだが、どうやら女関係でこじらせていたらしい。

「氷が」

周りが混沌としてきた。

「見るな!見るなぁああああ!」

いきなり推定雪女が咆哮。
こちらの外側の壁がパキンと凍る。
生徒達の悲鳴が響く。

――チリン

鈴の音が聞こえ、鞄を開けた。

「分かってます」

それに答えるようにまたちりんとなる。
目を閉じて呼吸を整える。


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