こんなとこって、故郷をバカにされたようで。
取材も記事にするのも拒否したのに次の日には新聞に乗っていた。
しかも、どこの町に居るのかも書いてあり、おいおい、と思わず歪める。
プライバシーは守られて然るべき。
バイト先に彼女たち目当ての観光客や芸能人としてスカウトしにきた者達などが入り乱れてカオス。
もうこの町に居られないなと溜め息を吐いた。
月三回は帰ってくるよと友愛の犬と祖母に別れを告げて騒動とおさらばした。
再び戻ってくることになった船。
「戻ってきちゃったよ」
ぽつりと囁けば彼女たちは嬉しそうに歓迎してくる。
彼女達にだけを戻そうとは試みたが、誰もこちらから離れたがらなくて、というか、誰も命令を聞いてくんない。
船長設定が飛ぶ。
戻ってきた船は色々グレードアップしていた。
どうやら他の団員達が出稼ぎして得た金品で船を便利に改造したと言う。
その様子を見て見たかった。
スマホアプリとかでも育成要素とか好きなんだよね。
何が変わったのかと先ず確かめるとご飯の質が分かりやすく変わっていた。
どうやら故郷の料理を食べてその美味しさに反映させてとのこと。
いや、私としては一番嬉しい。
他はお風呂に入浴剤や医療の設備。
ただの宇宙を飛ぶホテルになってる。
このままどこに行っても不自由しないぞ。
「船長、星が見えて来ました」
「はあい」
呼ばれたので外が見える所まで寄る。
女達もわらわらと来るので華やかになった。
見えた島は一見普通だ。
海賊ではなく冒険者兼傭兵をしている職なので結構歓迎されているよう。
初めての感覚にそれでいいのかと戸惑う。
「皆さんお綺麗ですねぇ」
入星手続きをしていると受付の子女に声をかけられていく。
皆が通り終えたので己の番だと受付を見るとしかめっ面をした。
きれいなものの中に汚いものが紛れ込んでいるわ、と聞こえてきそう。
その顔にそっちは心の中が汚いなと内心返しておく。
客商売なのにそういうのどうかと思う。
失礼すぎて文句も出ない。
いや、文句を言っても本心で謝ることが無さそうで無駄を省いたと言うべきか。
面倒なのだと憤怒して、落ち着かせた。
「ここは宇宙、私の物差しでやると大変なことになる」
宇宙だからこそ地球の常識が効かないかもしれないし。
それにしてはローは常識な部分があって破天荒な行動をするが地球の人間の行動と差分レベルでしか違わなかったし、謎だ。
生まれる場所が違えばその場所のやり方も違うのだと思っていたのに。
心が色んな所に行っては戻ってきてを繰り返している間に船員全員が審査を通り入星出来た。
因みに船長だからと一番初めに受けてと言われて首を激しく振り、一番最後も目立つので首を更に激しく振った。
この人達はきっと自分になにか変なフィルターを通していると思っている。
中に入る時に注意点をいくつか受けた。
その間の受付の女はうっとりと彼女達を見ていて、なんなんだろうと不快に思う。
美女達は慣れているのか全く気にしてない。
別に「見るのやめてもらえます?」って言っても許される熱視線だ。
受け付けも一人だけではなく何人か居るけど、全員こちらに目を向けていて、星に入ってきた人達すらも見てくる始末。
いい加減怒っても良いのでは。
美人過ぎても苦労するのかと染々。
説明が終わり質問はないかと聞かれて数人が質問し終えるとやっと星の中に入れる。
どんな星なのかとそこは普通にワクワク。
「楽しみ」
「ええ、わたくしも」
皆がわいわいと笑顔になる。
さっきまで能面みたいに無表情だったことに船長は気づかないが。
彼女達は受け付けの悪意を敏感に感じとり内心侮蔑を抱き女を敵認定していた。
受付嬢にとっては皮肉な感情だろう。
しかし、船長を侮辱するものは許さないとばかりにどろりとした黒い気配が漂う。
「!?」
彼女達は町へ向かったが船長をさげすんでいた女は悪寒に周りを見た。
原因を知ることは不可能だったが。
町に入ると今まで見てきた星とは違って、何度も首を動かす。
スチームパンクっぽいのにところどころハイテクなところだ。
わざとなのかもね。
――ドン
「ひょえ!?」
どこからかデカイ音が聞こえて文字通り飛び上がった。
「な、なに!?」
驚きに隣に居た船員に飛び付く。
――キャッ
きいろい声と共に何故か「羨ましい」という発言が入ってくる。
「ズルいわ」
「交代しましょうよ」
今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。
ハーレムごっこをしてる女子達に内心ツッコむ。
内輪できゃいのきゃいのとやっていると同じ観光客らしき人達がざわつきながら今あった出来事のヒントらしきことを口にしている。
ユースタス・キッドとスクラッチメンが争ってるみたいだぞ、と。
海賊だと言うので、なに、宇宙では海賊が流行っているのかと目が遠くなる。
「海賊って人気トレンドなの?」
美女達が疑問に答えてくれた。
凡そ20年前に大海賊が宇宙のどこかに財宝があるから探せと言ったらしい。
さぞ宇宙は大混乱に陥っただろう。
「でも、海賊じゃなくても探しに行けそうな」
「そこは個々の理由でしょう」
まぁそうなんだけど。
そういや意識とか殆ど無いローも海賊だった。
無意識に省いていた。
キッド達との騒動とは別のルートを使う。
巻き込まれちゃ堪らないからね。
そうして歩き出しているとなにかが頭上を覆う。
上を見上げた時、なにかがわからなかったけれど、直撃したらダメだと本能が叫ぶ。
(うわぁあああ)
心のなかで叫べても声はカラカラと出ない。
スローモーションに見える。
本当にスローだ。
(しぬしぬ)
頭を丸めていたが一向に落ちてこない。
上を再び見ると緩く落ちてきて、最後には人の居ない所に静かに置かれる。
(なに?なに?)
キョロキョロすると周りも困惑していた。
やがてそのスローモーション現象を引き起こしたと思われる声に引き戻される。
「もう大丈夫だ」
マスクを付けた男性、かな。
彼は紳士的な雰囲気で場を納めていた。
コソッと彼女達が言う。
「秩序を守る組織のトップ、X・ドレークですわ」
「秩序を、守る……」
銀河を守るとか浪漫だ。
向こうに跳んでいき、多分騒動の渦中を止めにいったのだろうと誰かが教えてくれる。
色んな人が居るんだな。
事故に巻き込まれた今、ふわふわした足取りで再び歩く。
早く安全な所で美味しいものを食べたい。
というわけで、女子旅なのだからとスイーツ巡りをした。
ネネカは大食いでも戦闘員でもないので皆みたいに3つ以上は無理。
最初の店でお腹はいっぱいになる。
そういえば皆背も高いし大きい。
秘訣はそれなのかな。
いや、この宇宙では基準なんてない。
しかし、彼女達の美貌は宇宙で見ても特別枠らしい。
誰から見てもそうならば、変に襲われてしまうのではないかとメンタルは大丈夫なのだろうかと、気になる。
見られるのは当たり前と素知らぬ顔で闊歩するのを見て、無事なのかと少しだけ安心した。
それでも嫌な目に会う可能性は高そうだが。
自分にできることはあるかな。
散々お世話になってるし。
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