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隙を見つけて刀を振るう姿は正に格好良いと言える。

見た目は整っているのに職業がなあ。

モテるのになにをしているのかは関係ないのだろう。

―――ドォン

触手のようにしなっていたものが一刀を受けて切り落とされ、地面に落ちる。

次の触手を切り落とそうとローは構えるが、植物の本体の花口からの別の攻撃に当たる。

「くそっ」

短く悪態をつき、瓦礫の中に着地。

「どうやら突破出来そうにない」

「逃げられないってことですよね」

分断されているのでどの道集合することも出来ない。

「なにか策を」

と、思案している男の視線はこちらに固定される。

もしや、囮にしようとしてまいな?

首を振るとローは睨みつけるような顔でジィ、と見てくるので更に首を振る。

「投げないで下さいね!」

「投げても直ぐに拾う」

投げないでって言ってんの!

ーーブン

放り投げたぞこの人。

無言で空中を放物線でいく。

落ちていく。

花弁のような口がポカリと開く。

食べられたら気持ち悪いだろう。

死なないにしても嫌なものだ。

疲労と男は言ったが攻撃出来ないのにどうやって助け出されるのか疑問。

「あ、ネネカが飛んでる」

誰かの声。

「嘘だろ!船長が飛ばしたのか!?」

そうだよ、お宅の船長が私を投げたんだよ。

モンスターの口に入る瞬間、ローが高く跳び上がりモンスターに向けて一振り。

「グギャギャギャギャ!!」

モンスターの真上から切り、モンスターは叫び声をあげて2つに倒れる。

ーーガッ

ローの手が服を掴む。

ーードタン

「わう!」

お腹が引っ張られて息苦しい。

「やったか」

男はグネグネと動くモンスターを眺めて直ぐに団員達と合流する。

皆は涙目でローへわらわらと集まる。

「船長ー!」

「わー!」

「やったァ!」

「さすがっス!」

皆に褒められて良かったね。

俯瞰して見ているとこいつのお陰だとローがネネカを持ち上げる。

うん、もっと大きく発表してね。

なんせ、食われそうになったからさ、褒められたくもなるよ。

それとトラファルガー氏に文句を100ぺんくらいは言いたい。

良くも投げたなと。

ロー達はなにもなかったかのように盛り上がってから再び探索を再開する。

島を出るのではなかったのかと指摘すれば、建物が劣化している原因が気になるらしい。

それよりも、離れたほうが懸命じゃなかろうか。

一頻り探検して調べたが原因が分からないまま。

もう帰ろうかとみんなの顔が疲れに染まる。

全員で少しだけ気怠く歩いていると、前方から斜め横に人影が覗き、ギョッとした。

団員達も油断していたのでピリピリした空気が伝染。

「止まれ!」

呼び止めてきた相手はーー子供。

衣服も顔もボロボロ。

大人がこちらにはたくさんいるのに良く命令系で呼べたなと恐れ入る。

ネネカでさえもそんな怖い真似できない。

変な空気になりつつある。

敵かと思えば偉そうな子供が出てきたもので。

「退け」

ローはなんの躊躇もなく一言。

「食料を置いてけ」

いかにもな要求。

「誰に向かって命令している」

はっ、ローは確か命令されるのが嫌いだとシャチ達に聞いた。

ヤバいぞ、彼が。

「うるさい!」

男の子は手作り感満載のナイフを手に脅してくるが、刀を握るローに挑むなど無茶なような。

「お前こそうるせェ」

ーースッ

「わ!」

船長殿が刀の刀身をチラみせすれば、男の子は驚いたように後ろに飛びのく。

「くくくく、くるなぁ!」

脅した割には怯える。

男は理解した顔で笑う。

海賊に脅しをかけるなんて、脅す相手を間違えたとしか言えん。

ローはやってみろよと刀を抜かずに男の子に振りかざす。

「ひいいい!」

案の定盛大に怖気づいた。

そして、ドシンと尻もちをつく。

