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「#エロ」のBL小説を読む
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お前達を造った彼女達を連れてくるのでどうか世界を壊さないで欲しいと。
それが出来るのならば猶予をやる、と契約した。
ただし、意思は無意識にロー達の存在を関知して探し求めているものだけに限定した。
あまり連れてこようとするとあちらの声無き存在に己やこちらさえも消される。
上位の世界なのでこちらを消すことなど容易い。
そんな経緯を持ってリーシャ達をこの世界に移した。
リーシャ達はうっすらと感じ取っていたのでこの世界に来なければ普通に過ごし二度と二つの魂は交わらなかったのだ。
意思はシナリオが終わりに近づくにつれて、ロー達一部のメイン達の記憶が戻るようにした。
本当の目的を思い出したのはかなり後になってだ。
ドフラミンゴは側にいさせ、その他の奴らも手に入れた。
二度と元の世界に戻れなくなるための方法はもとより知っていた。
つまり、リーシャ達がこの世界へきたのはロー達だ。
彼女達はロー達をキャラクターとして見ていたが、認識しないまま別の次元にいる自分たちをゲームと呼ばれるものに登場させただけだ。
なので彼女達はイレギュラーではない。
シナリオは未来視と作り手達の願望を世界が叶えた結果。
この世界はロー達の願いをある程度叶えるくらい親バカな世界。
だけど、他の世界から連れてきたので無理にお互いをくっつけるつもりはない。
ローの話は淡々と続き、一区切りついたらしくこちらを見据えてくる。
わなわなと唇を震わせリーシャは最後、ローをぶん殴ってローを「ぐっ!」と呻かせる。
全て合点がいった。
いくつもの疑問やあまりにも良すぎるイベントのタイミング。
魔法の本をくれたのはこの世界だったのだ。
友人だと思っていた人は。

「殴る意味はなんだ」

ローはヒロインが自分を受け入れることはないと分かったら閉じ込めようと決めていた。
自分はこれからも裏の世界で生きるからせめて巻き込まれないようにしたい。
そんな男をヒロインは拒否する。

「そんなの知ってる!」

唖然とする。
受け入れてくれてまさかと思う。
では、どういうつもりなのかと構える。
リーシャはローをなぐった後抱き締める。
ローの気持ちはしっかり受け取った。
こんなことで疑われるなどまだまだだなと苦笑。
この世界に来た時点でローと共に生きるのは決めていたのに。
まだローの言っていることの一割もわかっていないが、好きなことは変わらない。
ローもそっと血の滲む口許のまま手を背に当てる。
殴った時に体が離れたのでまた近寄り、抱き締めてきた。

「ずっと前からローのことを見守ってたんだよ」

そんなの言わなくても沢山喋っていた。
たくさんふれあっていた。
恨む真似などするわけがない。

「ああ」

ローは頷く。
女はソッと微笑む。
彼なら絶対に分かってくれると思って。

――ドス


が、次にはナイフを後ろから心臓へ突き立てられていた。
喉から熱いなにかが吐かれた。
愛しい黒髪がゆるりと近付き耳へ甘い吐息を流し込む。
この世界で死ねば二度と元の世界へ戻ることは出来ない。
あちらの世界へ死に戻りも不可能になる、と。

「がっあっ」

痛みに沈む身体。

「おれに殺させるなんてお前はどんな女よりも最悪だな」

沈む中、血だまりにもしかして他の皆も、と想像した。
だから、皆あんなに馴染み過ぎていたのだ、と。
黒い悪魔は薄れ行く意識の女を床へ下ろし、ニヤリと笑う。



次に目覚めるとちだまりもなく、微妙に笑みを浮かべて見下ろすロー。

「せっかく助けにきたのに呑気に寝てんじゃねェ」

起きろと足蹴にしてくる。
慌てて起きる。
なにもかもが鈍く思い出される。
この世界の真実も、刺された筈の場所になんの傷もないのも。

「へ?わたし、寝てたの?ナイフは?私達のことは?ローの私に対する熱い告白は?」

夢なのかと聞くと「こっぱずかしい告白してきたやつならお前のことだな」と盛大にからかわれた。
確かに何度も告白しているが。
ええ!?と反応する。

「おれはどっちでも良い」

と鼻で笑われた。
ひどい!と言うとローはさっさと出るぞと言う。
手を差し出したのを見て嬉しいまま握った。
告白が実は成功していたと知るのはかなり後になるのが残念さを引き立てる。


そして二人は歩き出した。
一人はなにもかも忘れて。
一人は手にしたものを見下ろして。







愛しきヴィラン、永遠に手の中で共に踊り狂いましょう






悪役を望むのならきっと世界はお膳立てをしてくれることでしょう。
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