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- ナノ -
01
出会いはなんてことはない、バイトの最中に出会った。
花屋でバイトをしていて彼に水をかけてしまった。
最初は睨まれたが慌てて拭いて謝って、としているといつの間にか睨まれなくなっていて安堵。
ちょっとずつ、それから話すようになった。
彼は冒険者という職業で、この世界で一番選ばれている仕事。
それでも、彼自身の人の良さは変わらなかった。
彼はにこりとはしないものの、言葉の端からは優しい言葉が聞こえている。
それだけで、夢中になった。
それからまたデートに誘われて、それを重ねていくうちに結婚してくれと言われ、勿論と言う。
今にして思えば電撃結婚だ。
結婚してからは甘い日を過ごすのだろうと思っていたのに、彼は、ローは帰ってくるのが少なくなった。
結婚し所帯を持ったことで指名依頼が来る事が多くなったのだと。
なんだか、本末転倒だ。
彼がなかなか帰って来ないのである日、迎えに行こうと思い立ちギルドの建物へ来た時。
中へ入りかけた耳に会話が聞こえてきた。

「リーダー。奥さんとこ帰らないんですか?」

彼はローの仲間の一人だ。
ちらりと見えて誰か分かった。
リーダーとはローの仲間内での呼び方。

「何故そんなことを聞く」

このとき、聞かねば良かった。
だが、聞いたからこそ。

「だって、奥さん一人ですよ?」

「夫婦がずっと一緒なんてあるか」

「えー?」

声をかけられなかったのは仲間うちで話しているのを邪魔出来なかったから。

「第一、あいつはただの女避け」

一度目にきしんだ瞬間。

「酷いぞリーダー」

「どこがだ。結婚することに同意した」

相手の思惑なんて知らない。
知りたくもない。
それ以上、聞きたくなくてゆっくりと踵を返した。

「つか、今さらリーダーの建前と本音を真剣に取るおれらじゃないっすよ」

「全くだ」

「うるせェ」

ローは嘘つきめと仲間達に言われるのを振り払う。

「リーダー。本当は好きなんでしょうに」

「やっぱ家に帰れよ」

仲間の一人が言い据える。

「帰らないとどんどん帰りづらくなるぞ」

もう手遅れだった。
男同士の特殊な会話など知るよしもない。





いつの間にか家に帰っていて、気付けばポタリポタリと泣いていた。
理不尽さに泣いた。
軋んだ心は塞がらなく、寧ろ更に傷となって血を流す。
全ての血が出ようしている最中、ふと窓が目に入った。
ふらふらと窓に近寄り、窓の外に身を乗り出す。

「ふふふ、私って間抜けさん」

虚ろな目をしてふらりと体から力が抜けた。
そのまま外へ体が投げ出され。

――ガッ

誰かに助けられた音じゃない。
"私"が窓枠の縁を掴んだ音と、激しく顎を打った打音。






(なんなのおおお!?誰か説明してえええ!?)

私、爆誕。
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