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離せ離せと言ううさぎを話すことなくガラスに押し付ける。
宇宙人は宇宙空間でも生きられるのか試して見たいのですがと圧をかけた。
うさぎは酷く渋々として降参すると告げる。

「ちょっとでも変な真似をしたら全た員小学校の子供に世話をされるうさぎの刑に処す」

子供は無邪気。
長く生きられればいーね。
うさぎはそれを感じとりぶるりとなる。
とりあえずなぜ奴隷だとか言うのかと尋問。

「地球人を奴隷として売るのが良い商売だったからだ」

うさぎは悪く思ってない顔で鼻をひくひくさせる。
ジンギスカンにしてやるよ。
耳をぎゅうときつく持ってぐるんぐるんと腕を回してウサギ回転。
うさぎはへっという態度だったが美女達の体力に合わせて延々と回す作業をリレー形式でやっているとやがて辛そうな声音でもう止めてくれと懇願してきた。
そんなことで簡単に許すわけないだろ。
もっと制裁をと己の心の悪魔が囁く。

こいつのせいでネネカは故郷から離れることになったのだ。
同じ目以上にして何が悪い。
いんや、悪くない。
ぶちぶちと地味にウサギ野郎の毛をちょっとずつ抜く。

「おれさまのふわこもが!」

うるせー、海賊のくせしてふわもことか言うな。
どんどん口調と心が荒ぶってきて元に戻らないのも全てこのうさぎ野郎のせいだ。
なにが嬉しくてこんな真似をしなきゃなんないの。
うさぎリレーを続行してもらいつつ、どうやら船長だった小物を横目に見つつ、どうしようかと思案。
地球に一度戻ろうかなと呟くとお供しますと美少女達も列を成す。

「全員で来たら皆驚くだろうな」

浚われた経緯を話すには信憑性が必要。
こんなに美女が来たら認めざる終えないだろう。
美女達を伴い実家に降り立つと懐かしさに胸が高鳴る。
この家には祖母が居る。

「あばあちゃん!」

縁側に行くとゴールデンレトリーバーの我が家の番犬きりんまるが居る。
小さな頃にうちにやってきて幼い子供に命名させたからしまらぬ名を与えられてしまった。
与えたのは私だが。

「そしてきりんまる!」

きりんまるにべちょべちょにされたあとはぼんやりしている祖母に声をかける。
祖母はゆるりとこちらを向くと微笑む。

「ネネカちゃんお帰り。世界一周でも行ってきたの?」

ゆるい口調で緩く聞いてくる。
宇宙だけどな。

「おい、うさぎ」

おばあちゃんの前でうさぎに声をかけて反抗的に睨み付ける海賊を床に下ろす。

「謝んなさい。そしてうちに住め」

「はあ?なぜおれさまが」

「小学校じゃなくて公園に放り込んで欲しいの?」

「ひい!」

砂だらけの手でもみくちゃにされたいのかな。

「あらあら、可愛らしいうさぎだこと」

「言葉と手先が器用な使用人雇ったよ」

「おれはやんねーぞ」

「きりんまるにもおもちゃあげる」

うさぎを握って高く放り投げた。
誇り高き云々と口で言ううさぎは舐める攻撃に悲鳴をあげた。

「おばあちゃん、紹介したいの」

言うと、美女達がぞろぞろやってくる。

「お初にお目にかかります」

まるで王族に対応するように膝を折る女達。
そこまでしなくていいよと言うが、やめてくれない。
おばあちゃんびっくりすると思うんだけど。
あらまぁ、と少し驚いた顔をしていたけど予想していた反応よりも薄いので安堵。

泊まることとなったが家は敷地だけは広いので大丈夫だった。
問題は翌朝だ。

「みつこ。茶」

「はいはい」

トラファルガー・ローと我らが祖母が呑気に茶をしばいていていたのだ。

「なにしてるんですか!おばあちゃん!?」

なに、みつこってぇ!
おばあちゃんの名前は確かにみつこだけどさっ!?
生まれたときからまるでここにいたような馴れ馴れしさに凄く驚く。
美女達もそれぞれ寛いでいて異世界だ。
ここだけ別の次元にあるみたい。
こぽぽ、とお茶を入れたり飲み込む音が畑に囲まれた周囲が和やか過ぎる。
ウサギも飼育されていて、平和。

「みつこ。お前に宇宙で話題の肩叩きと腰痛の薬を買ってきてやった」

ローが祖母に対して激しく優しい。
自分のことは割りと適当なのに。
浚うし浚うし浚うし付いてくるしで。
何故祖母には優しさを見せるのか条件がわからん。
美女達も落ち着いた様子なので色々整理するのも良いな。
改めて帰ってこれたのでここでのんびり日常を迎えよう。

