下着の試着も会計も終えて次に向かったのはスイーツの店を集めた道。
所狭しと店が並んでいる。
こういうの都会とかにある町並みだ。
美女達も何故か目をキラキラさせている。
すると、全員の視線がこちらを向く。
驚いて鳥肌が立つ。
「船長、そのお、図々しいお願いなのですが私たちもお菓子を食べてもよろしいでしょうか?」
「ん?」
耳が可笑しくなったのかね、今この人たちは自分に指示を仰がなかったか。
なぜそんなことに許可を求めてくるんだ。
怖くてひきつった笑いを浮かべ良いんではないでしょうかと放つ。
すると、ワァ!と黄色い声が発されて全員から笑顔が弾ける。
それを見ていた民衆も顔を赤くしたり見惚れていたりする。
「やったわ!」
「嬉しい!一生食べれないかと思ってたのにっ」
あれ、そんなに自分は鬼畜に思えたのかな。
というか、好きに食べれば良いのに。
養われている相手に聞くなんてやっぱりわからんぞ。
船長と呼ばれている違和感を抱えて皆はスイーツ通りを進む。
そして、買う前にいちいちこちらへお膳立てしてくる。
怖いよまじで。
そんなの好きにすりゃ良いのに。
「あ、あの、私の許可とか取らなくても皆さん無制限に買えば良いかと思います。私絶対ダメとか言わないので」
めんどくささも加わり付け加えると全員の瞳からツゥと涙が。
――え!?こえええええ!
分かる?別にいじめてないのに泣かれる恐怖を。
「私達はなんて幸運なの……」
「私、全てを捧げる!」
泣きながら喜んでる。
誰か助けてくれ。
と、思っていると前方からガチャガチャと、音をさせたものが迫る。
耳に聞こえて後ろをみると分厚い甲冑に身を包むなにかが近くまで来て突然怒鳴った。
「貴様か!この者達を理不尽にさげすむのは!」
くそ面倒な展開。
こういう奴らはとりあえず話を聞かないっていうテンプレート。
鬱陶しさに辟易していると後ろから援護射撃にて打ち返された。
「無礼もの!我らのリーダーになんという口の聞き方!身を弁えろ下衆どもっ」
覇気を感じさせる凄まじい怒気に甲冑達は少し後ずさる。
「横暴にも偏見だけで判断する貴様らに怒鳴られる覚えなどなくてよ」
違う声が更に詰る。
またまた聞こえたら今度は数人まとめて言い返すので今度は甲冑達がたじたじになった。
「で、謝罪は?恐喝したのはそちらなのだし」
なにもしてないのに怒鳴られたので求めた美女達。
「すまない」
「ふざけてんのか、謝るのは私たちではない」
全員が睨み付けているので小さくなって謝ってくる。
「許しませんけどもう現れないで下さい」
まさかそんな言葉が来るとは思わなかったのか甲冑達はびっくりした声で終わり去っていく。
なぜ罪もないのに怒鳴られ、下手をしたら連れていかれていたのに許さねばならないんだと到底理解出来ん。
「見事な返しですわ船長」
「助けてくれてありがとうございます。船長ではないけど」
褒められて苦笑。
甲冑達への恐怖は彼女らのお陰でなかった。
騒ぎを起こしたわけでもないのでなぜあの甲冑は来たのか。
「やつらは衛兵です」
とのことらしい。
衛兵って暇なんだな。
ろくな聞き取りもせずに決めつける身勝手な人達と脳内メモ。
「最も、ギルドらに仕事を奪われる日照りどもですが」
「ギルド!」
ファンタジーあるあるな世界観に目を輝かせていく。
「私たちもかつてはギルド員でしたが、そんなのは名ばかり。もし船長殿が望むのならまた立ち上げるのもやぶさかではない」
「え、い、いやぁ」
戦えないし冒険者になるのは無理だ。
それに入りたいとは思わない。
立ち上げるとか余計に難易度高いことはやれないぞ。
及び腰のまま足を進めて各自好きな店に行く。
散らばらないところが上品だ。
カルガモみたいについてくる。
可笑しいでしょ?普通後ろじゃね。
しかも立ち止まると皆例外なく止まるんだよ。
兵隊みたいな感覚に背筋が冷える。
皆は一体何が見えてるんだろうか。
こちら越しに居ない誰かが見えているのかもと震える。
なに、幽霊とか言っちゃう?
ぞぞぞと背筋が震えるとその異変に何故か気付いた女医。
普通買い物に女医付きとか過保護過ぎませんかね。
うぐぐとなにも言えないままなんでもないですからと無難な事で凌ぐ。
ギルドに向かうことになり歩き出す。
乱れぬ徒歩を披露して注目を集める集団。
目立ちたくないのにと俯く。
「船長」
呼ばれて仕方なく顔をあげる。
船長っていうのはあだ名かなにかだと思うことにしよう。
諦めの境地に立っていく。
女の一人が神妙な顔でなにか気になることがあるのですかと聞いてくる。
人に見られているから隠れたくてと言うと電線していく女達。
特になにか特別なことを言ったつもりなどなく、目を丸くしていると「抹殺」という単語が聞こえてくる。
――うええええ!?
ちょっとだけ言葉を発しただけなのに。
混乱していく中、段々美女集団が殺気に満ちてくるのを感じた。
周りの人達すらもその異様な圧に恐れ始めていく。
ちょっと不満をもらしただけでこの騒動。
この人たちの思考を違う方向に曲げねばと咄嗟に判断。
「気にならなくなりました」
ギルド内は騒然としていたが殺気が薄くなり息を吐き出す様が視界の中で目撃される。
ギルドを仕切る男と名乗る人が奥の部屋からやってきたことにより、事態は収まらない。
なにかうちのものがやらかしたのかという問いかけに彼女達は憮然と向かいあって、不快な視線を向けられて眼を見返してあげただけだと宣う。
間違ったことを言ってはいない。
ギルドのまとめ役は女達の美貌を見て、見られるのも仕方ないなと内心納得する。
詫びをするとまとめ役は謝り、それを受けた美女らは次はないと吐き出す。
次はどうなるのかはネネカにも分からぬ。
まとめ役はなにを求めてここにきたのかと聞いてきたので女の一人が依頼を受けにきたのだと説明する。
このままでは進まないと判断された。
そうだ、ギルドにきただけなのにもう帰りたくなる。
疲れが溜まるなと心の中で消化。
口に出してしまえばまたなにか問題を起こすことになると思ったし。
簡単な仕事からやりたいなと思い、まとめ役にお使いをしようとしているのだと伝えてもらう。
まとめ役はちんまいネネカを見て怪訝な顔をしていたが、用件を済ませたいので気にしないことにした。
比べられるのは仕方ない。
己があまりに平凡すぎるのだ。
比較対照も居るし、離れないしで。
聞けば直ぐに依頼を持ってこられる。
パン屋でパンを受け取り駐屯所に届けるみたい。
さっきの人達に会うかもしれないなと思いつつ、ギルドの人がすすめたのだから信用することにした。
もし絡まれたのなら見損なう予定だ。
既にマイナス点を与えられているので最早地に落ちるだけだ。
そこで上に上がることもない。
美女達は先程のことを覚えているだろうに、全く嫌な顔をせずに笑う。
これにしましょう船長とニコニコしている。
ギルドのまとめ役は船長と呼ばれた少女らしき女を凝視しつつ、黙っていた。
あの殺気は本物だ。
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