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嫌な気持ちになり寒気がする。

「おれはおれだ。やりたくなきゃやらない」

「知ってる」

「お前はおれに無理強いしてやったと思ってる。おれは無理強いしてやらん」

ローの意見はもっともだ。

「やりたいからやる。それが終わったからやめるんだ」

若手なのにヒット曲いっぱいあるもんね。

「貯めた金はお前とおれの軍資金だ」

「ぐ、軍資金?」

「生活費はいくらあっても良い」

「え」

「お前が言ったやつ」

「そうだったっけ……」

「おれと結婚しろ」

言葉を失う。
さっきは恋愛的な口説き方だが、いきなりプロポーズと飛ばしてきた。

「さもなくば貯めた金を屋上からばら蒔く」

それ脅しなの?
誰に対して。
そもそもデメリットしかない。

「おまえんちの」

「私の!?それは嫌っ」

下手したらニュースになって生活台無しなことになる。
恐ろしいことだと震える。
それを見た男は、ニヤッと笑うところでもないのに笑った。

「どうする」

「えっ、ここで言うの?」

普通猶予あるくない?
脅しといて今言えとか。

「友達から」

「もう済んだ」

「恋人か」

「告白してプロポーズした」

「酷いなもう」

どんどん見えない何かで囲まれている。
言葉と言うのはどこか不可思議な力であるのだろうか。
ローに言われてジワジワと染み込む感覚に言い知れぬ気持ちが湧く。

「ああ。おれは酷い奴だ」

わっるい顔で言う。
本当に犯罪者かっていう酷い顔してる。

「お巡りさんこちらです」

「介入出来ねェとこに飛ぶことだって考えてる」

すかさずローが滑り込む。
いや、がんじがらめとも言う。
そんなに言うほど己の価値は高くないのだが。
自己評価も平凡だ。
あくまでパラレル世界を知っているというチートみたいなもんだし。
チートっていうと途端に薄くなるな色々。
でも、クイズの解答を初めから知っている人の気持ちと大差ない。
余裕である。

「ローは有名人だし、お金持ちだし」

「全部お前のやったことだ」

そう言われると閉口してしまうのだが。
ローが有名になったのも全てがお前のお陰だと言われるのは一番堪える。

「バカ。もう黙って」

涙が出そうだ。

「そんなに嫌なら責任取れよ」

「え?」

「何に罪悪感を感じてるかは知らねェ。んなもん興味もない。お前が楽になるんならおれのために手を取れ」

彼がグイッと肩を掴んで乱暴に胸板へ顔を押し付ける。

――ギュッ

痛いなもう。

「責任取っておれもお前を諦めねェ」

文脈可笑しいよ。
思わず吹き出した。


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