辿り着いたのは操縦室で、なにやらガヤガヤしていて人気を感じたからだ。
そこに手をかけて扉を開くと忙しく動き回るツナギの集団。
とてもではないがのんきに話しかけられん。
と、思っていると一人がこちらに気付いてどうきた?と自然に聞いてくる。
海賊なのに親しみやすい。
「なにがあったのか知りたいんです」
「宇宙嵐だ」
「宇宙嵐、って」
なんだそれはと想像で翁おうとしていると、その人はいつくるかも分からない大きめの嵐なのだと教えてくれる。
こわ!
うっかり船がバラバラになってたとか、ある?
結構な揺れだったからね。
「大丈夫だったんですか?」
「ああ、幸運にも破損もないし、無事に抜けられたよ」
話しているとローも部屋に入ってきて、周りを見回してまたあるき出す。
こちらの方へ来たので道を開けようと脇に避ける。
「良くあの揺れに耐えられたな。今頃本棚に倒れて潰れてるかと思ってたぞ」
「私死んでるじゃないですかっ」
「助けに行こうとしたらもぬけの殻だったから残念だ」
(残念だってなに)
ニヤニヤと面白がっている畜生を無視してつーん、とそっぽを向く。
反応を見せたら思うつぼなのだ。
「おい、無視するな」
(無視してますよ)
怒っているわけではなく、まだ口元が笑みを浮かべている。
多分この反応ですら楽しんでいるのだろう。
負けないぞ。
「船長、このままあの星におろしますか?」
「ああ」
島か。
この船に乗って降りたらどういう扱いになるのだろうか。
というか、お留守番なのかな。
「あの、島に降りるのはどうしたら」
「お前も行くんだ」
「あ、分かりました」
「いざというときは盾として役に立ってもらう」
まあ、無敵みたいらしいし、私も怪我しないなら少しくらい手助けはありだが、ここまで潔いと従いたくない天の邪鬼を感じる。
従いたくない気分になってくるなんて逆に彼の才能を感じるよ。
でも、冒険はしたいので無論おりる。
こういう未知の体験を期待しているからこうして宇宙で過ごしているから。
船が星に着陸して、そこがボロボロな街とわかったのは暫く歩いてからだった。
まるで大分時間の経過した光景に見えるので、こういう廃村みたいな星もあるんだな、程度の感想。
が、難しい顔をしているローは左右を見たり、建物に触れて軽く叩いたりするので、考古学者っぽいと感嘆していた。
船員たちも彼と同じような顔をして左右に別れて見ていく。
なにか気になることでもあるのだろうか。
首をかしげて待機のまま立っていると調査をし終わった男がこちらへ来て、声をかけた。
「何かが変だ」
「変だって、どこがですか?」
私の目からはどこも可笑しな光景はないが。
「建物が新しい」
「…………え?いやいや、めっちゃボロボロですよね」
何百年も放置されたような瓦礫。
地面だってガタガタだ。
とてもではないが人の気配もないし、とても住めたものではない。
「瓦礫が最近の技術で作られたもので、昔ではありえない素材が使用されている」
「う、うーん」
彼が言うのならば信憑性がある。
「気味が悪い。早めに星を出たほうが良さそうだ」
船員達もローの言葉にぞろぞろと来る。
ーーゴゴゴゴ
「?」
小さな音が聞こえて、空耳かと首を回す。
ーーゴゴゴゴ
「なになになに!?」
ーーゴゴゴゴ!
どんどん音が大きくなってきている。
「!ーー下から来る!避けろ!」
ローが声掛けをして7秒後、地面が割れた。
避け始めると緑の色をしたしなる何かが姿を現して、ロー達を分断させた。
それがあまりにも巨大だったせい。
緑の縄の様に見えたものは触手に近い見た目。
「なんだあれは!」
団員達も動揺していた。
船長がネネカを片手で掴むと飛び上がる。
今までいたところにムチが振り下ろされていた。
危な、潰されるところだった。
なにが襲ってきたのかは上を見れば一目瞭然。
巨大なラフレシアのような花が付いているその下に、うねる、しなっているツルが伸びていた。
今さっき振り下ろされたのはそのツルだ。
巨大生物とはベタな展開であるが、効果抜群に恐ろしさはクル。
一体なにを食べればそこまで大きくなるのか。
SF映画などを見るときは疑問に思わないのに、現実に見ると気になるものなんだなぁ。
「こんなときに考え事とは、肝が座ってるな」
「だと思いますでしょうけど、ただの現実逃避ですから」
死ぬかもしれない危機。
いや、加護があるので死なないのは知っているが、こう何度も命の危険に晒されたら不安にだってなるさ。
さっきから何度も跳んで避けている。
運動神経が羨ましい。
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