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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
08
まぁ、ドラマとかでも冷静な人が一人くらいは居るのなんて定番だし。
それが、特殊捜査官的な人だっただけなのだ。

――ゴワコワゴワ

ウゾウゾしている這い寄る恐怖は女を襲い、じわじわと生命を吸い取ろうと蠢く。
ハイハイ、撃ちますよ。
弓を引き、撃ち抜く。
ぜぇぜぇと命からがらの体でこちらへ戻ってくる女。

「あは、アハハ!私はあいつらを追い払えるヒロインだったわ!見たでしょ!あいつら、私に触れたら消えた!」

いやぁ、暗すぎて見えなかったんじゃないの?
しかも、ちょっと恐怖で壊れそうだ。

「何を言ってるんだ?」

男の一人が恐怖で気が触れてしまったのだと怯える。
ここって、貴女の言い分では現代ものの乙女ゲームみたいに思ったんだけど、いつからファンタジーになったんだろう。
イレギュラーだから、イコールヒロインは聖なる力を持ってるって思っちゃったみたいだ。
めんどくさー。

「関わらないでおこう」

頷きつつ、相手が意気揚々と自慢するのを聞き流す。
うーん、それは実験したら終わりだな。
そんな力ないもんなぁ。
あとは死ぬだけだぞっ。

「この力があれば私達、助かるのよ!」

彼らについてきなさいと外へ出る。
しかし、彼女が何かに襲われていた事は知っていても退治したことを知らない男達は、船でちやほやしていたのと90度違う瞳で冷ややかに見送った。
あーあ、出ちゃった。

「きゃああああああ」

叫び声が上がった。
その後には「浄化!」と叫ぶが、勿論そんな魔法はない。
浄化ってなぁ。

「助けなくて良いの?」

ローに聞く。
彼は首を振り自分の役目は現象の沈静化だから人命を優先することは必須ではないのだと述べる。
あー、そうなのね。
で、現象の沈静化が目的だからアルの装備を見て協力させたがったのか。
この力は沈静化させるには抜群に効果を発揮するのだろうし。
アルはアーチェリーを取り出してもう部屋の外へ出ることにした。
彼女の事は残念ながら放置することにした。
え?文法が可笑しい?
気にしてはいけない。

「私は何をすれば良いの?」

早く家に帰りたいから船員を探して動かしてもらう。
その為にはこの事態を終息させる方が効率的だ。
専門家が居るのなら意見を貰おう。

「この現象の原因を探って、核になったものを破壊、又は封印する」

ホラーゲームの定番行動である。
しかし、社員はかなり居るのでその原因は見つかるのか困難だ。

「いや、社員が原因じゃない可能性もある。この建物が関係しているって事は核は建物内にあることが多い」

うんうん、ホラーゲームホラーゲーム。
大体こういうのは怨念が建物を異界にして起こっていることだったりするから。

「ねぇ、貴方はゲームのホラーゲームしたことある?」

「参考にな。誰が作ったか、考えたか、実物を見てねェのに見てかのように出来てる」

いや、順番が逆ではないのか?

「それって、作ったのを見た人が真似して異界を作り上げたりしたんじゃないの?」

敬語を使うが、この男に使い続けるには状況が差し迫っている。
早めに色々知りたくて言葉が丁寧ではなくなった。
しかし、気にした素振りもないのでホッとする。
良かった、彼が直属の上司じゃなくて。

「そういう見解もある」

肯定されたので、成る程と。
大体ホラーゲームでのシナリオって人の想いが変化した末路な事が多い。
それだけ人の想いのエネルギーは恐ろしくて凄まじいのだろう。

「お前のその装備もそういう類いだろ」

確かに、そうなのかもしれない。
この羅列、武器にあるの制作者の心遣いだ。
大変ありがたい。
そこは凄く感謝している。

「やっぱ欲しいな」

「あげられません」

ぴしゃりと断る。
権力を盾にされたとしても譲渡出来ない可能性もある。
設定やらが固定されているなら。
ほら、主人公固定の装備、みたいな。
例え社会的に抹殺してきても仕返しは考えてある。
この世界を丸ごとエクストラレベルのホラーゲーム世界にすること。
そうなれば誰も生き残れまい。
自分勝手に思えるかもしれないけれど、先に手を出してこなければそういう世界になる事はないのだ。

「この建物事燃やすって言うのはどうですか?」

勿論乗組員さんを見つけてから。
ローはひくりと口角を震わせて「本気か」ととうてくる。

「壊すのなら壊せばいいじゃないですか」

「素材もダメになんだろうが」

素材も?と疑問を口にする。
なんのことを言っているのだ。
専門用語を言われてもな。

「おれ達みたいなのは異界から素材を得て買い取るところで売るのも収入の一つだ」

成る程。
異界というホラーゲームの世界に飛び込むリスクをおかしても取りたいやつなんだ。

「なんか組織に属してませんでした?なのに取りたいんですか?」

「金が入るんなら取る」

淡々と応えられた。
ハイハイそうですか。

「あ、人が居ましたよ」

気配を察知する。
というか、今地図を拾った。
廊下に地図、ま、いっか。
ホラーゲームを基礎にした世界なんだからちぐはぐなところは気にしちゃダメだろう。

「便利だなお前」

この人なんでも欲しがるな。
次は己さえも勧誘してきそうな気配。

「自分の仕事に集中したらどうですか?」

疑惑の視線でかわす。

「やってくる」

ローも見えているのか一目散に駆け抜ける。
抜ける瞬間に這い寄る何かに拳を叩き込む。
うわ、うそ。
一発で消した。
この人も大概規格外だ。