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ローに下がっているように良い、一人がこちらへ殴りかかってくる。
筋肉らしくストレートだ。
素早く避けて右フックをかけ、足をすらりと上げると相手の腹に決める。

――ドスッ

「!?――ぐぅ!?」

人間にしては重い一撃に防御すらしなかった体躯がくの時に曲がる。
あばらの一つや二つ折れても構わないかと判断。
最後に背中へ二度打撃を加えて伏したカラダへ足を乗せた。
僅かな時間で行われた行為に残りの二人と門番が唖然としている。

「な、なにが」

「ありえねェよ」

「ほら、次の人来て」

後がつっかえるのも面倒なのでさっさと終わらせてしまおうと声をかける。

「っ……なにかのいかさまに決まってる!」

叫ぶように文句を言う男。
竜化して襲ってくるので詠唱した。

「風よ、降らせ」

――ヒュウ

――ズバッ

背中にばっさり刃を落とし、相手は痛みと衝撃的に崩れ落ちる。

「名前を名乗ることも忘れるなんて頭は大丈夫なの?」

一応戦士という情報はあったが、ただの暴漢に朽ち果てていたとは思わなかった。

「おとーちゃん」

女の子の竜族が駆け寄ってくるが近寄らせないように門番へ伝える。
門番は呆気なくやられる同胞を見送るだけなのだから、子供くらい面倒を見てくれ。

「く、くるな」

父親らしき男が痛みに呻いて止める。
魔法で切った男だった。
あんなに激昂するのに子持ちとは。
子供が居るのに無謀に挑んできたのは考え無しとしか言えん。
もしなにかあったら男が先にやってきたことを無視して私は子供に恨まれていたかもしれない。
ハイリスクかつ割りに合わない。

(とは言っても恨まれてどうこうされる未来はないのだけど)

子供が例え強くなって敵討ちしてきても負けるビジョンすら見えない。
問題なかった。

「おとーちゃんに手を出さないで」

くるなと言われたのに目の前に飛び出してきた子供を睨み付けた。

「これは戦いとカウントするべき?」

門番へとう。

「違うっ」

父親が反論するが、竜族には古い面倒なルールやらがあった。
戦いを挑んだら降りることは出来ない。

「貴方、私と戦うの」

「やめろっ、違う」

「た、戦う!」

父親の阻止は無駄に終わり、父親はがくりと項垂れる。
今度は父親に目の敵にされるリスクが浮上するのでうんざりだ。

「命は取らないけど、負けたら賠償よ」

トカゲちゃん、と煽れば簡単に怒ってこちらへ単純な思考を向けてくる。
手を振り上げられたのでスリープと唱えて女の子を強制睡眠にした。
呆気なく終わる戦いに父親へ顔を向ける。

「ΧΧΧΧ!」

名を叫び女の子を抱き締めている男に眠っているだけだと伝えて、賠償のことについて置く。

「100万よ」

「っ!すまない!申し訳ないと」

「謝罪なんてなんの役にもたたない上にどうでもいいわ。言っておくけど払うのはその子よ?親が払うのは禁止」

おやつもなにもかも買えなくなるけど、命があるだけ優しさを思い出して欲しい。
子供が100万払い終えるには頑張っても2年くらいはかかる。
その間、この子は耐えられるのか。
そんなのは気にならないが結末だけは見てみたくはある。

「子供に借金は!」

「余所者に殴りかかるのは酷くないと?」

こちらが実力がなければ命が危ぶまれる。
一般の人間が竜族の攻撃を受ければもっと大怪我してしまうし、命を落としていたかもしれない。
そんなあやふやな理由で許される時間は終わっていた。

「払わなくてもいいけど、人間に負けた上に借金も払わないなんて同胞からなんて思われるのかしら」

実力主義な竜は義理を通さないと冷たい扱いが待つ。
それを思い出したのか父親の方が青くなる。
これもそれも後先考えず人を襲った獣思考を恨むがいい。
冷えた声に慈悲はないと感じた男が子供を見てがくりと膝をつく。
後々この竜族の子供をしたっぱのぱしりにするのもありかもしれない。
コルネリアよりも弱いが世間からすると竜族は強いので旅やらにはついてこれるので荷物持ちくらいにはできるだろう。
打算が弾きだされてにこやかになる。
将来が楽しみだな。

呆然としている親子に構うと時間がなくなるので引き続きの案内を指すと門番は怖々と歩きだして、先程の戦いを見ていた竜達は引っ込んでしまう。
面倒なので代表を争っているやつらだけを呼んでもらおうか。
こそこそやっても無駄になるかもしれないのは腹立ちもの。

