07
今権力に物言わせてぶんどろうとしてやがった。
信用出来ない。
警戒しようと決めてローについていく。
ローにだけ群がる這い寄る恐怖を撃ち抜く。
「お前には寄らない」
彼は眉をひそめてつぶやく。
ソレに関してはまだ確証がないのでなんとも言えない。
やがて、広間に着く。
そこから道を曲がり部屋を通る。
ローはこの真っ暗な中、見えているようだ。
「おい、襲われてる」
ローが示すところで男が襲われていたのでサクッとした。
男は襲われなくなり唖然としていた。
そこを通り過ぎる。
「――ぶざ――どうし」
半ば荒ぶっている声が聞こえた。
だーかーらー、どうして叫ぶの?
集まってきちゃうでしょ。
扉の前に立ったローがあろうことか叩いた。
「なにやってんです?」
敢えてそこに突っ込む理由が不明。
「面白そうだからな」
くすりと笑う。
今、この建物で悪魔が喉を震わせている。
「っ、誰だっ!?」
「船のもんだ。社員な」
社員でも良いけど、バレないかな。
「生き残りか!?」
いや、まだまだ生きてる人は居ると思うけど。
彼の中じゃ全員死んでるのかな。
映画の見すぎじゃない?
そんな都合良く孤立するわけないじゃん。
「当たり前だろ」
ローは呆れた風に返す。
アルはアーチェリーをアイテムボックスに入れ、手持ちを隠した。
普通、アイテムは持ってない。
アーチェリーなんてもっての他だ。
やがて、扉が開かれてげっそりした男が出てくる。
この半日でそこまで疲れ切ったようだ。
「あ、ああ……入ってくれ」
どうやらそれだけじゃなさそうだ。
中に入ると女一人と男三人が居た。
女がヒステリックを起こしていたから居るのは知っていた。
煩そう。
「外はどうなってる?」
アルの事は見えて居るが、照らすものがスマホしかないので暗くて装備まで分からないらしい。
突っ込まれることなく通された。
「徘徊してますね」
何が、と言わずとも分かったようで、震え出す一同。
「一体どうなってんだよ」
泣きかけの声を出す。
あんまり声を出すとお腹減るからやめておいた方が良いんじゃないかな。
「乗るんじゃなかった」
ここで泣かれてもな。
「どうして?ここは乙女ゲームの世界じゃないの!?」
ヒステリック同僚の女は激しく吐き出す。
やっぱりこいつもそうだったか。
でも、来た世界を違う世界と思い込んでいた。
それか、これからはもうホラーゲームになってしまったか。
混合なのかもしれない。
どっちにしろ、乙女ゲームなんて世界観はどこにもない。
果敢にお前を守る、とか抱き締めてくれる人なんて現実には居ない。
恋愛なぞ、こんな中でやれるわけもない。
「いや、いやぁ!」
「黙れ!あいつらが来るだろ!?」
いや、どっちも煩い。
「私、やっぱ違うところ行く」
ローはそのやり取りを楽しそうに眺めていた。
「え!?ちょっと待ちなさいよ」
「私に命令するな」
もうここは会社じゃないもん。
従う理由もない。
「婚約者にでも助けてもらえば?」
しかし、女はまたヒステリックに叫ぶ。
その瞬間、窓が割れて女は襲われる。
あーあ、大声出すから。
元々囲まれていたんじゃないんだろうか。
随分と叫んでいたし。
暫く襲わせて怖い思いをさせなきゃ彼女の叫び癖は直らないと思う。
一々癇癪を起こす女と居たら命が無くなるだろう。
そんなリスクは犯したくない。
「いやあああああああ」
煩いくらい。
そんなに嫌なら叫ばなきゃ良かったのに。
呆れた目を向けるとローも面倒そうに頭を捻る。
「あの女は捜査の邪魔になるな」
ぼそりと聞こえた内容に場馴れしてるなと思う。
それに、冷静に判断も出来て優秀な人みたいだ。