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忠告などは受付として義務づけられているが、越権行為甚だしい。

「これを受けると言っている。早くしろ」

ローは受付の願いを言外に弾き、紙を見せる。

「今は緊急なんですよ!?」

「うるせェ。緊急ならそれ相応の対応をしろ。受付が怒鳴っちゃ本末転倒だ」

トラブった。
受付の荒ぶり方に早速辟易。
Sランクの機嫌を悪くしてなにがしたいのかしらと内心笑う。
こうやって自滅していく方が見応えもある。

「ひっ」

どうやらローの眼光をまともに受け止めてしまったみたい。
怒らせるなんて公務員としてどうかと思う。
折角貴重な戦力を。

「進めろ。これ以上言わせるな」

ローが淡々と告げたとき、なにごとだという第三者の声が聞こえ、いかにもギルドマスターみたいな奴が遅いご登場。
肝心な場面に現れないくせに。
蔑み、上から下まで見終わると早々にどうでも良くなった。
この国の人間というだけで見る価値もない。
ギルドマスターと受付の人間が唱えたので確定したわけだが、こちらを見るギルドマスターはローを見てなにがあったんだと再度周りを見る。
今、この国は混乱していて忙しい大人が無駄な時間を過ごしているといつ気付くんだ。
シラッとした気分で眺めているとギルドマスターが受付に軽く事情を聞く。
事情をといってもSランクが小鬼退治に行く、調査をしてくれないと言うのだと報告。
そんな子供な内容にギルドマスターの顔が気色ばむ。

「越権だ。職務をしろ」

「ですが!このままだと!」

「だからといってSランクの者が来なくなったらどう責任を取るつもりだ」

いえ、責任を取るのはギルドマスターも含まれるんで。
一人だけなわけない。

「ギルドマスター!」

「くどい。すみませんでした。直ぐに受理するのでお待ちを」

後半をローに述べて受付をやりはじめる男。
ただでさえ忙しいのにね。
今Sランクに出て行かれたらヤバイ損失。
それくらい受付も分かるはずなのに。

「もう一枚受けられますか?」

「そうだな、このスライム狩りもするか」

コルネリアに聞く。
それをギルドマスターも見ている。
Sランクの傍に居るのだから目立つ。
頷くとローはそれもと注文。
そんなっ、と悲鳴を上げる受付にギルドマスターは仕事をしろと低い声で告げる。
凄い、スライムの仕事なんて子供のお小遣いなのに、今は大人のお小遣いよりも多い。
妖精を回収してよかった。
こんなに価値が違うなんて、出稼ぎも悪くない。
スライムと小鬼なんてあくびで倒せる。
他にも底辺で本来なら遊びか暇人の嗜みレベルのモンスターを選ぶ。
中くらいや高位のモンスターはやらない。
まだ値段がつり上がりそうだから。
待つべし。
そうして受付を終わると颯爽とギルドを去る。
外から遠視をかければ受付の女がギルドマスターから凄く怒られていた。
お前はこの町を滅ぼしたいのか、今はSランクの男を止めるやつなんて誰もいないんだぞと、前の感覚を捨てられていない受付に懇切丁寧に教えていた。
確かに、魔法使いがいないこの町じゃ、Sランクの人間を押さえ込めたりするなんて無理だ。
お疲れ様ねとギルドマスターに聞こえないけれどいっておく。
これからも大変だけど当然の結末だから頑張ってね。
尻拭いは人類同士でするべきだ。
連帯責任は基本である。
そこに平民も貴族も王族も例外はない。

「くく、見たか、あのギルドマスター」

「ロー、わざとですのね」

「わざともなにも、旨味のある以来なんてあれくらいだっただろ?今この国であれ以上の金額をちゃんと用意出来るのか」

「確かに、払えないと言われそう」

高位の魔物の依頼はよかったけれど、しっかり払われるのか疑問だ。

「倒したら王族に呼ばれる展開になりそうで避けておいた」

「楽しそうでなくて?」

「今では貧弱なのを棚に上げて図々しく頼んできそうだろ」

「舞台は派手でないと壊れる時に華々しく散らないかもしれないもの」

うっそり笑ってフォロー。
彼はもっと打ち上げていけばその分見応えも増すぞとアドバイスをしてきた。
なるほどね。

「私も派手なのが良いわ」

依頼してきても断る。
当然だ、滅べば言いと願っているのだから救われるなど、そんな道はない。
あるのなら壊すまで。
壊れるのなら見送るのみ。
そこに救いは必要ない。
なんせ、彼らが自ら起こした結末なのだ。
その尻拭いを今の今までしてきたのだから、十分活躍した。
門を通ってゆっくり歩く。
一日二件も依頼をするのは基本だが、依頼をその日するかどうかは任意だ。
冒険者というのは本来そういう職業だ。
根なし草なもの。
なので、受付がこれをしろと押し付けてくるのがどれ程異様かは理解出来るのでは。
それから半日で小鬼とスライムを討伐し、とろとろしながらランチをし、町をふらついてから夜になって討伐完了の有無を申請しに行く。
夜のギルドではあの受付はいなかった。
トラブルになるので外されたか、たまたまか。
前者が濃厚だ。
しかし、この受け付けもこちらがSランクと知ると無駄な期待を瞳に乗っけて見ている。
そこはローなのでそういう類いの視線は仕方ないのかも。

「行くか」

「宿は取ってるんですの?」

「取ってる。お前は?」

肩慣らしにもならないクエストで疲れてもいない。
読書でもしようと思って、宿は取っていないが向こうの国へ戻ると告げた。

「そうか、おれはこっちを観光していく」

「観光するものなんてなにもないですのに」

「あるだろ?観光。因果応報並みの」

「まぁ、楽しそう」

やっぱり読書はやめて、ローの観光に付き合いたくなってきた。
それを良く察した男が来るか、と誘ってくる。
なんと察しのいいやつだと頬を緩めた。
それでこそ強い猛者だ。
でないと、魔法などという叡知を得ることなど無理だった。

「ありがたいことですわ」

と、慎んでお受けした。


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