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それが終わって脱力感なのだ。
五月病というやつなのだろう。

「暫く休んだら、目立たないようにひっそり暮らすわ」

「はは。そんときゃ協力するぜ」

「ありがとう」

シャンクスは器も大きくて当時小さかっただろう己に対して真剣に取り合ってくれた。

「シャンクス。もしかしてローが来ないのは貴方が?」

とっくに腕を掴まれても可笑しくないのに。
足止めか。
シャンクスの気遣いにこれが中年の魅力かともんどり打つ。
セリは彼にお礼を伝えて歩き出す。

「またなー」

――フリッフリ

手を子供のように無邪気に振る。
可愛いな中年。
でも可愛い中年なんてシャンクスくらいだし、それ以外の奴らなんて可愛くないし。
特別なのは可愛い中年のシャンクスだけか。
フ、と現実に遠くの山を見つけた。

――ギュイイイイン!

道路を渡ろうとしたら真っ赤な車が歩行者の青信号なのに身体スレスレに突っ込み急ブレーキをかけた。
身体が体液をこぼして吹き飛ぶまでが想像出来た。
鳥肌ヤバし。

「女か一人で歩くと襲われるって習わなかったか」

運転席から顔を出したのはキラーだ。
キラーの愛車は黄色だったのだが、これはキッドのを借りたんだな。

「キッドならともかくキラーがこんな運転するとは」

「悪い、急いでた」

「コンサートに遅れてるの?」

「いや。人を探していた」

キュルルルン、とセンサーが反応した。
キラーだって発掘された側。
即座に計画を変更した。

「ふうん。コンビニ行くところなの」

敢えて行き先を家にしない。

「乗ってくか?」

直ぐ先だからと指を差して歩き出す。
キラーの探し人は十中八九自身だ。

「ローのところに見つかるのが嫌ならおれ達のところに来ないか」

「ごめん。ダメなの」

少なくとも発掘された人達の関係を断ちたい。

「お前はこちらの何を気にしているのか教えてもくれないのか」

ピタリ、と止まる。
皆気にしすぎだろ。
道端に落ちている石みたいに忘れて欲しい。

「私、有名人に会えただけで胸がいっぱいで、もう帰るわ」

皆、自分のことを忘れてくれれば良いのに。
それか、元のパラレルワールドに戻りたい。

「お前におれ達は廃棄されたわけだな」

肩がびくつく。
構わず足早に進めた。
廃棄されたんじゃない。
セリはバグを直すパッチなのだ。

「ごめん」

ソッと見ようとしたがやめた。
未練があるように振る舞うのは利口じゃない。
決別にも等しい気持ちで言ったのだ。
後悔しようにもそんなのは初めから持っていない。
当たり前だったものを当たり前にして何が悪いのだろう。
皆も楽しいし幸せだしWINWIN。
コンビニで10分くらい時間を潰し辺りに知り合いがいない事を確認し自宅へ向かった。

「もうやめたい」

玄関へ入るとずるりと背を壁に下ろし体育座りになる。
へこんだ。
他意もなく人に何かを与えるのは有意義で、その後の人生までも関わるのがこんなにしんどいと知らなかった。
ベッドに入ってそのまま寝た。


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