これ以上この障壁が広がる気配もないし。
ロー達やハンターは呆れめないから侵入は試され続けるだろうが。
毎回毎回綺麗に終わるわけでない異物の事件。
被害者がまだ居ないから幸運だ。
ルコルッタを見られないのは残念。
諦めるのも利口。
案内人達が異物を使い穴を開けるのを見ているとじわりじわりと薄い色がはっきりと向こうの景色を見せ始め、推測は当たっていた。
歓声が上がり、今のうちに誰がはいるのかと見ているとリィンがはいると立候補。
最初から自分が入ると仄めかしていたのもあり、反対意見はない。
少し、気になった。
リィンが入れるくらいに穴が広がると彼は素早く移動してルコルッタの障壁の中へ飛ぶ。
ローは待つことになりそうな空気に向こうの町でバーにでも入るかと聞いてくる。
気になるけれど待つのは大変そうだし、そうしましょうと同意。
案内人はもう障壁の向こうに集中しているのでついてくることもないので、別れた。
ローの用意してある車に乗り込むと彼に彼女を誘わなくても良かったのかとたずねる。
良い雰囲気だったぞと唱えてみた。
が、かんがえてもなかったと答えられ、こちらこそ勘違いだったのかと大人の恋愛は観察不足だなと内心失敗したことを悟る。
なんとも思ってなかったとは。
「それはきっとあいつがお前を引き抜きたいとぬかすから」
「私を引き抜きたいとは物好きです」
「そうでもねェ。ドフィだってお前を狙ってる」
「モテモテで困ってしまいますね」
「フフ」
冗談が通じたのか微かに笑う男。
そうか、引き抜きたいと言っているからあんなに言葉を交わしていたのか。
「引き抜かれるなよ」
「でも、海外って異物の理解が高くていいんですよね」
「お前がふらふらしたくもなるのは分かるが」
「トラファルガーさんも海外に移住してみては」
「住み慣れたところがいい」
「チャレンジ精神皆無ですねー」
「安定を取ってるんだよ」
バーにつく頃には夕方になっていた。
砂漠地域に近いので今戻ってこれたのは良かった。
中に入るとルコルッタ関係か人が多い。
ローに何度かバーに連れてこられたが自分から入ったことはない。
彼に誘われて流れで入るときくらいだ。
一人で飲むのなら家で飲むから。
「うまくいくと思うか」
彼が酒を頼み終えると聞いてくる。
車の中で聞かなかったのはじっくり聞きたかったからとかかな。
その答えはノーなのだが。
答えに納得いかずな顔をする相手に勘を披露。
「うまくいくかもしれないですが、それは楽観的過ぎるものです」
「今まではうまくいったのに、今回はなにがちがうってんだ?」
男は運ばれてきた酒を前に聞く。
リーシャもお酒を口にしつつ、推理。
「今までは人が主体となり、燃料として異界化することが前提の解決でしたよね。今回は誰も巻き込まれてないことが気になるのです」
「たまたまだとは」
「いいえ、意図的にですね。中に居た人が外に出れたことからして、ルコルッタは近付くのをよしとしていない」
「そんなに金持ちに買われたくなかったのか」
「それだけなら機関のだれかを入らせることが出来るはず、それをしないのはおそらく」
互いにお酒も進み、リーシャの推理に聞き入るローは自身のスマホが鳴るのを聞いて下を打つ。
あの案内人の女であった。
電話に出ると悪いが直ぐに戻ってきてくれと乞われる。
なんのようだと足せば、ルコルッタの様子が可笑しいので見てほしいとのこと。
どちらかと言えばローではなくリーシャの見解を求めてきている。
それを瞬時に理解したローはまた行かなくてはならない手間に溜め息を溢す。
こちらをジッと見ている彼女にそれを説明するとルコルッタも侵入者が来て変化したのでしょうと予測していたようにお酒を飲み干し、ローも己の組織の人間を呼び車を運転させる。
車に揺られてロー達はそのまま目的地まで行く。
ルコルッタの障壁前まで来るとルコルッタがある建物がぐにゃりと曲がっていた。
ローは始めてみる建物の変異に眉を寄せる。
ルコルッタという異物を怒らせたのだろうかあの男は。
使えない野郎だと悪態をつく。
「成る程。あえて物質を曲げて迷宮に変えたようですね」
「迷宮?」
「異物には建物事異界化させることは常識ですが、中には触れられたくないからと建物の中を元あった内装から考えられない程複雑にさせる能力を持つものもあるんです」
淡々というが、そういう事例はレアだとローも知っている。
そんなレアケースに今回当たってしまった。
このままハンター達などが中に入れば遭難が相次ぐのが目に浮かぶ。
下手に穴を開けて被害を広げさせるなど政府はよしとしないだろうな。
自分達も入れないかもしれないと案内人の女性の元へとたどり着く。
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