香牙 | ナノ
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ローがするかしないかなんて決めるのは本人。

「そ、んなっ。困ります!」

「おれも困ってた。それを許せとお前は言った。なら、おれのことも許せるよな」

それに女性ははくはくと息を吐く、吸うを繰り返す。
突然の活動拒否に開いた口が塞がらないのだろう。
しかし、言った言葉が単に己に跳ね返ってきただけだ。
惜しむのなら自分の軽はずみさを恨んでくれとしか言えぬ。
ローは相手のポカッとした顔をみるのが不快なのか、リーシャを伴い異界の近くへと距離を縮める。

「なにか策が?」

「あるにはある」

「あ、あるんですか」

呆気なくあると言われても、それをもっと早く提案するなりなんなりしてくれれば良かったのにと、きっと分かっているからこそ今の状況を楽しく過ごしていたのだなと想像。
ローの性格を深くは知らないが、こういう現象に興味があるから今の祓い屋という職業を選んでいるのだろうと感じる。
嫌なら継いでないだろうし。
どんな案なんだと聞いていれば結界に炎の属性を纏わせて囲うという発想。
ほう、と感嘆。
考えているのだなと深く知る。

「適当に観戦して帰るのかと思ってましたよ」

「おれは初めからそのつもりでいた。お前がこのままじゃ餓死して死ぬと分かったからやるだけだ」

「ドフラミンゴさん、そんなに私のこと大好きなんですね」

きっと、ドフラミンゴさんから言われてるのだと可哀想になる。
上司のわがままに付き合わされる人って苦労人になるんだよね。
一般人を異界化から守れとか言われていたのなら、無茶な注文である。

「どうしてそこでおれの好意によるものだと思わない」

「だって、トラファルガーさんと会ったのなんてこの間ではないですか?」

「おれはもっと前から知ってた」

「あー、組織お得意の写真でですか?」

「お得意ってなんだ」

ローは眉を下げ、不機嫌そうに言いたがる。
写真と履歴書とかをファイルで挟んであるものをどうせ見たのだろうな。
いかにも組織っぽい。
秘密結社に有りがちなスタイル。

「ドフラミンゴに前から見せられてたんだよ。おれが見たいとねだったんじゃない」

「お見合い写真みたいですね」

「お前はまたそういうことを言う。ここは異界なんだ」

「それはこちらの台詞では」

「おれは良い。プロだからな」

「私だって、プロ学生です」

「なんだプロ学生って」

「学生という名のプロフェッショナルです」

ローはめちゃくちゃ笑った。
ツボに入ったみたいでなかなか終わらん。
笑いをおさめて結界をはりはじめる。
さっき地面に描いていたものだ。
切り替えは確かにプロのそれであるなと感心。
女学生をつれ回すところ以外はかいがねそれっぽく見えるのがクオリティ。
ローは先程目立つクラスの子達にすげなく対応していたのに、今でも黄色い視線が張り付いて離れない。
人気のイケメンに見えるのだろうか彼女らには。

「さっきから視線をものともしませんね。もしかしなくとも慣れてるんですか?」

「仕事柄人に関わる。嫌でも評価は耳に入るんでな」


自分がどう他人から見られているか理解していると。
それでもこの仕事を続けているのが不思議。
人と関わり合いたくないのなら、他の人を挟めば解決しそうだが。
ドフラミンゴは秘蔵の子と可愛がっていたのだから、頼めば用意してくれそうな気がする。

「本来はいるぞ。今回はお前を助手にすると控えてる」

それ、まず本人に聞いてから退かすべきだろ。
どしょっぱつからなにも言わないで連れ回したのはそういうことだったのか。
やたら直進でリーシャの要る空き教室へきたかと思えば、そのつもりでいたのだとやっと分かった。
そして、ローはマイペースな俺様タイプなのだと分析。
引き込む人格者なのかね。
さっきからちらちら観察して脳内メモに書き込む。

「出来た。あとは発動させるだけだ」

「仕事は偵察だけだったんですよね」

「専門家達が右往左往してるから役に立たない上に、時間もかかりそうだったから今回だけ特別だ」

「貴重な特別なのですね。ありがとうございます」

素直にすらりと礼を述べるとローはぽかんとした顔でこちらを見つめる。
まさか、お礼を言えない人間だと思われていたのかな。
めちゃくちゃ失礼だろ、それ。

「……なにか?」

「いや」

いや、じゃないでしょ、はっきり言えよと目を半分にする。
しかし、ローはそろりと目を前にやって答えを濁すように術式を発動させた。

「ターゲットを捕らえる。覚悟しておけ」

あ、言いたくないから先を進めたぞこいつ。


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