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ローは映像を見て、顔をしかめる。

「たまにああいう手合いの女が居るが、どういう神経をしているのか分からねェ」

「それは、船長さんがかっこいいからとかそんなシンプルな理由ですよ、たぶん」

「そういうことはサラッと言うな」

「事実ですから。事実は簡単です」

少し、話せるようになったかなと自己評価。

いつの間にか、男友達程度の距離なのかなとは思っている。

ネネカはふと浮かぶ言葉に特になにかを思うことなく、映像を見終わる。

エーリンが転んで泣くことくらいの展開しかなく、そこは別に面白くなかった。

被害者ぶるなよとは思ったけど。

「楽しかったか」

「意外と貴方が冷静に対処したので見る前よりは、特に面白味はなかったです」

「あれ以上したら切るつもりだったから、この女は命拾いした」

そうだよね、海賊に話しかけて無事なんだから、運が良かった。

それに、ローは無駄な事を嫌いそう。

騒ぎになるより静かに去る方を選んだのだ。

但し、エーリンはローに声をかけて失敗したので、女冒険者、女傭兵、受付と、大体失笑され、当分笑われものになるというデスペナルティを課せられると予想する。

今まで沢山沢山、女達の批判をその言葉ではね除けてきたしっぺ返しだろうか。

同じ女なので、女の扱いは妥当と思う。

皆が見てないところで媚を売ればまだ良かったんじゃないのかな。

媚を売ったり、可愛くすることを否定することはないが、やり方が拙すぎたとは思う。

それも作戦ならばもうなにも思うまい。

ローはくくく、と笑って皮肉げに口角を上げた。

どうやら、こちらの表情で勝手に笑ってるっぽい。

「うちのイッカクがチョコ作るのめんどうがってたな」

イッカクはハートの海賊団の女船員。

唐突な話題の変わりように、え?となる。

何故その話をするのだろう。

チョコってなに。

「バレンタインが近付いてる」

「う、宇宙にもバレンタインなんてあるんですか?」

「ある。チョコでもなんでもありだがな」

「可笑しい、バレンタインの文化は特有なのに」

「なにもおかしくない。逆輸入って奴だ」

「え!宇宙から地球に伝わったってことですか?まさか」

「その、まさかだ」

とんでもないな、宇宙。

「クリスマスも、行事も全部……?」

「そこはかなり変化して伝わったな」

「ん?」

「全ての行事はほぼ酒を飲むのがメインだが、地球ではそれぞれ役目を持たせてるって話だろ」

地球の方が健全だった。

「そんな……割りと自分の星の行事と信じてたのに」

「別に他の星でも似たものは多い。気にするな」

ショック受けてるから気にする。

「依頼終わったのなら、帰らないんですか?」

「ユースタス屋をからかう為に当分近くに滞在する予定だ」

悪魔のようなことをいう人だ。

彼の部下が可哀想でならない。

特攻仕掛けてあげないように祈っておく。

強く生きなさい。

ネネカは内心手を合わす。

「お前も行くぞ」

「……い、行くぞって?」

変な台詞が聞こえて、声が石のように固まり、砂糖のようにざりざりとなる。

体はメトロノームよりもカタカタと揺れるので、今の言葉を理解したくないと己が叫ぶ。

何故いたいけな一般市民を敵の頭に会いに行くと連れていこうとするのか。

普通、連れていかないし、混乱。

「い、い、行くわけないでしょうッ」

危険のレベルMAXなんだよ絶対。

自分から死にに行くような女ではない。

バレンタインのチョコをハートのイッカクと作る事を選ぶ。

――グイッ

「な!」

逃げようと動くが腕を捕まれて動きを封じられる。

ここは敵船なのだが、堂々と誘拐しようとしているぞ。

助けを求めた。

「助けてぇ!」

――バリバリ!

