逆転劇だろうね。
ハンコックは開花したで済まされないレベルの魔力の増量に絶句。
「魔法使えるようになったのか。スゲー」
ルフィが嬉しそうにする。
この子は前から蔑むこともなく純粋に接してくれたので、とても感謝していた。
「ありがとう。ルフィもクエストでしょう」
ギルドの近くなので受けるのは確実だ。
ルフィはB、ハンコックもSランクで強いパートナー達だ。
二人は特に迷宮と言うダンジョンへ行く。
お宝や冒険が好きなので片寄っている。
「おお。コルネリアも行くか?」
後ろ手前で話を聞いていたハンコックがこちらを見て、拒否しろと目で伝えてくる。
馬に蹴られる謂れはない。
断った。
二人とまた会おうと約束して町を再び散策。
ローは今ごろ汽車の中かな。
コルネリアの育った国はこの国から結構離れているので夜通し乗らなくては国に行けない。
彼をテレポートで連れていくのもやぶさかではないが、道中の民間人達のあわてふためく姿を見る機会を奪うのは忍びない。
くすくすと想像し、人々の苦労が目に浮かぶ。
そうだ、その苦労は己が通ったものだ。
これが演劇なら自分は悪役みたいなポジション。
それくらい、あくだいかんしてる。
でも、そう育てたのは向こう。
次の日、ローが着いたとテレパシーで伝えてきたのでどこに彼が居るか既に得ている状態では隣に来るよう転移を発動。
目を瞬く間に懐かしい光景が広がり、駅の前に立つ。
彼は早いなと驚いた声で伝えてきた。
転移を使えるのを知っているのに驚くなど、この男も人間だったのだなと笑えてきた。
「お昼はお食べになりまして?」
「まだだ」
「では、オススメのお店を紹介します。アナログですけども」
まともに開店出来ない筈だが、なんと自力で開店していた。
そこを昨日知ったので面白そうだと行く。
ローもそれは凄い店だというので、皆信じられないと思う。
銀行も全く起動してないのだ。
「魔力の喪失の原因調査は受けないので?」
「原因なんざ調べてどうなる。戻ってこないだろ」
「断言しますのね」
「ああ。する。お前は許さないって嫌でも分かる。おれなら絶対に許さないしな」
あら、やっぱり喪失の原因を察してるのか。
そして、戻さないと理解していると。
「ローがそう言うのならそうなのね。ふふ。賢いって素敵」
じゃないと、助けろとか戻せとか、ふざけたことを述べるのならやるべきことをしなくてはいけなかった。
記憶を消すのはまず第一。
「そりゃどうも」
彼はく、と笑ってこちらを見ずに町中を観察。
コルネリアは敵の視察は終えているので見なくても良い。
「貴方の為にとても良いところを残しておいたの」
「楽しみだ」
Sランクって皆加虐心持ちなのか。
なら、コルネリアはいつでも合格できるな。
覚醒後は少なくとも被害者意識もぶっ飛んでいったもの。
お昼を食べに店へ向かうと行列が出来ていた。
お昼を過ぎていたので少ない方だ。
しかし、いつもはもっと回転率も早く客を捌けていた。
今は見る影もなく、人は一向に進まない。
「急激に食う気がなくなるな」
ダルさを前に押し出して彼は列を抜けギルドへ向かう。
コルネリアはどちらでも良いや、とローのあとに着いていく。
「ギルドで依頼を受けるぞ」
「掛け持ちになりますわ」
「大したもんでもねェだろ」
言いつつ、扉を開ける。
外からの空気に人はこちらへ目を向け、直ぐに元に戻す。
ローはSランクの方へ行き、掲示板を吟味。
どんな依頼を受けるのかと見ていると一枚を取る。
見せてくるので読み流すと小鬼討伐と書いてある。
小鬼討伐など、本来はDランクの依頼だ。
Sランクの掲示板にあるなど前代未聞ではなかろうか。
「依頼達成の賞金が桁違いだ」
「まぁ……本当に?」
小鬼討伐など1000程なのに、この依頼は一万と書いてある。
本来の十倍だ。
ボロ儲け確実だ。
ローが受け付けに持っていくと彼がSランクと知り、受付は色めく。
「あ、あの、出来れば調査依頼を……!」
いつからSランクに受付が口出し出来るようになったのか。
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