05
男は断ると無理矢理開けようとしたが、開けられなかった。
チッと一度舌打ちする。
「非科学事件課、ケアハート。分かるか」
知らんがな。
「知りません。あっち言って」
社員じゃないのなら誰だ。
「秘密組織的なやつだ。開けろ」
「開けません。秘密組織とかふざけるのもやめて」
薄々、さっきの格闘戦を見て理解しつつあるものの、それとここへ通すのとは別だ。
「その装備、お前どうやって手に入れた」
「関係ないですよね。放っておいて下さい」
それを説明する義理もなければ、説明する方法がない。
願うだけで出てくるなんて無形な話。
それでもコンコンコンコンやりまくる。
怖い。
幽霊よりも人間の方が怖い。
アイテムボックスの欄の端にある設定ボタンを押して無表情で音量を無にした。
すると、無になり何も音がしなくなる。
便利だけど、全く使い道がなかった。
今使い道が出来て良かった。
この設定ボタンで不便なのはホラー世界とは関係ない人間関係では何の役にも立たないことだ。
アーチェリーも無音設定も日常生活じゃ寧ろ邪魔なのである。
というか、この部屋は現在真っ暗なのにどうやって見られているのか不思議だ。
やっぱり人ではないのかもしれない。
真っ暗にしている理由は別に不便はないし、明かりがあると人間が入ってこようとするかもしれない。
ホラーゲームでも多人数でいる程見つかりやすいのはお約束だし。
そういうのを見越して一人が良いと思うわけだ。
しかし、いつまでもここに居るわけにはいかないのも事実。
いや、一人で脱出する手だてはある。
普通にボートやらなんやらをアイテムボックス経由で出して脱出すりゃ良いだけだ。
そして、ケアハートの名乗った男はまだそこに居る。
仕方なしに開ける事にした。
――カラッ
アーチェリーを向けながら男に対峙する。
「物騒だ」
「貴方の存在が今一番物騒ですから」
なぜ今回、偶然にも起きた出来事にタイミング良く非科学組織が居るのだ?
可笑しすぎる。
疑うには十分な程だ。
「私に何のよう?」
殺すのなら仕方なく撃ち抜く。
「お前の傍に全く怨念が近寄らねェ。それが気になってな」
「さぁ?私にも分かりません。今回のことになって初めて知ったので」
周回要素という理由が脳裏を巡ったが教える気はさらさらない。
手の内を見せるわけにもいかぬ。
わけの分からん男に。
「部屋に入りたい」
男は近くで見ると端正な顔つきだ。
女性達がキャーキャー言いそうだ。
「いえ、まだ無理です」
――パチン
男が入ろうとすると静電気よりも強い電流が相手を拒むように弾く。
それをびっくりした顔で体感する。
「貴方がなんの理由でここに居て、私に近寄ったのか知るまでは」
ここは普通ではなく、今やホラー世界。
剣呑にもなる。
男は目を細め口許をニヤリとさせる。
「面白い」
「そうですか」
どんなに言おうとこれはどうにも出来ない。