×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
02
現社長が暗愚だったらこの会社はこんなに大きくならなかったと思うんだ。
だから、オトハを奥さんにするやつに大切な会社を任せるとは思えない。
白けている空気と嫌な空気と、色々な空気が混ぜ混ぜされている。
なんて嫌な話題を提供するんだろう。
場は完全に白けきり、お酒を煽ろうとすると、どこからともなく船を操作している船員が会場にやってきて御曹司に近づき耳元へ囁く。

「なにっ?」

おい、マイク切れてないぞ。
丸聞こえ。

「はっ!?」

気付いた御曹司くんは慌ててマイクを切る。
でも、会場はただならぬ感じにざわつく。
そこから離れて海でも眺めようと外を見ると、先程まで晴れ渡っていたのに今は霧によって何も見えなくなっていた。
これは。

――ドォン!

――キャアアア

いきなり船が強い衝撃により揺れる。
悲鳴が騒音となりパニックになった。

「落ち着いてくれ。レーダーに映った島にぶつかっただけだろう」

別に船が動いていた訳でもなく、ちゃんと鎖も落とされ、固定されていたのに。
どうやったら島にぶつかるのだろうか。

「数人で様子を見に行くからここから動かぬように」

動かなかったら危ないのでは。
オトハは御曹司が出ていくと逆ハーレムメンバーに慰められていた。
ちょ、そいつ今婚約発表してたよね?

「どこまでお花が咲いてるの」

ボソッと言うが周りが煩いので誰かに聞こえることはない。
こんな非常識な時にいつものように暖めあって、可笑しいとしか思えない。
ああ、暖めあってというのは皮肉だ。
群がるなんて、もっと効率的な事が出来ないのだろうか。

「?」

――フッ

微かな視線を感じて振り向く。
が、その先は誰も居ない。
誰も自分を見ている者なんて居なかった。
可笑しいな、勘違いかな。
武者震いかもしれん。

――ザワワッ

騒動に濡れたこの場内は既に別の事件とも言える程、湿気に溢れていた。

「え!?あれなに!?」

どこからかそんな台詞が聞こえてきた。
プーン、と腐臭がした。
誰かオナラしたなーっ?
と、思った時、ソレは起こった。

――ペタッ

「うわ、うわあああ!?」

「いやああ!?」

誰かが叫び、周りが戸惑う。
後ろから人が走り出す。
集団が走り出した。
何かから逃げるように。
何が起こっているのか分からないが、思わずアルも走り出す。
こういうのを集団心理とか言うんじゃなかったか?
外に向けて走ると人の波に押し流される。
出られる頃には中に人が残らず、何か黒い物が目の前を通りすぎるのが見えた。

「え?……あれって」

何度も見た事がある。

「でも、なんで今更」

この世界ではなく、ゲームの画面越しだけだが。

「ということは……ここってやっぱり」

奇声を上げることもなく、人間達を追いかけ回す這い寄る恐怖。

「ホラーゲームだったんだ」