×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

そのお使いクエストを受けることにした。
一番はじめなので食わず嫌いするのもどうかと思った末。
先ずはパン屋に向かうと大人数の美女で周りの客らとパン屋の周りを歩いていた客が一目見ようと窓から覗く。
それを牽制して中で用件を話せばパン屋は是非うちのパンを食べてくれと押し付けてきた。
美少女達を宣伝に使おうという魂胆が見えた。
キリがないので食べることはせずにそのまままっすぐ寄り道もせずにパンを駐屯所の施設へ届けた。
持つのは己の筈なのだが誰も持たせてくれない。
過保護きたきた。
全く触らせてくれないので諦めて進む。
駐屯所に着くと何事かと兵士達が寄ってくる。
パンを届けに来たと依頼書を見せるとすんなり受け取られて美女をガン見する男にサインを催促して終えた。
帰ろうとすると引き留められるが用事があるのだと払い退けた。
偉いやつが呼んでいるとか言っているがパンを届けたくらいで呼ばれるなんてありえん。
直ぐに美女達を囲いこみたい思惑を感じ取って無視した。

だってなにもしてないし。
拘束する権利もないだろうと他の女がすげなく言う。
全員で駐屯所から出る。
ギルドに向かうと完了したことを伝えて変に絡まれたことも伝えた。
すみませんと謝られたが意味のないことだと鼻で飛ばす。
女達はギルドに慣れているみたいでさくさく済ませて外へ。
目的のお使いクエストを終わらせたので全員船へ戻る。
居残り組が出てきて包容する。
ネネカだけに。
謎過ぎてはてなマークが頭上に並んだのは言うまでもなし。

船で過ごし始めて少しだけ小慣れてきた頃。
それは突然の電撃イベントだ。
唐突に海賊船が襲ってきた。
この世界って海賊居るんだ、へー。
その感想は現実逃避。
ここで死ぬのかなと儚い気持ちになりつつあり、女達は眼を鋭くさせて敵対者を迎え撃つ。

「船長。我らの勇姿を見ていてください」

「そんなっ。無茶ですよ!みんなで生き延びましょう!」

逃げようという意味で言ったのに何故か潤んだ瞳で泣く乙女達。
そして、何故か士気が上がる。
熱気に包まれたまま進行していく面々。
止めることも出来ないまま見送る。
傍には美女医師とか勇ましい女性とかが護衛として居残る。
特等席で見られますかと聞かれて戦場に赴くなんてとんでもないと首を振る。

「み、皆さんを信じてここで待ちますう」

震える声。
だが、感激する女達。
激励をしたと思われたみたい。
とんだ勘違いだ。
偵察の人が帰ってきた。
海賊はあのハートの海賊団だとか言ってる。
いやー、どの?
生憎海賊に縁がなくて周囲の驚きについていけない。
いやいや、だからわからないや。
残忍なとか、最近新聞を賑わせる極悪なやつとか聞こえて、敗北したあとの嫌な予感が過ぎる。
そんな一人の小物な女の心境を置いて、外では攻防戦が行われていた。

「おいおい、いつからこの船はこんなにヤバい奴等の巣窟になってたんだ!」

「知るかよ!く!?」

攻防戦は美女達の方が買っていた。
人数は女の方が多く、連携も上。
少し前まで傲慢な主が大量に奴隷を伴い、どれも生気のない眼をしていたことを覚えていた。
今は恐ろしく強く、歯が立たない。
どんどん劣性になる中、異変を感じたハートの長が出てくる。

「どうした」

「船長!」

団員達が一時撤退して長のローに報告する。
不利を感じ取ったローは相手に交渉してくると立ち上がる。
こちらから戦いを挑んだので受け入れられない可能性もあった。
その時はローが一掃する。
と、思っていたが近寄れば女達の異常な実力に冷や汗が流れ落ちた。

「どうなってる」

前はこんなに驚異と思えなかったのに。
ローは己の判断を間違えぬように頭を回転させた。
男が出ると向こうの女が一人出てきて睨み付けてくる。

「そちらが先に手を出してきた。それに関してどうする」

「こちらの早とちりですまねェことをした。そっちの要求を飲む」

穏便に済ませてしまおうという気持ちでローは承諾。
快諾した女は直ぐ様その内容を発した。

「私たちの船の傘下になりなさい」

男はやはりそうきたかと内心舌打ちした。
しかし、ここで勝てるかも難しく、今は頷く選択肢をとる以外ない。

「わかった」

「裏切ればハートの海賊団は殲滅する。ゆめゆめ忘れるな」

帽子を深く被りローは船へ戻る。
傘下になることをハートの男達は悔しそうに見ているしかない。
今回襲撃したのはあくまで少しからかう程度だった。
傲慢な女を筆頭とした船は有名で、悔しがる女を見るために仕組んだいたずらだったのだ。
それが傲慢ちきな女のしたにつくことになるとは。
ローに集まる船員達はみな悔しげに船長へと話しかける。

「様子が可笑しい。あいつらの主人なら姿を表しす筈。全く出てこなかった」

しかし、船員達はローの懸念は全く聞こえておらず最悪と呼ばれてネタにしていた奴隷達の女について頭がいっぱいだ。
既にそんな女は居なくなっているという事実を知らない船員達は嘆き始める。

