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ちゃんとギルドにも話を通していて、観光客が来るかもしれないので気をつけて欲しいと言われた。
ドラゴンの運動会など珍しいのだ。
自分も聞いた事がない。

「よし、ではせんしゅせんせーをします」

真面目なドラゴンが先導が楽しそうに述べて周りも盛り上がる。
当日になるまでも気迫があり、それが消えること無く過ぎた。

「楽しんでください」

言い方が乱暴ではないドラゴンは普通にいたので探せば様々な竜が居る。

「うおおお!やるぞ!おれはっ!」

「まけね!!」

もわもわと熱気が伝わってくる。
ローもとなりに居る。
プログラムが組まれているのでつつがなく行われていき、チームで競う。
チームなので族長だけの野蛮な方法にはならない。
ドラゴン達が整列している姿も初めて見るものも多い。
かくいう己も教えるまで知らなかったしやるとは思わなかった。

はぁ、と疲れるため息を吐くのはローだ。
彼も日夜色々してくれて、男の気持ちが分かる指導者は居て良かったと思える。

「がんばれえ」

「いけー!」

種目のレースが始まった。
細かく力を出していけば候補達もいちいち血をあげくても良いのではと思っていたので、その計画が上手くいった。
ちょっとずつ全力を出させていれば何かを破壊する行為をしなかったのだ。
小出しにしていけば良いのだと知れたのでこれでもかと疲れさせていったら、目論み通り眠りが深くなった。

「はぁはぁ!」

「うっ」

「く、くそぉ」

最終種目は3人の族長候補達だ。
既に様々な競技を経て体力は殆ど残っていない。
観光客も乱暴なものでもなく暴れないドラゴンだと分かったので客達も盛り上がり楽しそうにしている。
客が来ると分かっていたので手の空いていたギルドの人間に屋台をやらせて売り上げは中々だった。

「いらっしゃいませー」

「ください!2つ」

がやがやと老若男女、ではなくここは遠いので若い人達しかこれない。
食べ物も飛ぶように売れて忙しくしていたが運動会も終わり族長は無事終わった。
血なまぐさくない争いは初めてだったらしく周りはとても嬉しそうだった。
なんだ、周りも族長の争いにうんざりしてたらしい。

「うう」

3人とも気まずくて下を向いている。
3人だけ盛り上がって白い目に誰も気づかなかったのは痛く、気付いたのは奇跡だ。
今まで候補達は誰も気づかなかったのかなとは疑問だが。
でも、気付いたのなら今後の族長への争いになにか変化はあると思えた。
周りも流石になにか言えば解決するのだが。

「ありがとうございました」

族長候補の肉親が頭を下げてお礼をする。
依頼だからと首を振る。
大事にはなったが誰も大怪我をしなかったので上場だ。
ギルドでもかなり評価を得ていて、運動会という行事に興味を示している。
色々聞かれるのも面倒なのでマニュアルを作っていくとそれも喜ばれた。
しかし、ドラゴン達の運動会は初めてのことなので発祥地として認める事が条件だ。

そうでないと同じものがいくつもあるなど楽しくないではないかと想い至る。
けして同情や配慮の結果でないのが精霊王たる女の総意だ。
差別化したらさぞや楽しい見せ物が出来上がるに違いないとわくわくした。
誰からも理解できないような真面目くさった顔で。
ローもいくら好きな女であっても心の内は読めぬので何を考えているのか筒抜けず、暇そうにしているなとしか想像出来なかった。


運動会の事件から数日後、元家族の件は終わりを迎えたと思い込んでいた己をぶん殴りたくなった。
そうだ、死んでないのだから目には入るだろう。
街道で中に入れない者達が通う者達にお金やらを頼んでいる場面に出くわす。
国がなくなって民草が放出するのは自然な成り行きなのだった。
数メートル先に見えるのはボロの服にベタベタな体をしている3人。
あの国から良く逃げ出せたものだ。
病院で痛め付けたのに気力を持てたのが凄い。
丁度良いのではないかとほくそ笑み、どう料理してやろうかと考える。

「直接手を下すのも猛者の権利」

彼らが自ら見本となって私に教えてくれた。

「力で奪っても構わないと……ねぇ?」

ローも居ないし暴れるのも一興か。
なに食わぬ顔ですたすたと横を通る。

「食べ物をくだ……ん?」

「どうした……え?」

最初に気付いたのは姉妹だった。
見覚えがあるのに凛として艶やかで同一の女となかなか認知出来ずに苦労したよう。

「あ……!あ、あんたっ」

知ったときにはろくに水の飲めてない喉で叫ぶ。

「なんで!あんたが!」

「お、おまえ!?」

3人とも気付いたらしく煩くてたまらないが、しかし優越に滲むその光景は記念の一枚になる。

「一体どこに居たのっ」

飛びかかってきた元母親。
きっと尋問の為に肩に手をかけようとしたが、届くことはない。

「っく、きゃああ!」

汚いので魔力で振り払うと腕をおってしまったらしい。

「おま、母親になんてこ」

「どなたかと勘違いしてますね」

どの目線だと言える台詞を吐き終える前に黙らせる。
黙らせる為に風圧で固めたものを顔にぶつけた。
ふぎゃ、という声に爆発させて風で3人は吹き飛んでいった。
警備が着く頃にはとっくに居なくなっていたコルネリアは目を通してどうなったか確認。
娘に攻撃されたと妄言を繰り返す大人どもは警備に追いたてられて国にも町にも入る事は許されず、そのうち人拐いにさらわれた。
幸運にも人さらいも襲撃され、今度は盗賊に捕まり永遠に奴隷として生きる事となった。
結局全て間接的に解決出来てしまったことが残念だ。

今後の予定が空白になり暇をもて余していた。

「暇ね……人類には一度滅んでもらおうかしら」

愚かで自分が一番と思い込んでる者が多い。
リセットさせてやれば綺麗になるのではあるまいか。
ふとそう思わせた。
そもそも魔法は妖精の持つもの。
人類には貸しているだけなので使わせる必要はない。

「なにか面白いことはないのかな」

ふっつりと目を閉じ、思案。
かたり、と立ち上がる。

「そうだわ!」

面白事を思い付いたのか子供のように外へ飛び出した。
解き放たれた鳥のように、邪魔なものはもうないのだ。


11(完)