03
父親が是非使ってくれと終始穏やかに言うのでしまりが悪くなった二人組はいそいそとシャワーを使う。
寮になっている事務所は多人数用に風呂が大きめだ。
二人が風呂に入っている間に生徒手帳、はなかったので学ランの上を盗っておいた。
逃げられたら困る。
父親には契約書とボールペンを用意しておくように言う。
そして、ホカホカのお茶。
あまーいお菓子。
風呂から上がった二人は学ランの行方を聞く。
「洗濯に出した。濡れてるんだから当然よ」
二人には予備の服を出しておいたので。
まぁ着ていてたのでよしとする。
二人は怖々としながらも居間へ。
そこでは温かいお茶を入れる父。
「そこに座りなさい」
穏やかにまた言われて二人は躊躇する。
「生意気なことしか出来ない人達には座ることすら出来ないのね」
「っ」
「く、う」
悔しげに言う二人。
「ふん。とっとと座りなさいよ。私の父が折角用意したのに」
そこまで言うと二人はぼそぼそと口ずさみながら座る。
知ってるよその顔、屈辱な。
「うちの娘がすまないね。制服までびしょ濡れになって」
父が唐突に謝るのでばつが悪そうに言葉を詰まらせる二人。
なるほど、アメとムチ、上手く働いてる。
「貴方達名前は?」
「お、お前こそ先に名乗れよ」
「あんたバカ?小学生に何張り合ってんの?」
「ぐ、ぬ」
「お、落ち着け、小学生だぞ」
片方は慰めながらも苦々しい様子だ。
「リーシャ、はい名乗った。で?」
あっさり言うとギリッと歯ぎしりする二人。
「こら、リーシャ。あまり言うんでないよ。私は――です。よろしくね。君達はなんて言うんだい?」
ナイスだ。
父のタイミングばっちりな柔らかさで男達の口が軽くなる。
「ペンギン」
「シャチ……だ」
「ほら、お茶飲みなさいよ。父さん、お菓子」
はいはい、と二人に向けてお菓子をどっさり目前に置く。