香牙 | ナノ
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いつになっても対策しないし、もっと本格的に予算を異界の部署にやれないのかな。
上も上でちょっと防衛が甘い。
ちょっとじゃないけど。
高校の事件からもう2年も経つというのに変わったところなどない。
対応も後手に回りまくっている。

「ということは、トラファルガーさんは海外に行くんですか?」

「おれはサブだな。他の奴が本格的に動いている」

「サブですか……殆ど旅行ですねそれ」

「ああ。そのためにサブにしてお前も連れて行く予定だ」

「……?」

なんだか変な発言が聞こえたぞ今。
まるで行くのが決まってるみたいな、そんなこと、あるわけないない。
内心ただの空耳だなと聞き流すこととした。
しかし、相手は鋭い五感を駆使してリーシャの逃避を阻止。
その五感を違うところに使えばいいのにね。
無駄使いとはことことよ。
呆気にとられて、そういえばこういう奴だったと改めて思い出す。
なんでもかんでも巻き込もうとするサディスト。
ドフラミンゴ程じゃないが。

「お前、失礼なこと考えてるんじゃねェよな」

「トラファルガーさん、読心術でもやってみては?本音を告げる労働力を消費せずに済むのなら読んでください」

「そこは読むな、と言うべきだろ」

呆れた声音で締め括ろうとするが、待ったをかける。
行かないという返答は受け付けないという可笑しなことを言う男。
今はそれを聞きたいわけではない。

「キスはおやつに入りますか?」

ローはみるみると眼を最大まで開き口元をひくつかせた。



ローを驚かせることに成功したが旅行を回避することは出来ないようだった。
ちゃんと準備しておかないとこっちで全て手配するぞと言われてしまう。
それは下着とかを含むのだろうな。
そういう脅し方、ラノベで読んだことあるよ。
全くキュンとしないヤバい。
やはりリアルで使われると一気にロマンではなくなるという例だな。

まだ旅行まで時間があるので、なにをしているのかといえばコスプレの事件を少し研究することにした。
コスプレした男女が立て続けに血を噴いたというのが検察による証言。
衣装についての異物ではなく、能力による底上げの異物ではないかと朝、なんとなく思い付いた。
そういうのは形がバラバラなので一見異物と判断しにくいのだ。
では、どうやって異物を手にいれてたまたま能力を使いコスプレをしているのかという似た背景については全く変わらないので無視。
どうにも使われているのかもしれないという陰謀が浮かんでは消えた。
似すぎている。
そして、コスプレして意識をなくす前までは普通に能力を使えていたとしたら。

(異物を任意で操ることが出来る)

そんな黒幕でもいたりするのかな。
いるのなら、速攻囲われるだろう。
今でも研究されている異物はわからないことが多い。
わかっていることは人の身で異物から身を守るのは難しいということくらいだろうか。
身を守れないのに市民が警察にどうにかしてくれと訴える映像を見るたび、なにを言ってるんだと呆れる。
助けて欲しい気持ちは分かるけど生身の人間に出来ることなんて呼び掛けることくらいだ。
専門家だって、変異が起こる前に止めることは出来た事例がない。
起きてから原因を探すことしか出来ない。
なのに、責められるのは知識を集めてない人達だと丸分かりだ。
少しでも知識があれば周りを見て変異の予兆を知り逃げることが最善だと分かる筈。

全く、全てを異物のせいにするなんて。
テレビのニュースを眺めて内心怠慢だなと捨てる。
コスプレ事件に推理をしてみたが、情報が規制されていてなにもわからない。
専門の人間も側に居る筈だが、そういう情報すら出てこない。
胡散臭いのとは違う理由なのかもね。
いつもならもっとわんさか情報が出てきて赤裸々に剥かれるんだけど。
それがないということは、上層部が隠したい真実でも落ちていたのかもと予測。
本当に異物を操れる異物、又は人間、または組織が現れたとなったら混乱を起こさぬように情報を止めるのは至極合理的だ。
なんせ、知ったとしても防衛手段などない。
それなら、知らされない方が世間は平和に過ごせる。
知って絶望するよりも平和と思って過ごすことに慣れているのだから。
今になっても異物関連の防衛が認知されていても皆防衛しないまま平気で歩いているのは、しういう認識が薄いと知る身としては納得する。

調べものが終わり背筋を伸ばすと骨が軋む。
学生の時は徹夜でも平気だったのに。
これが老化かと真面目に悩んでしまう。
もっと年上からは若いだろうと突っ込まれること間違いなしな思考。
冷蔵庫からアイスを取り出してもぐもぐと咀嚼。
うまうま。
テレビをつけて流し見る。
それにしてもローはなんというか経験豊富そうなのに、年下に比喩られて動揺していたな。
なんだかあんな反応されるともっと見たくなる。

「それにしても、あの寝言」

男が呟いたワードはなかなかに興味を抱いた。
と、クイズ番組を見つつ馳せる。
直ぐにその考えも飛散したけどね。
テレビのチャンネルを変えてアニメを見た。
CMも入ってくる。
続きはウェブでのやつ。
気になるけど調べるほどじゃあないんだよ。

