06
だってオマケモードの世界が鬼畜モードだろうと越えられるわけがない。
「霊の見える女や不思議な物を持つやつは見てきたが、特殊能力を使う奴まで居たとは」
「貴方こそ、その身のこなし異常です」
さっき、普通の人間が這い寄る恐怖に勝つなんて、なんらかの訓練を受けているか、主人公クラスでないと。
「まさか、貴方、この空間の主人?」
「親玉ではない」
「そう。じゃあ、もう言う事がないのなら向こうへ行ってもらえますか」
船員を探して船を操作してもらわねばならないのだ。
「まァ待て」
「入れませんから」
大体、強いんだったら別に確保する必要も保護する理由もない。
飴玉一つくらいは分けても良いかな。
「ここから出たくないか」
「そりゃ、出たいですけど」
「おれに協力したら出してやれる」
別にこの人に頼らずとも脱出は可能だけど。
「人を助けるとかいう人道なんでしたら、他を当たって下さい」
そんな余裕のある人なんて居るとは思えないけど。
助けようと思える程、ここの人達とは関わりがない。
それに、頼られるのも無理だ。
一人で切り抜けるのにいっぱいいっぱいなのだから。
「この事態を収める為のことだ」
「なるほど。それなら別に問題はないですね」
今ある装備や触れられない事を然程重く感じでいないのなら手を貸せる。
「今回の事が終わったら二度と接触しないことを約束してくれるのなら。組織も含め」
平凡ライフがいとおしいのだ。
「……被害者を引きずり込むことはしない」
男は頷くと握手を求めた。
「ロー」
「宜しく。私は……アルとでも呼んで下さい」
苗字の場合、反応に少し遅れが出るかもしれないし、ストレートな名前呼びが一番だ。
相手の方はもしかしたら嘘の名前かもしれない。
「ローさん。では、これからのことは考えているんですか?」
「ああ。勿論」
彼はにんまりと笑う。
益々親玉感が増した。
彼によると彼の組織のレーダーがうちの会社の社員に反応したので、いつこういう事が起こっても可笑しくないので予め予測して乗り込んでおいたらしい。
ローだけなのかと聞くと、この島には一人だけだと言われて頼りない状況なんじゃないかと肩を落とす。
どうやってここから出るんだろう。
「で?お前のその武装はなんなんだ」
「これも特殊装備です」
アーチェリーを構えてローの付近に居るモヤモヤしたものを撃ち抜く。
何度もすると彼は目を開き唖然としていた。
「簡単にやってのけるとは」
「そういうもんです」
アーチェリーを軽く揺らす。
「触っても良いか」
渡す。
盗もうとしてと盗めるものではないから。
「扱っても?」
聞かれてどうぞと足す。
ビュンと飛んでいく矢は寸分の狂いもなくモヤモヤに飛んで行き刺さる。
「!?……狙ってないのに当たったぞ」
「そういうもんですから」
当たり障りのない答えを出す。
「これは研究しがいが」
「あげませんし、研究材料としても渡しません」
「国家の命令として奪えば良いだけだ」
「それも不可能。私以外に使えなくすれば事足ります」
冷たい眼で言う。
「そうかよ」
ちょっと不機嫌になる。
こっちの台詞だ。