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この船は幽霊船じゃないかと疑っている。
美女しかいない上に、皆心が優しすぎるのだ。
ここはパラダイスでないのなら悪魔のワナかと思う。
美女のためなら喜んで手伝おう。
しかし、隣室に居ると聞いた船長には会えなかった。
人の気配もなかった。
段々ホラーテイストに見えてくる。
美女の人達が金持ちだとするならば分かるが騒ぐでもなく、淡々と自分達の作業をしていた。
乗客じゃなくてこれでは使用人のようだ。
困った様子で見ているのもなんなので、手伝うと申し入れれば彼女らはきょとんとした顔をして、言われるとは思わなかったとでも思っていそうな顔でこちらを見てくる。
いや、これでも居候になってしまったわけだから手伝うのは当然であろう。
困っているのは今夜の献立らしい。
今までは一人の人間に従いメニューを決めていたので自分達で決めるのが難しいのだと説明を受ける。
その一人の人間にまた聞けないのかと聞けば全員が「無理」と言う。
無理とはどういうことなのだろうと聞こうとしたら、貴方が決めてと言われてパニックになる。
この船になんの食材があるのかすら知らないのに言えるわけがない。
それに、今日きたばかりの自分に聞くより仲間内での好きなものを出しあい決める方が楽なのではないか。
そう提案すると皆なるほどと思考を捨てたような前提で話していたことに気付く。

「私じゃ食材を知らないので提案出来そうにないですから。好きな物でアンケートとか取れば解決しますよ」

アンケートは紙に書かねばいけないので明日からになるだろうなと思っていると、一人が「すごいわ」と持ち上げてくる。
なにこれ逆にいきなり褒めてくる人達ってこんなに恐怖を感じるんだ。
始めての感覚に鳥肌が立つがスマイルを張り付けてマナーを辛うじて守る。
危ない、色々飲み込まれかける。
それくらいキャラクターが濃い。

「あ、ほかの仕事なら手伝いますから……なんなりと頼ってくださいね」

皆見た目からしてか弱そうだもん。
ネネカは平凡な見た目と基礎体力普通であるが、彼女達より遥かに役に立てる気概がある。
彼女らはただでさえ胸元が故郷の平均体型よりも豊満なので肩凝りも酷かろう。
言葉を言い終えると全員から凄い熱量の視線を肌で感じ取り言い知れない悪寒を抱く。
皆見すぎなんだけど。
後退り、なにか言わなくちゃとかやらなくちゃと思っているも唐突に目の前に透明なものが出現した。
HP記載はないが名前の下によく分からない言葉がつらつらと並んでいる。
これってゲームで良く見るステータス画面にそっくり。
そこに親愛度表示オフとあったのでスマホを触る要領で触れば、オンになった。
なにか変わってるところなんて。

「……!……!?」

驚きすぎて頭が白くなる。
視界ににちらちらと浮かぶそれを見た。
彼女達一人一人の頭上にハートマークとゼロの数字が浮かんでいた。
彼女達が動く度にそれは共に移動する。
思ったのはどこの恋愛シミュレーションだよ!?という第一の想い。
ゲームならある一定の数字を貯めると親愛ストーリー的なものが見れるようになるやつ。
大抵こういうのは一話が親愛度0でも見れるものが大半なんだけど現実だから普通に見れるわけがない。
というか、その前に親愛ストーリーってどういうこと!?
おかしくね!?
混乱に混乱を重ねる中、数人の好感度が2になっている人もいてチョロすぎるだろうと突っ込みがしたくなる。
簡単にたぶらかされすぎぃ。
え?なに?彼女達って残念美女達ってやつなの?
簡単に心臓がトゥンクして頭撫でたらポッてしちゃって惚れられちゃうわけ?
こわっ。
こっっわ!
そっちの意味でも怖い。
そのわりに一人も妊娠している様子もないのでなにか条件があるのかもしれない。
それに、ステータスの中に《恩人への感謝》というものがあり、これは自分が思ったことの称号なのではないかと考察。
やはり異世界なのだなと不思議な気持ちがする。
美少女達を見て助けてもらったのだから細かいことな気にしないことにした。
これからもなんなくで済まさないとやっていけないと思う。
さっきサラッと異世界に居ることに納得したけど、夢を見ているだけという可能性も。
小説でしか異世界なんて存在しないのだから今は急いで知る必要もないだろう。
ゆっくり見ていこう。
でないと受け入れられない。
美女が等々に目の前に現れたのはどう頑張って考えてもあり得るのは魔法というものだ。
こういうのって基本誰かから教えてもらうのがチュートリアルのなんたるかだと思う。
でも、敢えて知るのもめんどい。

「あ、かわむきなら私でも出来ま」

厨房に行くというので野菜を運ぶのを手伝おうと駆け寄る、前に野菜が浮いていた。
空中で停止してどこかへ飛んで行く。
はた、と足も自然と止まる。
魔法だったでござる。
酷い現実に硬直していると別の美女が肩に手を滑らせて「こちらへ」と誘導された。
どこへ行くのかと思っていると寝ていたので出来なかった健康を診断すると通達。
こういうのアニメで見たことあるやつ。
楽しみだ。
魔法による医療。
部屋が自動で開く。
相当金持ちの船だなと観察も忘れない。
中には変わらぬ美女が居て惚れ惚れとしていると間に椅子に座らされて触診を受ける。
あ、結構普通。
心機を体にピトピトつけている。
しかし、顔には出さない。
それが大人な対応だから。
本当は魔法が物凄く見たかったけど。
好感度も1だ。
なにもしてないのに?
毎日話しかけたら好感度も上がったりして。
怖いから好感度の表示をオフにした。
だれだこんなシステム見えるようにしたの。
もう酷い。
初対面から好感度を見ながら生活しろとは鬼畜だと思わなかったのか。

「あー」

口の中を触診されてる。
これってえずくから好きじゃない。
でも、綺麗な人に見られている緊張もあってかえずくこともなくすみかに行われていく。
口を開き終えて次は目の検査。
目を開き光を追う。
これも眩しくて好きではない。
顔を良く観察され、平凡だけど内心普通の紹介をする。
女医は、美しく賢いというのが滲み出るくらいの気品を持っていた。
語彙力がなくてすまん。
実況はあんまり得意じゃなかったり。
そんなことを思っている間にも問診や触診は続く。

「どこから来たのか」

問われたので口からついて出た。
そんなことを言われても正直どう答えたら良いものか。
どう見ても魔法のない世界から来たとしか。


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