「チッ」

ローに雷が飛来する。

誰も見当たらないけど、攻撃だけを受けたらしい。

遠いところから攻撃しているみたいだ。

男は仕方ねェな、と勝手に諦めた。

あっさり部屋から消えてので、椅子に座る。

相変わらず怖いなあの人。

溜め息を吐き、汗をかいた額を手で拭く。

タオルが目の前に浮かぶので、受け取って拭う。

目に見えぬボディガードだな。

ローは勝手に入れるし、この船のセキュリティを見直したい。




少し経過し、気晴らしにレストランで食べに行こうと三人誘った。

それを見ていた二人が自分達もと言って、自分達が誘われたのだからとバトルになったので、納める目的で皆も行きましょう、と叫んだ。

来たいのなら静かに行きたい。

こういうことが起こる度に争いになるなんて、なんだかんだ、この船もアマゾネス集団である。

別にダメと言ってないのに争奪戦を繰り広げられては、食欲も減る。

私は皆と楽しく過ごしたいのだ。

声をかける理由はそんな感じ。

「うう」

それに、バトルが激しいこと激しいこと。

「皆、元気ってことか」

一般人にしては刺激が強すぎ。

町に繰り出す。

喧嘩なんて存在してないように、彼女達は楽しそうにニコニコしている。

「まぁ、見て」

(え?)

周りの人がコソコソとなにかを言う。

その周りも煩くなった。

「ユースタス・キッドだ」

「海賊じゃねェか」

(うげげ)

なんでこんなにエンカウント率高いんだ。

ソソソ、と横に退いて相手が去るのを待つ。

仮面被っておいて良かった!

と、なったが彼女らに興味を抱いていたので、立ち止まる。

あー、そうだった。

このまま止まらないでと言うのも無理な話。

キッド達は止まったらやはり彼女等に話し掛ける。

「また会ったな」

(冷たい目をしている!)

キッドに話しかけられて、彼女達は全く気にせず無視している。

それどころか横切って行こうとしている。

「おいおい、待てよ」

「触るな」

追おうとすると、彼女達は睨み付けてキッドから更に更に遠くへ離れる。

「ささ、お早く」

皆にほぼ担がれて隠れる。

見つからぬようにステルス魔法を発動させた。

女達は慣れた様子で外を見て、キッド達が諦めるまで待った。

レストランへは屋根を伝う。

中へ入ると皆に見られるが、もうオプションだと思う他無い。

レストランでハンバーグを頼む。

美味しい、宇宙にハンバーグあって良かった。

彼女達はレストランで食べ終わると加護があるので別行動ですわ、と笑う。

珍しい、別行動なんて。

「分かりました」

「お可愛らしい」

分かりましたって言っただけなのに甘やかされた。

というわけで、別行動になった。

「とは言ってもどうしよう」

どこにいけば良いのか分からないけど、仮面を取ってとぼとぼ歩く。

加護があるのは良いけど、一人だと心細い。

「あ、噴水」

噴水の側にベンチがある。

「座ろ」

ペニャリ、とおしりを置く。

(ここは地球と変わらないなぁ)

眠くなってきた。

うとうとしていると、横に少し衝撃があったけど、それでも眠気に勝てずうつらうつらとする。

「はっ」

ちょっと寝入ってしまった。

「!!!?」

横を向いて、飛び出すのかと思うくらい、何もかもを弾けさせ、横にいる奴を食い入るように見てしまった。

でも、大丈夫、今は仮面被ってないし。

(嘘!周りの人居ない!)

さっきまで華やいでいたのに、いないんですけど。

こんな顔したユースタス・キッドが居たら誰だって逃げるよね。

女達に袖にされたからか、機嫌が良さそうでない。

私だって逃げたい。

なんで一人なの、仲間はどこ!

一人でウロウロと思考をばたつかせていると、周りを囲むように男達がやってくる。

「え、え?」

「めんどくせーな」

キッドが横に居て、舌を打ちまくる。

男達は「ユースタス・キッド!」と叫び、自分達は自警団だと自己紹介する。

うん、でも、ここに一般の人間居るから。

せめて、退避させて。


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