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- ナノ -
04
どういうことだと客一同、混乱する。
辛うじて線路だけは残っていた。

「どうなって……」

窓から顔を覗かせて必死に今の状況を受け入れようとする。

――バサッ

タオルが落ちた音ではない。
もっと重量のある、屋根が飛んだような音。
なんだろうかと耳を澄ませていると急に視界が暗くなり。

「モンスターだァー!」

悲鳴が脳裏を突き抜けた。
視界が暗くなったのは汽車の上にモンスターが通過したからだ。
ビュオオ、と風を切る音と何かが着地する地響きが耳に重くのし掛かる。
なぜ今なのか。
一時間後でも良かった筈の不運に頭が痛くなる。
間が悪いというべきか、運が悪いというべきか。
もはやどちらでも大差ない。
なぜならことは既に引きおこされているからだ。

「きゃああああ!」

「うあ!?」

またモンスターの姿が視界を掠める。
流石にあんなのを止められる力はない。
付近にくればますますそれを強く感じた。
どう足掻いても食われるだけだ。
羽を持つ化け物がその手を振り上げた。
もしこれがあたればこの鉄はひとたまりもない。

――ザグン!

切り裂かれた音で死ぬのだなと悟る。

「……い、痛くな、い?」

いつまで待っても襲撃はなく大きな破壊の音もせず。
ゆるりと目を開けると怪物が腕を振り上げた体勢で停止していた。

――ズリュ

少しブレた。
と、その時怪物の体躯が真っ二つに別れていく。

「ひっ」

己のものか他の客のものか分からない程の恐怖が社内には溢れていた。
真っ二つに割れた肉の固まりはそれぞれ端に落ち、鈍い音を立てて地面と衝突する。
がらがらと砂を巻き上げる光景。

「た、助かった?」

その人がそう言ったことを皮切りに人々の喜びが喝采となって社内を埋め尽くす。
それと同時にこの現象を起こした人をこっそり探した。
モンスターが自らを真っ二つに裂くわけがない。
駅が崩壊していたのはモンスターのせい。
それは分かった。

――ジャリ

砂を踏む影が見えた。
背中に大きな大剣を携えている。
シルエットは結構身長高めだ。
モンスターをやっつけるのだから相当な実力者だろう。

「あ」

どんどん近寄るその男に客達も気付き礼を述べるがその人物は全く眼中にしておらず、目を皿のようにぎろりぎろりと動かしていた。
そのただならぬ気配に客も礼を言う場合ではないと口をつぐむ。

「どこだ」

男は地に底を這う声を出す。

「出てこい」

幽霊の怨霊みたいな怖さだ。
出ていくものか!
そうだよ!夫でした!
でも元が付くのだよこれが。
現実見ろよな。
というか、良く先回り出来たなと驚ける。
そう簡単に出るわけがないだろうと笑ってやる。
そして、絶対に元の形には戻れないことも付け加えてやろう。

「居たか」

見ていると視線が合うので合わないようにしていた。
しかし、どうやら見つかった。
が、違う方向へ行ったので今のうちにそそくさと列車の備え付けトイレへ籠った。
電車から降りてくださいと声をかけるのが聞こえたのでなに食わぬ顔で列に加わる。
これで無事に温泉地へたどり着けるわけだ。
が、あちこちで冒険者らしき男達が居て、捜索されているのでは?とぴんときた。
ここまでする普通?
呆れ果てて涙も出ない。
そんなに探したいのなら一生やってろって感じだ。
どうでもいいことは放置に限る。