×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

凄く高級な枕の上で自分は寝ている。
そう確信するくらいふわふわでなめらかで温かいのだ。

「んー」

それを頬でするすると頬擦りしていると今度はふんわりと香り高いものが鼻孔を擽る。

「んん」

もう一度手を動かして枕を抱き締めフニャア、とした感覚が顔を埋めて、そこで違和感を感じてしまい一気に覚醒する。

「へっ……へ?」

むにゃむにゃした呂律の回らぬ舌を唾液で湿らせる間もなく豪華なベッドで目の眩む美女達に囲まれていた。
ええ、っと。
全員目を閉じているので寝ているらしい。
これはなんだろう。
天国か。
天使達なのだろうか。
天使達を起こさないように静かに起きようする。
しかし、急に顔へ凄まじい弾力がぶつかる。

「ご、ごめん!なさい!」

バランスを崩して胸へ顔がぶつかってしまったようだ。
謝って離れようとすると構わないわと聞こえる。
幻聴かしら。
今時こんなご都合主義も怒るような台詞言われるわけない。

「え?だから、あの、すみません」

流石にないないと謝ればうっとりした今にもとろとろに溶けそうな顔をした美女に見られて頭は大パニックだ。
どうした自分、自分は女だぞ、思い出せ!
男じゃないのにこのハーレム展開なんだっ。
兎に角わけがわからん場所から離れようとベッドをよちよちと這った。
次々起き上がる美女達に一瞬ホラーを感じる。

「こえええ」

涙目になってしまう。
誰だって怖い。
男の夢か詰まったもんだろうと関係ねえんだよお!
起き出した美女の一人が瞬きの間に目の前に立っていた。
ここはやはり現実ではないのだ。
そんなアクションよりもフィクションみたいな出現の仕方。
珍しいな逆に。
そこはふわっと翼を広げて先回りされた方が現実味あるよ。
自分でもなにを言ってるのかわからん。
誰か説明してほしいくらいだ。
どこへ行くの?やらどうしたの?と言われる己が間違っているかな。
まるで昔から知ってる人みたいに言われる謎。
聞けば自分は約三時間眠っていたのだと再び美少女達に囲まれて説明された。
何故わざわざ囲む?
その必要ある?
こえええ。
この包囲されている感覚が無意識に怖さを増幅させた。
じたばたして脱出すると全員きょとんとしてかれにっこり笑う。
こっわ!
怖さ倍増しただけだ。

「初めまして……えっと、私はネネカと言いますが皆さんは?」

おずおずと言うと皆悦に入った顔でそれぞれ自己紹介してくる。
けど、覚えきれない。
最後に終わる頃には最初の名前なんて彼方だ。
覚えるのは生まれた時から得意ではなかったけど故郷と違う発音に無理だと諦めた。
徐々に慣らしていこう徐々に。
そう言い切ってまじまじと部屋の中を見た。
美女の中の一人にここは医務室なのだと言われる。
医務室の割りに豪華絢爛だ。
まるでお金持ち御用達みたいな、そういう人達が乗るのを見越したような内装だ。
医務室にこんな煌めき必要かねえ。
いや、絶対不必要でしょ。
逆に具合が悪くなってしまう。
美少女達に代わる代わる説明されるが一割も理解出来ない。
というか、したくない。
先ずここは船の中である。
そこからがびっくり。
揺れているとか一切ないのだからお高いのは確実だ。
船ということは船長が居るわけで。
挨拶をしたいと言ったら、皆は一点の曇りなくこちらを見つめていて、心なしか恍惚としているものまである。

「あのお、船長さんは」

怖々と聞けば彼女達の白魚の手先が空中に浮かび、指をひとつ付き出した状態にし、一点を全員示し会わせた方向へ向ける。
ネネカの後ろを指されているので見る。
壁、の向こう。
つまり隣室に居ることを示している。

「となりの部屋ですか」

挨拶してきますねと動くと全員の指がネネカを子供のように追う。
遊んでいるように見えて悪いけど不気味にも感じた。
口を開こうとしても言える台詞もなく隣の部屋を見ようと扉を開ける。

「船長は」

扉が閉まる瞬間幻聴が聞こえた。
船長は――貴方ですよ、と。


戻る【02】