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「#エロ」のBL小説を読む
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ローの語る中身は想像していたものと違った。
拾い上げたのに捨てるのかと同じように言われるとばかり。

「あの歌手は?こんなところで時間をもて余している暇なんてないんじゃない?」

週刊誌によれば親密そうな雰囲気でいたと。

「あの女のことなら関係ない。わざとらしくふらついてきたんで突き飛ばしたが、それだけだ」

「突き飛ばした?」

「おれにもたらふく呑むように進めてきたが思うように行動しないから焦れてああしたんだろ。誠心誠意がこれならもう構うなと言いつけた」

誠心誠意の意味は、曲を聞いて欲しいのだと寄ってきたのだが、聞かせられる前に不実な事をやってきたので精神的にボコボコにしたのだという。
ローらしいあしらい方だ。
ならば、あの週刊誌はガセということになる。

「そんなものに踊らされるとはお前もまだまだ」

ニヤッと勝ち誇った笑みで挑発をかけてくる。

「まだまだもなにも、私は一般人ですよー」

膨れっ面に心の中でなりながら正当発言。
しかし、ローはそれを芯から聞き取る事はせず、はいはい、みたいな雰囲気でハンドルを動かす。

「年間億を稼ぐ奴らを見つけるお前が、な」

「私は平凡で彼らが非凡なだけっ」

全く、まるで歌手とファンのような格差。
そんなにお金があるんならとっくに海外へ飛び立っているよ。
彼のかくばった手はいつもよりセクシーさがある。
男の手に見惚れるなんて色々負けているな。

「指は綺麗だよね、ゆ、び、は」

負け惜しみに呟くが聞き届けられた彼の耳には反応すらない。
言われ慣れているのかな。
それとも、男としての威厳とか沽券か。

「!?」

唐突に膝へ指が触れ、びっくりした。

「音符でも書いてやろうか」

「……音楽の才能ないし」

「小学生用のノート買ってきてやる」

なけなしの言葉にも憎いほどサラッと答える男。
ハンドル握りながら膝を滑る指が色んな意味で不安を煽る。
一瞬喜怒哀楽の喜が擦ったが、羞恥心が襲う。
プルプルと膝が笑う中、流し目で意味ありげに送ってきたアゴヒゲをなんとか受け流す。
このままついていったら後戻り出来ない。
予感は100パーセントのものだろう。
なまむぎなまご以下略。
ローと口を聞かないように心の中で早口言葉を繰り返したがなんせ心の中故に噛まないし早いから直ぐ終わる。
考える言葉をミスった。

「指を褒められたから期待に答えた」

どうだ、嬉しいか、と副音声が聞こえてきた。


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