戦闘が終わりネネカも美女達に良かった良かったと声をかけていた。
そのなかで海賊を傘下に入れたと聞いてどきりとした。
わざわざ腹にいれる必要なんてない。
危機として怯え、そんなのいらないのではと意見する。
新入りなのでおそれ多いけども、海賊を知らないのではないかと疑問になった。
彼女達はぷるぷると震える女を見てアイドルのファンみたいにきゃあきゃあと叫んだ。

「みて、あのお姿!震えてまるでこりすのようよ。ああ!抱き締めてさしあげたい」

「わかるわ」

女が同意。
説明を受けているネネカはというと、聞きおえたって対して気持ちに変化などあるわけもなく、かかわり合いたくないと震えた。

ローはかなり昔に傍若無人な女の長に言い寄られたことがあり、船もその時横につかれたのだが、雰囲気をよく覚えている。
不快であまり見ていなかったが、活気もなく、今のように女達がお喋りに興じているなどなかった。
ここは既に敵船、傘下になった船の中。
改めて契約を結ばせよう呼ばれた。
契約はするつもりもない。

「さ、船長、この男が海賊のトップです」

恭しくかしずき出す女達に恐れおののく女が一匹。
まるで生け贄にされかけている羊のようにぷるぷるとしている。
ローはなんの冗談だと現実を疑う。
これはあの高飛車女の仕組んだ茶番だろうか。

「私、は」

立ち上がったり座ったりと忙しいおんなにローはびっくりしてなにも言えずに見ているしかない。
突然船の代表と話せと言われて座らされた女は無理矢理立てられた代役にしか見えない。
現にそうなのだろう。
ぶるる、と震えてかしずく女達を不安げにみてこちらには目も合わせない。

「ヒッ」

目が合うと悲鳴を短くあげて俯く。
聞いてないよと聞こえた。
どうみても生け贄だ。
高飛車にぱしられているのだろう。
だから奴隷の女達の視線が愛くるしいものを見る目なのだ。
でなければ、憎々しげに見られる。
女はちらちらと見ようとして目が合わないし、話が進まない。

「契約とやらを結びたい」

らちが空かないので仕方なく進めた。
声に反応して飛び上がる女を無視して返答を待つ。
紙を横から取り出したのは違う女だ。
確認してからローは我慢をしてサインを。
相手の代表もさっさと書いた。
これにより契約はなされたので立ち上がる。
相手の女に名乗ると小さく女も名を告げてきた。
聞いたこともない名だったのでやはり無名かと判断する。

「素晴らしいですわ船長」

誉めちぎる女達に相当好かれているのだなと分析して、こいつならばどうにか囲い込めるかもしれないと頭を回転させた。
どの女も警戒心を見せて取り込めそうにない。
また攻められては勝ち目がないので同調するに限った。
契約をしたが船員達ではなくローだけの服従魔法だった。
それならばと契約したが服従をするのが目の前の震える女なので害はないのだろうなと判断した。

「たった今からおれはお前の奴隷になった」

「え?えええっ、どっ、奴隷!?」

聞かされてないのか至極驚く。
代表なのに知らないとは。
どういうことだと周りの女に聞きまくるネネカ。
しかし、女達は慣れた様子で始めての男奴隷ですわねと喜ぶ。

「肉体仕事をやらせましょう」

「いいえ、ここは物資を持ってこさせましょうよ」

置いていかれるネネカはぽかんとする。
何故なんの関係もない男を奴隷になどしなくては。

「私奴隷なんていりませんっ」

そんな文化、あっさり受け入れられるわけもなし。
きっぱり拒否。

「一人くらいは必要ですの」

頑として聞き入れてくれない。
本当に船長はあだ名なのかもしれないな。
このままではこきつかわれてしまうと男性を外に連れていく。
誰かがついてこようとするが今回は強く遠慮して彼の船に連れていく。
奴隷にするつもりもなく、なにかを言いつける真似はしないので自由に生きて下さいと早口に捲し立てた。

「お前は奴隷に見えないが何故この船に乗ってるんだ」

「拾われたから乗ってます」

ぽつんと出てくる中身は分かりやすい。
他に知らない。
拾われた、うん、そのまんま。
男はその解答に納得出来ないのか嘘だろと直ぐにしてきたものの、嘘じゃないですと返す。
魔法があって海賊の居る世界。
色々世界観が混ざりすぎてんじゃないんだろうか。
渋滞を起こしているのでは疑惑浮上。
全く縁のないものを寄越されても困るだけなのだと思い、男に奴隷にならなくても良いから帰ってくれと頼む。

「おれ達を解放すると?信じると?」

「信じるもなにも、皆さんに負けたのにこれ以上なにを望む意味が?」

勝っているのなら分かるが、負けたが側がどれ程言っていてもそれ以上もなにもない。
はやく帰ってくれと男を急かす。

「お前もきてくれ、証人としてあいつらに説明したい」

「え、良いですけど……」

契約しているので既に危害は加えられることはないだろうと軽く返事をした。


戻る【07】