04
ほら、食え、と施す。
「でも」
「貴方達が食べないと父さん泣くわ」
「え、泣かないけど悲しいかな」
それ逆に罪悪感が湧く言い方だよ。
相手も思ったのか恐る恐る手で摘まんでいく。
あー、食べたな、食べちゃったな。
「貴方達中学生なんだよね?歳幾つ?」
「なんなんだよさっきから」
「煩いっていったよな?」
は、言ってな、と思ったがブルッと体が震える。
「いくつかって聞いたら即答えろよな?」
無の声音で聞かれペンギンとシャチは恐怖する。
「ち、16」
「15」
「今舌打ちしたの?私に?」
にっこりと笑うとシャチがギョッとなる。
不良だかなんだか知らんが、獲物は獲物らしく解体されておくことだ。
「ねぇ、私貴方達に提案があるの」
「え、な、なんだよ」
「うちで働かない?」
その瞬間、二人の呼吸がキュ、となる。
心臓が聞こえそうなくらい静寂。
「はい、契約書。父さん」
合図で契約書を前へ置く。
「な、やるわけねーだろ!」
いち早く復活して言うことがそれか。
全く期待を裏切らない者達だ。
「そのお菓子、食べたな」
「え、食ったけど」
「!、え、嘘だろ!」
ペンギンと名乗った方は即座に察知したようだ。
だが、遅い。
「はい、領収書」
二人に手製の領収書を渡す。
お菓子ちょっととお茶を一杯、ついでにシャワーをつけて中学生では払えないギリギリちょい上の値段。
「たかっ。いやあり得ねェ」
「こんなの詐欺」
冷や汗をかく二人ににっこにこの笑顔。
スマイルは世界を救う。
「事務所のタレントになってくれたら免除してあげる」
新手のぼったくりを受けた二人はガタガタと震えて契約書にサインした。
父親のちゃんと法的な範囲だからと言ったのも後押し出来た。
よし、と二枚分を手に二人をスタジオへ案内する。
写真を撮る為だ。
「なんでこんなとこ」
「もうちょとのしん」
案内してる間に二人がぶつくさなんか言う。
立ち止まると面白いように二人もぴたんと止まる。
「あのさ」
「っ、なん、だ」
構えている。
また何か言われるとでも思い込んでいるのだろう。
「今、貴方達はどう生きたいか考えたことある?」
「は、」
「どうなの?」
「ねーけど」
不満そうに言う。
「当たり前だよ。だってまだ中学生だもんね。でも、今までのこと振り返ってさ、思ったことない?ここから抜け出したい。変わりたいって」
ごくん、と飲み込む音。
中学生だから感受性豊か。
大人じゃこうも言葉を受け取らないだろう。
人格が出来上がってるし。
「今がその時じゃない?私貴方達の事結構光るもの感じてる」
――ギュっ
「私は貴方達の事認めてる。きっと出来るって。血を吐いても頑張れるって。やれるよ」
誰も何も言わない。
「父も貴方達も同じで素人同然なの。貴方達しか頼れない。ねぇ、私たちのこと助けて」
苦しそうな、どこか迷う素振りのある二人をまた案内する。
「明日も来てね。でないと頭皮から髪の毛毟る」
「ひい」
「おーい、用意出来たぞー」
スタジオへ着くとカメラをセッティングした父が居た。
天の助けとばかりに顔を緩ませる男達。