「取り合えずお説教」

「ああ、というか出来るのか」

「ええ。簡単」

門番は無理矢理三匹の竜達を連れてきたのか息が荒い。

「つ、連れてきたぞ」

この門番は結構常識持ちなのかもしれない。
大変苦労をしたように見える。

「お疲れ様。では、事情を聞きましょう」

「なんなんだてめー!」

「そうだそうだっ」

むかつくし生意気なので威圧感を与え、次に風魔法で上空へ飛ばす。
3人共々ね。
ぐるぐる回しひも無しバンジー開催。

「「うぎゃああああ」」

情けない悲鳴が空に飛ぶ。
勢いは良いくせに結局突発的な事に対応出来ないわけだ。
悪いこなので仕置きされているだけ。

――ビゥオオオオ

風が強く吹くので集落が揺れる。
家の中から声も聞こえるが止めなかった方も同罪。

「ふん」

風を止めて落下してくる。
竜なので丈夫なので怪我はしてない。
何故、なにもしてないのにと族長候補らが言うが、ギルドに依頼されている時点で認識され、解決してほしいと望まれている。
迷惑がかかっているわけで、そのことを彼らは自分達でやると宣った。
そんなの無理だから目されている。

「やっぱり魔力が桁違いになってやがる」

「ふふ、そう?」

ローは比較するようにじっくりと魔法を見終わり呟く。
確かに竜族を簡単に飛ばしてしまうものだから驚くのも仕方ない。
コルネリアは落ちた男達を一瞥する。

「これからは迷惑にならない方法でしなさい」

「どうやってだよ」

ふて腐れた男達がきいてくる。

「運動会なんてやり方も良いわね」

「「「運動会?」」」

聞きなれない子らは聞き返してくるので笑みを浮かべていく。

「例えば第三者をたてて戦うのを前提にすれば公平にすれば良いわ」

不正に関してはその時にすればいい。
そんな知能があるのなら族長に向いている。
逆にやってほしくもあるな。
絵を書いたりして説明すると面白いと盛り上がる面々。
さっきまで殺気ありきだったので調子の良い奴等だこと。
ため息を吐いて喜ぶ男達を見ずにジュースを飲む。
ローは全く違う空気にしたコルネリアに話しかけてくる。

「今日は随分サービスが良いな」

「知ってる?怒り続けるのもしんどいの」

「フフ。ああ、分かる」

彼はニヤニヤと下衆じみた顔を向ける。
怒りをぶつけおわってしまったことも関係しているので、国が崩壊した時点でもう復讐心はなくなりつつあるわけだ。
そんな理由を分かっているぞと目だけで理解を示された。
しかし、ローには妖精王なことを言うつもりもないのでこちらも何も言わない。
竜族達は襲われたことを忘れたように運動会について議論して夢中になる。

争い事でなくて競うのが好きなのだろう。
仕方ないなと提案とルールを教えた。
それに食い入る態度で目を輝かせてメモを取る。
特に綱引きという種目に食い付きが凄い。
紐を引っ張るだけなのではと困惑していたが駆け引きが重要なのだと言えばほぉ、と感嘆される。

「貴方たちだけじゃあれだから全員参加」

「これは長を決める大会なのだぞ」

「毎回長候補が暴れて近隣まで迷惑をかけているのに近場の人達がどう思っているのかも分かるわね」

固い頭を持つ男達の意見などはなから通ることなく、捨て置く。
どうでもいいことに耳を使うなんて勿体ない。
そうと決まれば一度ギルドに戻る。
ローは面白そうなので見守ることにしたらしい。
ギルドに報告すると別の方法を取らせてみると言っておいた。
ギルドとしても竜族との関係悪化は望むものではない筈。

村に戻ってくると早速準備が行われていた。
楽しいことが好きなのは全員のようだ。
子供も共に準備をしていてざわざわと賑やか。
綱引きの他にボール投げなど平和な方向に持っていくつもり。
そうでもしないと竜族達はまた近隣に迷惑がかかるような戦いをするだろう。

「うおおお!楽しそうだ!」

竜族達の盛り上がりは強く今すぐにでも飛び立ってしまいそう。

「運動会は先ず飾りつけよ」

「飾り……つけ」

まだ出来ないのかという空気にぎろりと睨む。
短期なやつらめ。
ローは観察するように静かに壁へ背を預けている。
傍観に回る男へそうはいかないと声をかける。

「ロー、貴方も考えて」

「おれも……か……?」

困惑に瞳を濡らす。
駆り出されるなど夢にも思わなかったに違いない。
ノーと言える立場であるが、コルネリアが問題解決が出来るのにと指を頬に添える。
添えられた指先から目へ行くと彼を流し見た。

「っ……やらないでもねェ」

「ありがとう」

「だが、対価は貰うぞ」

仕返しとばかりに言い返す男。
なんとなく言われるかもなと思っていたのでにこりと返す。

「私に出来る範囲なら良いわ」

軽やかに返せばローはOKを貰えるとは思っていなかったのか瞠目。
それから竜族達で飾り付けと種目決めと練習をした。
練習なんて必要ないなんて言う傲慢ドラゴンが居たが拳で黙殺させる。
皆が出来ると思い込んでは立派な主導者にはなれん。


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