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「って、罪悪感薄れないっ」

――ドーン!

ビールを叩きつけた。
ついでにいうとアルミ缶なので今ので泡がシュワシュワ音を立てている。
ついでに隣のローのものもシェイクしてやろうか。

――ギィイ

扉が開く音、ビクッとなる。
彼は今風呂に入っていた。
良く入るんだよあの人。
作曲していると結構色んな事が疎かになるから風呂入れ、と催促するのが日常だ。

「そのビールは安もんだが、そのテーブルはイタリアの特注品だぞ」

お洒落とは思ってたけど、ここに金使ってたのか。

――スッ

背後に立たれ、肩を覆うように触れてくる。
びっくりしてビールを落っことしそうになった。

「なに!?」

いつもと違う雰囲気にびっくりして声が高くなる。

「これ書け」

ピラッと見せられたのは婚姻届。

「……え」

頭回んない。

「え!?」

なんでこんなん持ってんの。
やってること週刊誌のあの女性と変わらなくないか。

「別に今日じゃなくとも良いが……」

意味深に低くなった言葉。

「式を挙げる時にドレスのサイズが変更になってもお前の責任だ」

いや、待て、お前待て。
ローを睨み付けるのは忘れない。

「おれを我慢させてんだ」

当然の結果だろ?と聞こえる。
怖いっつーの。
でも、本気で言っているのが分かるから頬を染めながら記入、となる前に手が止まる。

「私……やっぱり」

自分の悪い癖が出た。
ザ・怖じ気づく。
だって結婚するって結構重大な事だと思う。
いや、思うんじゃなくてそうなんです。
うじうじしていると彼の顔が目前にあって、ふ、と一瞬の間に唇に当たった。

「結婚してても恋愛出来る」

彼は力強く押した。
指をからめられペンを握らされる。

「拾い上げたのは才能だけじゃねェ」

眼が見つめてきて、目が反らせられない。
言葉の真意がほんの少しだけ察せられたかも、しれない。
恥ずかしすぎてなにも言えない。
慣れるのだろうか。
慣れて欲しい。
音色を作り出す男は、逃がすつもりなど僅かにもないのだから。


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