旅行の準備をしていくうちに初めて赴くことになるだろう異国の地への興味が湧き、それが楽しみになっていく。
もう行かないと言われたとしても、単身でいく気に、くらいにはなっていた。
ローがキャンセルしてしても一人で行くぞ。
頬が高揚してスマホで色々調べてみた。
ああ、楽しみ。
言葉はどうするのだろう。
まさか通訳なしでは異物の探索は困難だろうし。
現地には専門家の警察は居るのかも気になる。
勿論観光もしたい。
どうせ行くのなら回収だけは味気ないし。
用意しているうちに寝落ちしてしまったことにも気付かない。

『フフ、これで私はっ』

女のねっとりした声で覚醒した。
夢かい。
むにゃぁ、とあくびをしておきた。
夜中である。
中途半端すぎる。
事件の資料を見なくては。
ついでに魔法コスプレの女の人のテレビに映ったものを見なくては。
一度調べたら最後まで調べて解決はしたくとも、知っておきたい。
今ではテレビで放映されたものがまたされたりして、視聴率を得ていた。
画家みたいな人気の上がり方だなと興味はそちらにいく。
確かに生きているときも人気というより話題性は抜群にあった。
亡くなったら爆発的に話題性を持つ。
しかし、生きている時よりはその話題は落ちるのが早く、刹那的だ。

男のヒーローも相まって二人セットで比較とかで放送されている。
普通に一般人が暴走したときのニュースよりも話を大きく広げやすいからだろうか。
二大ヒーローの悲劇と新聞に取り沙汰されているが、女の方はともかく、男は無名なのに矛盾。
事件の時くらいしか見たことがなかった。
本当は二つの事件に繋がりなどないのかもしれない。
突然というワードの繋がりくらいしかない。
まぁ、時期が近すぎるし怪しいが。
リーシャはスマホでローに旅行の準備は完了させたと送る。
直ぐには帰ってこないところが彼の性格や仕事を感じるな。
家に来るのはまめなのにメールの類いはぽつぽつなのだ。
頻繁にスマホを確認する人ではないのだ。
そういうところは世代を感じる。

「ホテルはもうあるんだろうな」

高級ホテルとかだったら気後れするかも。
いや、しないか。
いったことがないから全てが憶測でシミュレーションになる。
ホテルがシミュレーションって面白い。
暇な時間が出来たので面白動画を見る。
異物について言っている動画も気になっているので定期的に見ているが、否定的な意見が多い。
埋めろだの、破壊しろだの。
埋めても今回の旅行行きの原因になった美しい異物みたいに掘り起こす人がいずれ出てくる前例があるだろ。
破壊は異物を刺激するので悪化する。
どれも未来的には後回しの選択肢と最悪の引き金でしかない。
意見の中で興味深かったのは異物を無の空間に置くというものだ。
それが今出来る最善策だな。
海か山か。
山には異物が転がっているから鉢合わせするのがダメ。
海も同じく。
詰んでる、八方塞がりである。
最早隠せるところなどないな。
しかし、動画を見ていると異物は現代において存在が異質であると言う人が居た。
電気や科学が普及しているのに、魔法に似た概念があるのに科学が発展していると言う違和感を訴えている。
なにが可笑しいのか分からないが、誰も違和感を持ってないのが違和感らしい。
リーシャも現代人なのでさっぱり。

「もしや噂の前世持ちかな」

この世には説明できない現象はある。
それが自称前世持ちだ。
ほぼ都市伝説的な眉唾物。
本当に前世説があるのなら政府が公式に発表していても良いのだと思う。
異物があるのだから前世の記憶くらいはまだ良い方だ。
前世の記憶と検索したら、己が異物の関係者と名乗る、マイアが居た。
タイムリー。
ローが吐いた台詞で思い出す。
投稿日は二年前。
異物の話題に火がついた頃だ。
異物の話題は年に一回は必ず強火になり目立つものでもないと下火に直ぐになるもんだから。
マイアという女の歳は20代に見えた。
己は前世マイアという女でとある秘密の研究施設で命を落とした被害者であり、被験者という。
マイアの投稿へのコメントを見ると信じている人はいない。
皆が面白がって質問していた。
被験者か。
大昔は異物を攻撃の手段として使おうとしている計画があって、秘密の実験として非道なことが行われていた、というこれまた尾ひれのついた都市伝説がある。
なんでもありだよこういうの。

「でも、じゃあ、あの夢遊病の言葉はなに?ってなるけど」

マイアが被験者で苦しんでいたなら、ローのあの陶酔したようなことを言った男の言葉の内容は矛盾する。
なんだな騎士みたいなふわふわした言動だった。
うすら寒くなるような声だったのは良く覚えている。
殴り付けたいような感じ。
ロー単体ではそのようなことは思わないのに。
まるで二人目が存在しているよう。
と、ここまで考えたは良いが、動画ではどうも異物は危険だとかこの世にあってはならないとか言っている。
でも、今まで見てきた異物関連はどれも人間が利用しようとして起きている。


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