「おい」

声をかけられて振り向くと思っていた男。

「おれはそろそろ船に戻る」

「そうですか」

「お前はどうする」

「私は勿論地球に永住ですよ」

生まれた星で一生を過ごす。
全ての人類が平等にそうする。
例外なく私もだ。

「勿体ねェ。折角外に出たのに」

「無理矢理だし、本意じゃないし。平和が好きなんです」

ローはあきれた目でこちらを見てつまんねーなと吐く。
そんな風に見られても困る。

「もう二度と会うことはないでしょうけど、お元気で」

ローは有名な船長というジャンルなので、一般人なら歓迎するけど。
でもお尋ね者なのだから歓迎できんのだ。
目をつけられたりして狙われてもね。
なので、速やかに縁を切るのが吉。

「ああ」

出会いは派手だったのに別れは地味。
本でも物語なんかでもそんなものなのだろう。
男はすたすたと歩いていき蜃気楼のようにぐにゃりと歪み、消えた。
本当に味気ない。
これでもう縁もなくなり、残るは美女達だ。

「貴方達はどうするの」

これからのことを聞けば、彼女達はきょとんとする。
ウサギも鼻をひくひくしつつまどろんでいる。
海賊に見えないウサギは見ているぶんには只のウサギなので良い。
でも、美女達は美女なので目立つ。
エキゾチック美女も居るのでこの国ではかなり目立つ。
美女達は離れることに対して全く考えもないよう。

彼女達に宇宙に帰らないのかと聞けば、船長と共にいますわ、という清々しい程の返事。
分かっていたとして、もう少し考えて欲しい。
丸投げされているような気分になる。
いや、丸投げされているのだろうな。
好きにして解散して欲しい。
宇宙では年齢はいくつなのかなこの人達。
絶対年上。
でなければ私をころころと転がしてない。
うまいこと誘導をしているのは薄々感じている。

船長として祭り上げられているところから既に始まっているのだ。
それでもこの地球に召したのは一応拾い上げてくれたから。
恩を感じ返しただけ。
それからのことはご勝手に。

「私のことはもう持ち上げなくて良いよ」

「なにを言っておられるのですか」

「我らは船長の傍にずっと居ます」

なついた動物みたいな目をしている。
本当に尊敬や敬愛を受けているように錯覚。
勘違いしてはならない。
何故己に執着するのか分からなくて眉を下げる。
もう役目は終えているのではないかな。
本当にもうこの地で骨を埋めたい。
ばあちゃんと共に過ごし和やかに居たい。
そのためには彼女たちが問題だ。
その顔なら面でも被らないと普通に過ごせない。

「でも、貴方達は目立つのでこの星では普通に過ごせないんです」

「大丈夫ですわ。この地域で私たちが受け入れられるようにすれば問題ありません!」

そんな自信満々に。
マスクか仮面をかぶってもらいたい。

数日、彼女たちはこの付近を調査して市場調査をした。
そして、ありとあらゆる求人を見てそれに応募し100%という恐ろしい数字を叩きだし全員が、いや、自分の護衛という名目で数人を覗き稼ぎに出掛けた。
隣人からは遠いのに噂が入ってきた。
この町には美人が居る。
要所要所に散らばっているものの、その共通点は凄く眩しく目が瞑れる美人だということだ。
うん、紛れもなくうちの団員タチだ。

「やはり仮面とかを被ってもらえば良かったよーな」

呟くと護衛についていた女団員が微笑む。
やめさせましょうかと言うので首を振る。

「私に決定権なんてないです。皆自由にするのがベストなんです」

「なんと素晴らしい……!」

感動されているが、普通の事だ。

「感謝されるような事は言ってない」

ボソッと。

「噂になったら次は騒動になる」

もしかしたら地球に居られないのではという予感がヒシヒシ。
これ以上目立ったらどうなるんだと目眩を感じずには居られない。
くらくらとなりながら上を見上げて目を遠くした。

「え?」

車が道をぎゅんぎゅん通る。
一台ではなく何台も何台も。

「なになに?」

後をつけてきますと護衛についていた人が離れる。
うんともすんとも言ってないけど、こういうときは船長という肩書きがうわべだけだと強く思う。

「うん。好きにして下さい」

「私はここに居続けますから」

護衛の一人が嬉しそうに言う。
テレポートで居なくなった後を追った女性を見送る。

「うん。どーぞどーぞ」

皆自由に。
どうせこういうときの自分は役立たずだからねね。
車が去っていくのを見て数分後、後を追っていた人が戻ってきた。
結局なにがどうだったのかと聞くと美人の噂を聞き付けたマスコミが取材しに訪れたとのこと。
やっぱり起こってしまったと頭を抱える。
彼女たちは曲がりなりにも海賊の女。
なにもなかったら良いのにと思うが、マスコミが一度断られた程度で諦めるのはないだろうし、仲裁しなきゃ。

マスコミの様子を写してみせますねと女が手をくるりと回して魔法っぽいものを出す。
すごいや、ファンタジー。
エスエフと混じってる。
写ったのは囲まれる美人とマスコミの男達。
全員その美貌に鼻の下を伸ばしてニヤニヤしている。

ほんと、見た目も女神だから気持ちは女でも分かる。
ネネカはそれをどうしたものかと悩む。
彼女たちは今のところ丁寧に断っている。
何故こんなところに居るのかと言う質問をするものもいて、失礼すぎるだろ。


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