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「聞いたか」

ざわざわ、ざわざわ、と耳に噂話がここぞと流れ込んでくる。
つい聞き耳を立ててしまう。
ダメだと分かっていても耳が勝手に反応してしまうのだ。
それに、自身にも関係してくることだし。
職員達が口々に尾ひれつきの話を流す。
それに興味のないふりをし適当にペンを動かす。
妖精が魔法を生成し、人間に渡すというのは世界的に見て常識の世界。
その世界でコルネリアは兎に角珍しく、悪い意味での有名人だった。
魔法を持つのが普通の魔力がない人、無能。
いろんな意味もあるから無能、上手い言い方だ。
いろんな人間が蔑み、差別し嘲笑う。
魔法が使えないだけで。

「くだらない」

小さく吐き捨てた。
魔法がナケレバなにも出来ない芋虫ども。
魔法が使えないのは理由があると知ったのは一週間前。
平民だった自身は、前世は妖精の総括だった。
所謂妖精姫、妖精王。
いろんな呼び名はあるが、魔法の源というのが特に分かりやすい。
妖精を派遣し回収すると共に我が魔力が戻り、更に増える。
魔力がないから魔力を求めた愚か者達。
元は全員魔力を持たなかった癖に、いつの間にか棚に上げ魔力が無い者を差別するようになった。
渡されたものを甘受し、初心を忘れたのならもう魔力は必要ないな。
そうと決まれば妖精に呼び掛けて全ての魔力を体に戻した。
元からなかったものだ、なくなっても良いだろう。
与えるには信用などきれいさっぱりなくなっている。
昔のように純粋な者は、実力で魔力を身に付けた唯一の国だけ。

「クエストはいけるか」

お茶を飲む間、真正面に座るのは前々から知り合いだった男だ。
魔力なしの自分に興味を持って、医者として診にきたやつ。

「ええ、大丈夫でしてよ」

朗らかに微笑む。

「それにしても、この国以外から魔力が消え去るなんてどうなってんだ?やっぱりお前なのか」

「さぁ」

彼はトラファルガー・ロー。
ギルドランクはS。
己はまだ加入したばかりなのでFだ。

「でも少し待って下さいな。私の脳内お花畑家族の喜劇をまだ干渉したいの」

「それは楽しみだな」

ふんわりと、華やかに笑う。

「ええ。とっっても、最高なの」

今だ混乱の中にある元故郷。

『無能、なんで貴方は死なないの?』

今は国籍を移しているのであそこの国民でないけれど、あたふたして泣き叫ぶ姿を見届けたい。

『役立たず!早くしなさい!』

これが娘に言うことかと今でも思うけれど、理性の無い獣だから叡知を期待するだけこちらが損をする。

『お前は魔法も使えないんだから母さんの為に働きに行け』

無能と蔑み、扱われる仕事に行けと言う。
ああ、自分の浅はかな行動で首を絞めてしまったなんて情けない。

「おれも明日その国に行く。あちこちお祭りだろうな」

「ええ、とても賑やかよ。それと」

ローが首をかしげるのを見て笑みを浮かべた。

「頬に食べ物の残りが付いてます」

彼はそれを聞いてグイっと口許を乱暴に拭う。
少し照れているのだろうか、眉間が寄り表情が険しくなる。
可愛らしいと思うのだか、男は言われたくないかそんなこと。
睨まれてもいるのでにこりと笑っておく。
人を研究の対象にした軽い仕返し。
まだその分の理不尽さを覚えた報復は終わってないぞ。
差別はしなくとも、寄りどころのない女に向けるものではないことを今だ男は良く分かっていないのだ。
誰かの感情なんて不要とばかりに唯我独尊を突っ走る。
この男に限ったことではなけど。
椅子から女が魔法で聞こえるのを見て、ローは相変わらず凄いなと吐いた。
一週間前までは魔力なしと認識されていたのに一気に魔力を帯びたのは反動だろうかと考察を止められそうにない。


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