「う、うぐ」

痛みでうめき、後ろへズリズリと下がる。

ローは飽きた様子でこれで理解したか、と振り上げた腕を下ろす。

そういうとこは最後までやらず、見逃すのか。

意外な一面に少しだけ見直した。

男の子は振り下ろされなかったことにすかさず逃げ出す。

ナイフも忘れずに去るので肝は残っている。

男は見逃すようで追いかけることはしない。

建物の謎を説かなくても良かったのだろうか。

「聞かなくていいんですか?建物が新しい謎を知りたくなかったんですか?」

「知ったとして過去のこと。時間の無駄だ」

そう述べて団員達に声を掛けた男は、帰るぞと言う。

もう帰るらしい。

また変な生物が現れるのは嫌なので賛成。

ゲームで言うなら奇襲イベントが終わった。



船に戻って急ぎ星から離れる。

心なしか船全体がホッとしている。

船にあったお菓子を食べて落ち着いた。

美味しいなこれ。

濃い生クリームに合う。

しっとりしていて、宇宙最高。

舌鼓を打っているとローが珍しくみんなが集まる部屋に来た。

なんだかんだとこの人も自分の部下が好きなんだよね。

「少し良いか」

船員ではなく、私に用らしい。

隣に座りジッと見てくる。

なんだろう、今更。

少し背筋が伸びる。

ネネカはただの船の居候なので、平凡な心臓の持ち主なのだ。

威圧感を持つ相手に改めてなにか言われるなんて普通に怖いって。

口を開くローから、付いてくるのか、と尋ねられる。

意味がわからない。

どういう意味なの?

「いつ戻ろうと考えてないのか」

「え?やっぱり良く意味が分かりづらくて」

「全く考えてないということか。とりあえずお前の部下を呼べ」

「今!……ですか?」

なんの脈絡もなかったよ。

突然の言葉にローが構わないならば呼ぶけど。

頭の中で来てほしいと言うと、わかりました、と脳内に誰かの声が聞こえた。

沢山あの船には乗っていて流石に全員の声はまだ覚えきれてない。

10分後、ローの船の横に私の乗っていた船が来た。

迎えにこさせてしまったので帰ろうと立ち上がる。

まずは皆にさよならを言おう。

「少しの間でしたがお世話になりまし」

「なにを言ってる」

「だから、お別れを言ってるんですよ」

人の挨拶を遮らないで欲しい。

「誰も帰っていいと言ってない」

承諾式とは初耳なのだが。

「じゃ、じゃあ降りて良いですか?」

「あちらの要求次第だな」

ローは来いとネネカを伴い外へ行く。

今更だけど無防備に宇宙の外に出ていけるって凄いや。

地球じゃ絶対に体験できないことをしてる。

「冒険はいかがでしたか船長」

美女秘書の女性がキリッとした顔で問いかけてくる。

勿論楽しかったと答えた。

彼女はようございました、と言う。

美女の笑顔は平気だなと眩しさに目を細める。

「一度船にお戻りいただけますか」

「あ、うん。戻りますよ」

と、ローの方を向くと彼はこちらを見ていた。

「また、来ても良いですか」

「構わない。しっかり話し合ってこいよ」

「はい!」

トラファルガー率いるこの船での旅は楽しかったし、みんなと話していると冒険を楽しんでいる人たちだから、とても気が合う。

部外者という意識があったが、また来ても良いという言葉に安堵した。

ローにありがとうございましたと礼を言って、女性船員に付いていく。

ハートの団員達もローの後ろから手を振ったりして見送ってくれている。

私も手を振り返す。

船の扉が開くと全員がこちらをみていた。

「ただいま」

「「「おかえりなさいませ」」」

相変わらずの社長扱いだが、大切な社員と思えばなんとか飲み込めそう。

次はどんな冒険が出来るのかとても楽しみだ。

宇宙に浮かぶ隕石を見て、笑みを浮かべた。


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