香牙 | ナノ
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このままだと異界化するか、彼女が暴走してこの学校は巨大な冷凍庫へとなってしまう。

「かしこみ、かしこみ」

ちりん。

「もうすぐ卒業なのに災難だな」

クラス内はパニックになっていて我先に学校の外へ出ようとしている。
押せ押せな状態で転けて怪我をしたような言葉も聞こえるが、こちらもその空気につられてはいけない。

「私は魔法少女じゃなくてただの学生なのに」

これがアニメならば颯爽と正義の味方が集まって彼女を成敗するのだろう。
鞄を持って正門へ向かう。
勿論、成敗などせん。

「あーあ、学校全体が異界になり始めてる」

学校の周りには分厚そうな氷が繭のように囲っている。

「しょうがないや」

空き教室に適当に入り込み、鞄からマジックペンを取り出す。
地面に油性だけど勢い良く文字とマーク、さまざまな絵を記す。
文献の中にあった保護結界のものだ。
自分なりに改良をしている。

「こうなると思っていたとはいえ、本当に起こるとは」

特殊な捜査が入った時点で、なる可能性を考慮していた。
卒業もすぐだからならないかもなんて期待していたのに。
己だけでも生き延びてやるという気持ちで色々対策グッズを持っていたのが良かった。

「よっせ」

一通り陣を完成させて中に入ると発動。
家でしたことがあるが、実践の中で使われるとは思ってもみなかった。
既に異界化が始まっているのに生徒達が外へ出られないところを目にしたので、リーシャもきっと脱出は不可能。
そうなると、大人しく救援を待つ。
その間はどうしても暇をもて余す。
思考はどうしても事件の好奇心へと移る。
人としてはいささかやることが大きすぎるなと思っていた。
前の狼の男の事件が気になる。
あの狼男は暴走していたのかも。
月の引力は強いが、狼に変身するものが不用意に外へ出歩くとは思えん。
最近急激に増えた異端の存在達。
それらの全てが暴走によって表に出てくるようになったとしたら。
ニュクス、水女の話し。
ニュースで政の関係者が暗躍しているなどという説まで担ぎ出されている。
リーシャからすれば、なんて分かりやすいのだと目を閉じたくなる。
ニュースで取りざたされた際に都合良く袋叩きされるもの達。
タイミングが良すぎて、まるで筋書きのある映画。
そうであれと願い、攻撃対象を示される。
なんと綺麗なシナリオ。
なにか大きな脈動が動きだしているような気がしてならない。
自分には関係ないから謎が解けたとしてもなにもしないけど。
ぽつんと外の騒動に耳を傾けることもなく、鞄に本があったので続きでも読もうとぺらりと開く。
時間が無駄にならなくて良かった良かった。
集中して読んでいたのでガラ、という音に反応してヒョッと体が跳ねる。
驚きすぎて目をぱちぱちさせていると和風でいかにも着物めいた服装のローが仁王立ちしていた。
払い師っぽい。
陰陽師とかが着てそうな装いだ。
逆に動きにくいのではないかと思う。

「結界の波動を辿ってきた。お前だったとはな」

「はあ……良くここに入ってこれましたね」

「出るのは難しく、入るのは簡単な異界らしい」

「受験みたいですね」

「良くそんなのほほんと返せるな」

確かに今は緊急だが、やれることなどない一般人がどんな会話をしたとしても異界にはなにも影響を及ぼさない。
それとも、図太いとでも言いたいのだろうか。

「助けに来てくださったんですか」

「いや、異界化の元凶を見にきた」

助けるのは捜査している公式のやつらの仕事だと放り投げる。


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